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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2010/08/24

エジプトの王像2 小さなクフ王像はずっと後世のもの


ジェゼル王像の顔は壊されたために恐ろしい形相になっているが、身体は薄い存在感のないものだった。
ジェゼル王像について『世界美術大全集2エジプト美術』は、古代エジプトで最古の等身大の彫像である。立体的に支配者の姿を表した像、すなわち王像も、初期王朝時代に初めて現れたという。
小さな王像なら確かに初期王朝時代のものが発見されている。

カセケム王座像 初期王朝、第2王朝(前2700年頃) ヒエラコンポリス出土
右:片岩 高62.0㎝  オックスフォード、アシュモーリアン美術館蔵
左:片岩 高さ55㎝ 大英博蔵
原色世界の美術12 エジプト』は、現在まで知られているものでは、王名を確認できる最古のエジプト彫刻である。両方ともほとんど同形で、王は上エジプトの白冠をかぶり、セド祭のための長衣をまとっている。側面の図像は殺戮され、もしくは捕虜になった敵を表しているという。
王の座った椅子には上下エジプトの統一を示す図柄が線刻されていたりするが、まだこの時代にはないようだ。しかし、敵を殺したり捕虜にしたりする図がもう現れている。
クフ王座像 アビュドス出土 象牙 高7.5㎝ おそらく末期王朝、第26王朝(前600年頃) カイロ、エジプト博物館蔵
エジプト人学者ザヒ・ハワースはこの小像を詳細に検討し、アル=ギーザ出土のメンカウラー王の象牙製立像との比較などにより、クフ王の座像の加工技術が劣っている点などをあげて、このクフ王の小像が今までいわれていたような古王国第4王朝時代のものではなく、古王国時代の王に対する個人崇拝が盛んであった末期王朝の第26王朝時代の作品であると結論づけているという。
カイロの博物館で見た時は何故こんなに小さいのかと不思議だったが、クフ王の時代につくられたものだということに疑問を持たなかった。

しかしながら、考えてみると、ジェゼル王の時代にすでに等身大の王像が造られているのに、こんな大きなピラミッドを建造したクフ王が、等身大、あるいはもっと大きな自分の像を造らせないはずはないだろう。
カフラー王の座像はカフラー王の河岸神殿から発見されているので、立派なクフ王像もクフ王の河岸神殿に置かれていたかも知れないが、残念ながらクフ王の河岸神殿は現存していない。
カフラー王像については次回

※参考文献
「世界美術大全集2 エジプト美術」(1994年 小学館)
「図説古代エジプト1 ピラミッドとツタンカーメンの遺宝篇」(仁田三夫 1998年 河出書房新社)
「原色世界の美術12 エジプト」(1970年 小学館)
「吉村作治の古代エジプト講義録上」(吉村作治 1996年 講談社+α文庫)