ロビー1で待ち受けていたのは😳
花入 Flower Basket 女(ひと) 2018年 長倉健一
説明パネルは、手を使う創造的な仕事に関心を持っていたという長倉は、まず職業として型染めに取り組んだという。その後、竹材の卸問屋であった祖父に学びながら、自らの制作を開始したという。
遠くからでも女性像だと分かるものだが、
本作は竹管の一部を残し、その先を細かく割いて編むことで、しなやかな女性の身体をかたち作っているという。
頭部を表現した箇所の径の竹材が、この膨らみや捻りのある人体へと変わっていったのだ。
奥に細長い高麗青磁の鶴首瓶が展示されているのも面白い。
側面より
これに入れて生える花ってどんなん?口が狭いから一本だけ
子供たちにささげる土 Earth Dedicated to Children 1975年 田辺陽太 紫竹
こんなに拉がった大きな作品、しかも見下ろすことができるとは。
俗人としては口の中を見てみたくなる・・・口縁部の力強い捻りや、蜜に編んだ器体とは裏腹に、底は2本の竹ヒゴを粗く編んで格子になっていた。
4つの角はそれぞれ膨らんでいる。
街(型からの形) Compositionof Molded Forms fromthe series Town 川崎毅(1942-)
この作品は見下ろせる作品ということで、「子供たちにささげる土」と共通点があるので、展示されているのだろうか。
上から見ると、
その後の展示室では、
花籃(はなかご)4点、うち左端だけが異質なような・・・
舟形花籃 出帆 Boat-Shaped Flower Basket, Setting Sail 2015年 四代田辺竹雲斎(1973-) 真竹・籐・竹枝
説明パネルは、底部や側面に異なる編み方を組み合わせた舟形の花籃という。
途中から骨ヒゴだけとなり軽やか。
把手の長い花籃3点
牡丹籃 Peony Basket 1940年代後半頃 初代前田竹府斎(1872-1950) 真竹・籐・漆
説明パネルは、本作は、多数のヒゴを並列に組んだ「千筋組み」が用いられた。八角形大振りな籃である。側面には、部分的に籐で繊細な竹刺し編みが施され、幾何学的な印象を与えているという。
菱形は籐の竹刺し編みだった。
玉簾編花籃 Flower Basket 1926-45年頃 初代山本竹龍斎(1868-1945) 真竹・籐・漆
説明パネルは、本作で用いられる玉簾編みは初代山本竹龍斎が考案した編組技法で、胴の横方向の竹ヒゴの上下で、縦方向の竹ヒゴに籐をかけ結ぶものである。底部の四隅には竹節でつくられた脚がつけられているという。
全体写真はピンボケ😥でも、玉簾編みと底は何とかピントが合った。
底は4つとも内側が浮いていて、最初からこんな傾きを持たせてつくったのだろうか、それとも徐々に反ってきたのだろうか、不思議に感じた。
亀甲透編瓢形花籃 Gourd-Shaped Flower Basket 20世紀半ば 二代田辺竹雲斎(1910-2003) 真竹・籐
説明パネルは、二代田辺竹雲斎の得意とした、透かし編みの魅力が感じられる作品である。竹の質感を感じさせないほど極めて細く、薄く作られた竹ヒゴを亀甲編みにして、胴部をやや凹ませた瓢形の花籃としている。シルエットを楽しむことのできる軽やかな造形であるという。
どれもピントが合わなかったが、一番ましなのを😅
透けて見える奥側の亀甲とぴったり合っている箇所もあり、胴部のくびれは極細のヒゴが曲線的に見えたりと、見飽きない。
「夜月の竹窓 晴翠舞ひ、 春風の花籃 牡丹開く」という張弼(明時代)の漢詩に合わせた花籃と大皿
牡丹花籃 富貴 Peony Basket,Prosperous 1940-50年頃 二代田辺竹雲斎(1910-2000) 真竹・籐・漆
説明パネルは、煎茶趣味において花籃は「からん」と読み、明また清時代への憧れを感じることができるという。
そういえば、中国では抹茶はずっと以前に途絶え、煎茶が好まれるようになったという。何故、日本には未だに抹茶が残っているかというと、端っこの島なので、伝えるところがなかったからだと聞いたことがあるが、誰から聞いたのかもう記憶の外で、真偽のほども定かではない。
非常に精密につくられているのだが、胴部の竹ヒゴが真っ直ぐ並んでいるところには揺らぎが感じられる。
「弧山の水月無辺の思い、只清香のみ在りて、枝は在らず」という許及之(宋時代)の漢詩に合わせた茶碗と籃
月白釉碗 金時代・12-13世紀 鈞窯 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
