ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2013/08/02
古代ガラス展とアンティキティラ島出土物 円錐ガラス碗
アテネ考古学博物館で、アンティキティラ島出土物のなかに美しいガラス碗を見付けた。
同じ系統のガラス器の破片が一つのコーナーに展示されているが、下の破片は薄手なのに、この円錐形の碗は厚手だった。
刻線文円錐形碗 前1世紀初頭
まだ吹きガラスの技法がない古代ローマの作品なので、鋳造ガラスだろう。
口縁下内側に2本の刻線がある。上の線が浅いため外側からは見えず、下の線だけが外側に見えている。
この器の美しさは、紫の部分が墨流しのように複雑にグラデーションを表しながら、右口縁部から下方へと下りて行く様子だ。見ていると段々下へと広がっていきそうな気配すらある。
備前焼の緋襷(ひだすき)を連想させる。
このような繊細な表現は、パート・ド・ヴェールによるものだろう。器体全体に小さな気泡もみられる。
よく似た形のガラス碗を古代ガラス展で見た。
銘文入碗 東地中海地域 前2-前1世紀 ガラス 口径14.2㎝ 岡山市立オリエント美術館蔵
『古代ガラス色彩の饗宴展図録』は、淡褐色透明ガラスを鋳造した尖底の碗。口縁部は研磨仕上げ、内外面ともに研磨されている。外面口縁下に「プリスコスのもの」銘、外面底部に二重圏線、内面口縁下に2単位の二重圏線装飾がカットされるという。
かなり厚手の碗だ。
どちらの器も、このように底が尖っていて高台もないので、テーブルの上に置くことすら困難だっただろう。ということは、何か特別な時にだけ、固有の台に置いて使用する器だったのだろうか。リュトン(角形坏)のように、飲み干すまで器をテーブルに置けないというような類の。
レースガラスはアンティキティラ島出土物にも← →イストミアのガラス・モザイク・パネル
関連項目
古代ガラス展6 金箔ガラス製メダイヨン
古代ガラス展5 金箔ガラスとその製作法
古代ガラス展3 レースガラス
古代ガラス展2 青いガラス
古代ガラス-色彩の饗宴-展はまさに色彩の饗宴だった
その他ガラス・ファイアンスに関するものは多数
※参考文献
「古代ガラス 色彩の饗宴展図録」 MIHO MUSEUM・岡山市立オリエント美術館編 2013年 MIHO MUSEUM