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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/12/18

クニャ・アルクのタイル1 謁見の間


ヒヴァのイチャン・カラにある謁見の間(クリニシュ・ハナ)は、2本の円柱のあるアイワンの壁面がタイルで飾られている。しかも、日本では染付、中国では青花と呼ばれるコバルトブルーと白の絵付けタイルである。


① 8点星と十字形の組み合わせ
白い輪郭線のあるコバルトブルーの線が、大きな花文を中心にして8点星を、小さな花文を中心にして十字形を描いていく。これは、かつてのラスター彩や青釉のタイルの組み合わせ(13世紀)や、アイシャ・ビビ廟(12世紀)の浮彫焼成レンガにある組み合わせだ。タイルの形を8点星や十字形にする伝統は失われたが、絵付けタイルとなって、この2つの形の組み合わせが、壁面を装飾するタイルに見られる。
それだけではない。3本の平行する白い線が円形枠の花文の周囲を縦横斜めに走り、交差するところでは格子柄の菱形や正方形ができていて、この白線のつくり出す文様が一番目立つ。

② 6点星と六角形の組み合わせ
実際は、その下の小さな区画にあるタイル。文様はほぼ同じ
組紐というものは、他の線を越えたり、くぐったりして立体的に表されるものだが、ここではすべて平面的に交差して、そこに小さな菱形をつくっている。
左右対称、あるいは上下対称に渦巻く蔓草文が展開し、ところどころにトルコブルーが差し色に使われている。蔓草には小さな丸い露があちこちに付いているが、葉もあるので、日本の蛸唐草とも違う。
その蔓草文は、輪郭線を越えて横に続いている。

③ これを何文様と呼べば良いのだろう?
日本の立涌文を、振り幅を大きくして、狭い箇所はくっついてしまったものが縦横に並んでいるとでも・・・
蔓草文は組紐文に関係なく上下左右に続いていく。ここにも露がある。
下の文様帯では、二重蔓になっているが、渦巻かない。

④ 四重に渦巻く蔓草文
一つ一つの渦巻が密に接している。
四重に渦巻いて、中心に横向きの花を咲かせる。その花びらは細く、節のような線が幾つか描かれている。砂漠に咲く花を描いたのだろうか。
一番外側の蔓は、上下あるいは左右に続く渦巻きをつくるものと、その先にいくものとが枝分かれしている。
これくらい拡大すると、タイルの位置を識別する記号が描かれているのが見える。そして露も。

⑤ 壺のような柱礎のような文様
シャーヒ・ズィンダ廟群以来、下方に見られるモティーフだが、何かは分かっていない。
その中だけを蔓草が埋めている。

⑥ 8点星、4点星、変形六角形、変形四角形の組み合わせ
サマルカンド、シャーヒ・ズィンダ廟群のトマン・アガのモスク(1405-06年)のイーワーンに見られるように、組紐が様々な幾何学文様をつくり出しているが、こちらは8点星を中心にして、へ家四角形、4点星、変形六角形の組み合わせとなっている。
別の見方もできる。日本の立涌文を直線的にしたような2本の線を、大きく斜めに引き、その上から小さく縦に引き、最後に横に引くことによって、これらの文様が出来上がっている。
また、ここでは渦の巻き方が緩やかで、8点星の中心から出て、四方に展開していく。花も小さなロゼット文から、大きな花を横向きに描いたものまで、様々に表されている。



旅編に載せた文様の他にもあったが、場所を覚えていないもの。

⑦ 蔓草の立涌文
その隙間には、四弁花文を縦に並べた文様が置かれる。

⑧ 8点星と十字形の組み合わせ
組紐文は平面交差し、しかも、8点星の左右の頂点は組紐の白い輪郭線が交差している。

⑨ 上に向かう左右対称の蔓草文

⑩ 8点星と十字形の組み合わせだけではない。8本の剣文様?
補修の際に文様を繋げることができなかったようで、わかりにくいのだが、8点星と十字形の組み合わせに加えて、斜めに走る組紐文もある。
トルコブルーのロゼット文を囲む、鋭角の8点星から八方に剣のような形が出ていて、その周囲に変形四角形や所謂8点星などがある。
この「8本の剣文様」の左右上下に十字形が置かれているようだ。

⑪ 六角形と6点星の組み合わせ
蔓草文は枠に関係なく続いている。
上の文様帯はハート形が上下になって続く文様のよう。

                     →クニャ・アルクのタイル2 モスク

関連項目
渦巻く蔓草文の絵付けタイルの起源は
クニャ・アルク2 謁見の間
タシュ・ハウリ宮殿のタイル1 幾何学文と植物文
タシュ・ハウリ宮殿のタイル2 幾何学文だけ
タシュ・ハウリ宮殿のタイル3 植物文だけ

※参考文献
「ウズベキスタンの歴史的な建造物」 アレクセイ・アラポフ 2010年