「野山にまじりて竹をとりつつ、万の事につかひけり」という竹取物語(平安時代)の文に、床の間のように掛け花入と香合を飾っている。
掛け花生 Hanging Flower Holder 1945年 飯塚琅玕斎(1890-1958) 真竹
竹の内側はこんなに線があったかな
色絵結び文香合 Insense Box in the Shape of a Musubi-bumi(Knotted Letter) 江戸時代・17世紀 野々村仁清
果物籃 水月 Fruit Tray,Moon Reflected on Water 1929, 阪口宗雲斎(1899-1967) 真竹・籐・漆
説明パネルは、水に映る月という銘のとおり、見込みには円がほのかに見られ、把手と一体となった縁や、竹節を残す造形など円錐形を強調しているという。
この作品も影がよく見えたのに、淡く映ってしまった。
確かに少し色を違えて円形に塗られている。
両端は竹の節から切り取らずに、残した竹身を少しずつ細く割いているのだった。
形が似ているもの
茶葉末釉双耳方形瓶(清時代・乾隆年製 1736-95)と
魚耳付花籃 Chinese-Style Flower Basket 1922年 初代田辺竹雲斎(1877-1937) 煤竹・籐・漆
説明パネルは、陶磁器で古代の青銅器の姿を写したように、竹の作品においても青銅器や陶磁器、漆器などから影響を受けながら、質感を模しつつもその違いを楽しんだのかもしれないという。
緑釉獣環壺 後漢時代・2-3世紀
青銅器では遊環(環が動かせる)でも、陶器でつくった饕餮文の環付きに陶製の環をつけて釉をかけ焼成しているので動かない。ただし時代が下がると遊環の陶磁器もつくられる。
華籃 1910年代 二代飯塚鳳斎(1872-1934) 真竹・籐・漆
説明パネルは、本作は複数のパターンで緻密に編まれ、中国の青銅器を思わせるかたちに遊環を持つという。
竹細工だと遊環にできる。
遊環が4つで、耳は陶磁器ならきっと龍を象っただろう。
廣口花籃 Flower Basket with Wide Opening 1965年 五世早川尚古斎(1932-2011) 真竹・籐
説明パネルは、本作は胴部の半ほどで一旦引き締まり、左右で高さの異なる口が特徴的なかたちの花籃であるという。
竹ヒゴを1本ずつ編んでいき、途中で2本ずつ編んで径を小さくし、再び1本ずつ編んで、最上段では斜格子文としている。
涼しげに透けた花籃の中に背の高い受筒が入っている。
正面から見ると口縁部が∞形にうねっていた。
その口縁部でさえ透けているが、円環を両側のものをくぐらせて連続させて曲線的。
似ているかな?
四方縁盛物籃 Fruit Tray 1965-77年頃 五世早川尚古斎 煤竹・鳳尾竹・籐
説明パネルは、早川家に伝わる、幅の広い竹材を揃えて組む鎧組みという技法に、自ら創意を加えた切込透を考案した。特徴的な組みの技法に優れ、「組の早川」と称されたという。
厚みのある胴部の透けているのがすごい。これが切込透かな。
そしてこれは鎧組みという技法?
右:牛形花籃 Flower Basket 20世紀半ば 阪口宗雲 鳳尾竹・煤竹・籐・漆
どう牛形なのか・・・
竹ヒゴを縦に並べ、中央部を特に細いヒゴを並べている。
古箭竹盛籃 Fruit Basket 田中篁斎 1946年 煤竹・古矢竹・漆・金箔・籐
矢軸に用いる細身のヤダケを曲げて籃にしている。煤竹は口縁部など幅広の平らなものだろう。
隙間は多いが、見るからに丈夫そう。
重編花籃 Flower Basket 1980年代 二代田辺竹房斎 真竹・籐・漆
表面に網目が出ているところと立体的な菱形とが交互に編まれている。
何故か奥側にピントが合ってしまった。
緻密な編組を見ていた目には素朴な竹籠に見える。何かを入れて野山に出掛けるような。
提梁花籃 舞蛙(かわずまい) Flower Basket,Dancing Frog 1918年 三世尚古斎(1864-1922) 変竹・籐
説明パネルは、提梁とは器物につけられる柄をいい、本作では曲がりのある変竹を丸のまま利用し、荒編みで形づくった籃の口縁部につけられる。三世尚古斎は初代以来の唐物籃を範とする緻密な編組の技術をもちながら、個性的な籃の創作にも取り組み、本作にみられるような荒編みの技法で知られたという。
規則性の掴めない荒編み
高さのない作品3点
花籃 水仙詩 Flower Basket,Song of the Daffodils 2013年 勝城蒼鳳(1934-) 真竹・漆
