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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2016/10/11

田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展3 十九~三十六帖


十九帖 薄雲(うすぐも)
入り日さす 峰にたなびく薄雲は もの思ふ袖に 色やまがへる
ありますなあ。降り続けた雨があがった夕方、やうやう山際少し明かりて、紫だちたる雲が低くたなびきたること(枕草子風になってしまった)。

二十帖 朝顔(あさがお)
雪の降り積もった月夜、光源氏は庭で雪転がしをして遊ぶ女達を眺める。
十二帖の須磨で、硫化の程度で3つの玉の銀箔の色が異なるということだったが、それならこの黒っぽいのは強烈に硫化させた箔なのだろうか。
表面に張り付いている透明なガラスは、光によって緑や紫に見える。それはここだけネオジウム・ガラスを使っているからだそう。
ひょっとして我が家に十数年前からあるガラスの小皿が見方によって色が違うなあと思っていた。それがネオジウム・ガラスなのだろうか。

二十一帖 少女(おとめ)
ふすまも固く閉ざされて会えない辛さに、夕霧も雲居雁も涙する。
この中央の緑色のものは涙だった。
上から見ると2つある。夕霧と鴨居雁の涙が一滴ずつ閉じ込められている。

二十二帖 玉鬘(たまかずら)
初瀬詣で長谷観音の霊験により、夕顔の遺児玉鬘は六条院に引き取られる。
なんというシャープな造形。これが源氏物語に関係なく展示されていたら、嵯峨野の竹林とその間からのぞく青空を思い浮かべただろう。
イノシシがまだ土の中で育っている筍を掘り返して穴だらけになってしまった実家の竹林では決してない。
しかし、田上氏が初瀬詣でをイメージしたからには、これは長谷寺への道のりに沿う初瀬川だろう。

二十三帖 初音(はつね)
源氏の大邸宅六条院は、落成後初めて正月を迎える。
お年玉の封を開く瞬間のようなワクワク感がある。

二十四帖 胡蝶(こちょう)
紫の上の春の御殿、六条院で行われた船楽では、鳥と蝶に扮した舞童が花を添える。
華やかな衣装を纏って踊る童たちを表現するのは、玉をたくさん入れた方が良いかも。
しかし、ピントが合っているのは右の玉だけ。

二十五帖 蛍(ほたる)
源氏が部屋に蛍を放つと、ほのかな明かりに、玉鬘の美しい姿が浮かび上がる。
白いレースガラスは蛍の光跡?

二十六帖 常夏(とこなつ)
暑い夏の日。池を臨む釣殿で、源氏と息子の夕霧、内大臣の息子らが涼んで歓談する。
こんな風に水面を動かす風が涼を呼びそう。

二十七帖 篝火(かがりび)
源氏は池畔に焚かせた篝火を見ながら恋の歌を詠み、夕顔の娘玉鬘は困惑しつつ返歌する。
鉄の籠、かがりの中で、火が燃える様子を彷彿とさせる。

二十八帖 野分(のわき)
例年にない激しい台風で、六条院の一部が崩壊する。
これは台風の目?

二十九帖 行幸(みゆき)
大原野の行幸、輿の中に見える冷泉帝の端然とした美貌に、玉鬘は釘付けとなる。
5本ずつの截金が端然とトンボ玉を取り巻いている。穴のところまでしっかりし続いている。

三十帖 藤袴(ふじばかま)
夕霧は藤袴の花を御簾の隙間から差し入れ、玉鬘に求愛する。
この白い線は御簾だったのか。

三十一帖 真木柱(まきばしら)
北の方は、夫である髭黒大将の背後から、いきなり、香炉の灰を浴びせかける。
灰がかかった様子がよく表現されている。ざらざらした石のようでもあるけど、多面体の角にピントが合っていない。



三十二帖 梅枝(うめがえ)
練香を作り披露しあう薫物合わせ。紺瑠璃・白瑠璃の壺には、五葉と梅の枝。

これもピントを合わせにくい作品。
初めに見た時は、枝は金属だろうと朧気に見ただけだが、ガラスだと聞いて見直すと、赤い小さな蕾がプチプチ付いていて、ほんにガラスですわ。
ということは、トンボ玉の方は紺瑠璃の壺?
枝にピントを合わせたのが上の写真、玉に合わせると枝はピンボケに(神戸とんぼ玉ミュージアムにて撮影)

三十三帖 藤裏葉(ふじのうらば)
宴の折、夕霧の盃に藤の花房が差し出され、雲居雁との結婚が許される。
金の細い筋の羽状文が藤の葉を表しているのかな。

三十四帖 若菜(わかな)
紫の上は和琴、明石女御は筝、明石君は琵琶、女三宮は琴。四人の女君の合奏。
心の裡はさまざまな女君4人が、心を一つにして楽器を奏でる様子を紫御簾の外から窺ているよう。

三十五帖 柏木(かしわぎ)
女三宮を垣間見たことに端を発する、柏木の悲劇。
文様として見ると菱文繋ぎで、光悦垣にも見える。もっとも、源氏物語が書かれた時代に光悦垣はまだなかったが。

三十六帖 横笛(よこぶえ)
柏木遺愛の横笛を、夕霧が受け取る。
全体を覆う金箔を横切る線は間隔も幅もまちまち。田上氏はそれにどんな思いを込めたのだろう。笛の穴もあちこちにあるのが興を惹く。
横笛なので横向きに写したが、天善堂では別の横笛が革紐と組み合わせてあった。とても良い雰囲気のアクセサリーに仕上がっている。

※ これらの作品は田上惠美子氏及び天善堂さんの許可を得て撮影しました。

  田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展2 一~十八帖
                 →田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展4 三十七~五十四帖


関連項目
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