ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2019/10/04
ブリンディシ サン・ジョヴァンニ・アル・セポルクロ教会 石彫
ローマを起点としたアッピア街道の終着点ブリンディシ(Brindisi)にサン・ジョヴァンニ・アル・セポルクロ(San Giovanni al Sepolcro)教会というロマネスク様式の教会がある。
堂内の説明パネルは、ブリンディシの聖ヨハネの墓のある謎の教会。
1099年、この小さな建物は、ノルマン公ボエモンが十字軍がエルサレムを征服したことを祝いに行った帰りに、献堂された。その姿はエルサレムの聖墳墓教会のキリストの復活を記念する円形建物を思わせるという。
扉口両外側に2色のドラムを積み上げた太い円柱が、何を支えるでもなく立っている。
ロマネスク様式の教会だが、扉口のタンパンには浮彫がない。失われたのか最初からなかったのか。
扉口の一対のうずくまるライオンは、
石は揃えてないが同工の手によるもので、背中の台座までを一石で彫られている。
2本の大理石の円柱の上にのる柱頭は、残念ながらどんな場面かわからない。
こちらは風化がひどく、もっとわからない。
説明パネルは、扉口の浅浮彫は聖杯から伸びたブドウの蔓で飾られる。中世のキリスト教では、ブドウの蔓は人とキリストを結ぶことを象徴するものとして用いられた。一本一本の茎は奇妙な人間、時には東方の、世間一般の俗人にとって気付かないメッセージを届けているようだという。
内側に表された実でブドウの蔓と分かったが、聖杯から伸びているのは気付かなかった。
それにしても、枝分かれしたものの先には、蔓をかじる動物の頭部があるのは、いかにもロマネスク。
外側の浮彫もブドウの蔓で、左下から、上を向いた鹿の口から蔓が出ていて、
その上の写真がなく、更に上は動物に乗った女性や、魚その上にドラゴンのような動物に乗った女性、
戦う戦士たち、その上に有翼の尾の長い動物、
牡牛を襲うライオン、そして一番上が犬のような動物を襲う鳥グリフィン。
右下から、牛?の背中に固定した壺から出たブドウの蔓は、
一対のクジャク
一人の人物が大きく表され、その上は切れているのでよくは分からないが、動物を捕らえる二人の人物、
熊を捕らえる人物、その上には長い棒を持ち裸馬に乗る人物、
一番上は背中合わせの大きな鳥が顔だけ向き合わせる、ロマネスクの柱頭にはよく見られるタイプ。
聖ヨハネの墓は、八角形で8本の円柱が二列に並んだ聖遺物である。聖地から戻る前に信者や巡礼者が祈るための場所に過ぎなかった。テンプル騎士団と聖墳墓軍の騎士たちだけの謎に満ちた崇拝の場であった。ブリンディジに砦があったことが知られている。
異形の建物で、13世紀のフレスコ画は礼拝堂だったことを思わせる。しかし、すぐにオカルトとも言える側面を持っていることがわかるという。
既に建物があったためか、内陣や後陣を設けるためか、東側が直線的に切られ、正円ではない(その上、斜めから撮影したので歪んでいる)。
オカルトとされているのは、内壁にキリスト教由来のものではない様々な文様が描かれていることによるらしい。パネルにそれぞれの説明があったのだが、イタリア語だけ!
確かに、ローマのサンタ・コスタンツァ廟のような円形で柱が二列に並ぶが、柱間のアーチはややいびつ。その簡素さが木製の天井とよく合うが、柱頭は繊細なアカンサスの葉文様で、円柱は古い建物の転用材のよう。
東壁中央の内陣。ミサまたは儀式を行っていたところ。
その下には
瓦
文字が刻まれ、端に渦巻などがある石材の上に道具類が置かれている。
そして変形円堂の中央床には穴があいていて、ローマ時代の遺構が見えるようになっていた。ブリンディシは、十字軍が船出した港であったはるか以前から、ローマ帝国の港町だった。
それ以前は南イタリアはマグナ・グラエキア、ギリシアが植民していたので、この下にギリシアの遺跡もあるかも。
別の考古学地区にあったローマ時代の平面図
周壁に埋め込まれた円柱と柱頭は葉文様らしい。
こちらは二段のアカンサスの葉。
内側の柱列の柱頭
一段の葉文様はアカンサスぽくなく、中央の茎から人頭が出ている。
やはり二段のアカンサスが多い。
中庭への扉口。
その右手にも、線刻が残っていた。左がドラゴンの頭の船という。
扉口の外側にも装飾があった。
楣石は色が違うので後補ではないかな。左右には蔓草に絡められない動物がレースのような枠の中に表されている。
左上から、人頭のグリフィン、花を啄む鳥
獅子グリフィン、後ろを振り返る犬?
長い尾を巻く怪物、後ろを向く鹿と植物
左上から、騎馬人物、休む山羊(毛が長いので牛ではなさそう)
食べている動物と鳥、仔牛?そして一番下はネコ?
内側は蔓草文様だが、動物も人物もいない
→サン・ジョヴァンニ・アル・セポルクロ教会 壁画
関連項目
ブリンディシ(Brindisi) 朝散歩
縞大理石をまねる 古代ギリシャ-時空を超えた旅展より