説明パネルは、斎藤文石を通して琅玕斎の技法を研究し、身のまわりの自然や日常のなかで感じ取った閃きを作品で表現する。本作は、灯油で割った漆を刷毛で塗った後、刷り込むことを繰り返す摺漆の技法により、竹の美しさが引き立てられているという。
これがスイセンの群生
花籃 起耕 Flower Basket,Turned Soil 1999年 勝城蒼鳳 根曲竹・漆
結わえるという言葉そのものを形にしたよう
こんな力強い把手なら、どんな重い物を入れても大丈夫そう。
晒竹捻り組花籃 Flower Basket 1976年 小管吼月(1932-2016) 晒竹・籐
説明パネルは、並列させたヒゴにひねりを加えることで、作品に軽やかなリズムを生み出すひねり組みを得意とするという。
陶磁器のような形の花籃で、捻り組んだヒゴの凹凸でさえ、滑らかに見える。
晒竹については、真竹から油分を抜いたという。
ロビー2にはエリック・ゼッタクイスト氏のオブジェクト・ポートレイト展で展示されていた飛青磁花生(元時代・14世紀)と白磁鉄地壺(朝鮮時代・15-16世紀)の写真から少し離れて、
潒潒 flowing Water 1983年 本間一秋(1930-2017) 真竹・籐・漆
説明パネルは、「編んだ絵画」ともいえる本間一秋による平面作品は、飯塚小玕斎から影響を受けたものとされる。本作は、川波に映る紅葉の鮮やかな色彩に着想を得て制作されたという。
平面的な作品だが、捻り組の向こうにも地編み?も見え、かなり奥行がある。
白錆花籃 雲龍 Flower Basket,Dragon in the clouds 1990年 飯塚小玕斎(1919-2004) 真竹
説明パネルは、本作には、飯塚家の得意とする「つぶし」という技法が用いられている。真竹の油分を抜いた晒し竹を半分に割り、それをさらにしなやかにするために叩いて平らにすることで、竹の素材の美しさを感じることのできる夕が優雅で力強い曲線を生むことができるという。
竹を割いて、一気に曲げて球状のものを作り上げたような、勢いと力強さのうかがえる作品である。
隙間から受筒が見えた。
潮 Tide 2007年 藤塚松星(1949-) 真竹・漆
説明パネルは、藤塚松星が用いた「彩変化」という技法は、見る角度によって作品りの表面の色が変化して見える。これは、竹ヒゴの断面を三角形に整え、側面に異なる色を染め分けることで生じる視覚効果であるという。
一方、形は同じように球状でも、繊細な趣ある作品。
異なる工芸で形の似たもの
盛籃 Fruit Tray 1960年代前半 横田峰斎(1899-1975) 真竹・鳳尾竹・籐・漆
街(入口の階段) Staircase at the Entrance 川崎毅(1942-)
説明パネルは、本作は、見込み中央の竹を編まずに筋状に重ねており、菱形の文様を形作る。ひとつの籃の中に、曲げられた竹のしなやかさと、細く割ってもまっすぐ安定する強靱さを見ることができるという。
確かに編まずに、横に並べた竹ヒゴの面を交差させて文様をつくっている。
維新 Wave 1981年 門田篁玉(1916-) 真竹
説明パネルは、本作のような、細いヒゴの束が絡み合い、うねりを感じさせる作風で知られるという。
凄い数のヒゴ。中までぎっしり詰まっていそう。
でも、中が透けて見える意外と厚みがないのだった。
花籃 双樹 Flower Basket,Sacred Trees 2006年 谷岡茂男(1949-) 煤竹・鳳尾竹・高野竹
説明パネルは、丸竹の組み技法を得意としているという。
双 Pair 1971年 東竹園斎(1915-2003) 真竹・籐・漆
説明パネルは、独創的な構成の作品を得意とし、コッツェン・コレクションの核をなすことでも知られているという。
幅広の竹ヒゴすべてが見込みの中央に
似たもの
花籃 旅枕 Flower Basket,Sleeping Away from Home 1940年代前半 飯塚琅玕斎(1890-1958) 真竹・籐
陶器の花入に旅枕という形がある。筒型の細長いものをいうが、本作は枕らしく横長である。
広い幅の竹ヒゴを荒く編んだ、目に心地良い作品。
アビー・コレクション竹工芸名品展 影を探して←
関連項目
竹工芸名品展 インスタレーション
参考文献
「メトロポリタン美術館所蔵 竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション 図録」 2019年 NHKプロモーション
表表紙
裏表紙