ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2016/09/02
始皇帝と大兵馬俑展1 満を持した展覧会
東博、九博に続いて、大阪は中之島の国立国際美術館で10月2日まで開催されている「始皇帝と大兵馬俑展」に、酷暑にもめげずに出かけた。
国立国際美術館は会場が地下にある。エスカレータで下りると早速鑑賞者を楽しませる仕掛けが。とはいえ、私にはこの登場人物たちがわからない。
ここにも兵馬俑が。
そしてまずは腹ごしらえに入ったレストランでは、
この特別展にちなんで「やわらか東坡肉のハッシュドビーフなるものがあったので、迷わず注文。
揚げた春雨の下には本当に軟らかい東坡肉が。本物を食べるといかに自分の作るものがええ加減なものかを思い知る。
食後エスカレータで地下2階へ。乗り継ぎのところにはこんな凱旋門?が。
ところで、同展図録の「永遠無窮-出土品と兵馬俑が語る始皇帝の夢」という文で東博の川村佳男氏は、兵馬俑は1974年(昭和49)に発見され、その2年後には東京国立博物館・京都国立博物館を巡回した「中華人民共和国古代青銅器展」で3体が展示されたという。
当時京都で大学生活を送っていた私は、何の知識もなかったが、ポスターを見て取り敢えず行ってはみた。
その後長い間兵馬俑のことは忘れていたが、夫が「敦煌莫高窟に行こう」と言い出して探し当てたツアーの日程に兵馬俑坑の見学が入っていた。
西安から兵馬俑坑へと向かう途中から渋滞し、我々の見学コースからは外れていた始皇帝陵に登る人たちを車窓から眺めていた。中国では皇帝の陵墓に登れるのかと感心していたが、現在では禁止されているらしい。
同展図録の「銅車馬坑の位置」という図によると、その時通った道路が、始皇帝の陵園の中央部を突っ切っている。間近で見た始皇帝陵は山のような墳丘だった。確か驪山と呼ばれていると聞いた。
驪山の1㎞以上東方に兵馬俑坑は位置している。この間には何も埋まっていないのかな。
当時は1号坑から3号坑までしかなかった。銅車馬は展示庁に安置されていたように記憶している。
1号坑は巨大な体育館のような造りで、一番多きな俑坑だった。
そして2005年には、同じ国立国際美術館で「中国国宝展」が開催され、そこでも珍しい俑が出展されていた。翌2006年には、京都文化博物館で「始皇帝と彩色兵馬俑展-司馬遷『史記』の世界」でも兵馬俑を見た。だからといって、兵馬俑が好きで行ったのではない。
では何故今回の兵馬俑展を見に出かけたかというと、2002年に現地で見た銅車馬をもう一度見たいと思ったからだった。
いざ会場に入って解説や出土物を見ながら進んでも、兵馬俑も銅車馬もなかなか現れないのだった。しかしながら、展示品だけでなく、各所で示された説明などが、非常に分かり易く伝わってくる。秦という小国が、徐々に力を蓄えて中国を統一していく様子が、こんなによく伝わってくる展覧会は初めて。
同展図録の陝西省文物局局長趙榮氏の、我々はこれまでにない斬新な展覧会をめざし、最新の研究成果と最先端の展示方法によって、日本の皆様に始皇帝陵の兵馬俑を楽しんで展観していただけるよう努めましたというメッセージ、
そして川村佳男氏の、この約40年間に行われた調査と研究は、兵馬俑の新しい知見を絶えず私たちにもたらしてきた。同時に、兵馬俑を作らせた始皇帝と秦王朝にかかわる遺跡や出土品への調査研究も、大幅な進展を遂げた。成果の蓄積は、周辺環境や前史などを含む、より広い視野で兵馬俑を捉えようとする機運を形成しつつある。こうしたなか、建国から始皇帝の天下統一にいたる秦の歴史をたどり、そのうえで兵馬俑の意味を改めて問おうとするのが本展の眼目である。
本展は兵馬俑の調査研究を積み重ねてきた学術界だけでなく、始皇帝と兵馬俑にゆかりのある日本の国立博物館にとっても、満を持して開催されるという永遠無窮の文。これらの言葉そのままの、素晴らしい展覧会だった。
銅車馬は結局最後の方に展示されていた。秦という国のその後を思うと当然かも知れない。
そして、その後に、この展覧会に向けて中国で製作されたという兵俑のコピーがずらりと並んだ通路を通っていく。
写真撮影がOKのところがあるということだったが、このことだったのだ。
さすがに中国人の作ったコピー。でも、下から写したせいか、ほとんどの俑が笑っている。
こちら側だけでも12X2と立て膝の1体で25体。
その奥にはこんなコーナーも。兵俑と一緒に記念撮影しても良いみたい。
ミュージアム・グッズもいろいろあったが、何といっても図録が一番。
遺物についてその時の最新の情報が得られるだけでなく、出品されていた兵馬俑などが、現地のどの辺りから出土したものか、それぞれの俑がどんな武器をどのように持っていたかなどが丁寧に図解されている。
→始皇帝と大兵馬俑展2 青銅器で秦の発展を知る
関連項目
中国の古鏡展3 羽状獣文から渦雷文、そして雷文へ
始皇帝と大兵馬俑展8 陶鍑
始皇帝と大兵馬俑展7 繭形壺
始皇帝と大兵馬俑展6 馬の鞍
始皇帝と大兵馬俑展5 銅車馬と壁画の馬
始皇帝と大兵馬俑展4 銅車馬と文様
始皇帝と大兵馬俑展3 銅車馬
※参考文献
「始皇帝と大兵馬俑展図録」 2015年 NHK・朝日新聞社
「秦始皇陵兵馬俑」 秦始皇兵馬俑博物館編 1999年 文物出版社
「始皇帝と彩色兵馬俑展図録」 2006年 TBSテレビ・博報堂
「図説中国文明史4 秦漢 雄偉なる文明」 稲畑耕一郎監修 劉煒編著 2005年 創元社