古い物は中国出土の遺品が多かった。さて、これからはどのあたりからのものが多くなるでしょうか。
9 青銅猪頭付斧 東周(前6から前5世紀)
柄を通す部分に浮彫で猪の体が表されている。数本の波状線はたてがみだろうか、頭やたてがみのわりに体は適当に表現している。犬がお座りしているような感じだ。犬歯と牙と唇が一筆書きのように表されている。これを見ていると実際のイノシシの牙がどこについているのかわからなくなってしまう。

イラン系遊牧騎馬民族スキタイの遺品であるが、牙の位置が上の東周のものに似ている。牙と目の間の突起を鼻の穴かと思ったが、鼻は顔の先端にある。この突起はなんなのだろう?

同じくスキタイの遺品だが、銀と部分的に金を使っていて、こちらの方が細工が細かい。解説によると、牙の縁取りと頭部の境に図案化された猛鳥のくちばしが表され、尾の先は開いた鳥のくちばしの形をとっている、のだそうだ。

『図説ケルトの歴史』によると、ケルト神話の聖なる動物のひとつに猪があるらしい。雄猪は強さや力のシンボルとして重要視され、武具を飾ったようだが、神像に猪を彫るというのはどういうことだろうか。神の瑞獣あるいは眷属と考えてよいのだろうか。

これもケルトの遺品。解説によると、牙・耳などを丁寧に表し、たてがみは小さく休息のポーズ、なのだそうだ。 牙は上の3品とは全く異なる表現だ。
足の裏にほぞのようなものが2つずつついているのは、上記のように武具に取り付けられていたことを伺わせる。

これもケルトの遺物。後ろの大きい像はかすかに目がくぼんでいるかなと言う程度で牙はわからない。手前の小さい像は牙が口の端に表されている。どちらもたてがみに穴があけられていて、何かにとりつけられていたのだろう。

ケルトのトランペット、カルニュクスの頭部残欠で、解説によると、イノシシの頭部を鼻面はより黄色い真鍮で、残りはより赤いブロンズで作り、色彩の対照を見せている、のだそうだ。牙はなさそうだ。

※参考文献
「ユーラシアの輝き展図録」 1993年 京都新聞社
「ふるく美しきもの」 1993年 財団法人中近東文化センター
「ケルト美術展」図録 998年 朝日新聞社
「図説ケルトの歴史」 1999年 河出書房新社