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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2018/04/03

中国にも11-12世紀の粒金細工


タブリーズのバザールで粒金細工をしている人を見かけたことは、今回の旅行の収穫の一つだった。現代ではよみがえった粒金細工の技法は、古代に絶えてしまったものと思っていたからだった。
それをきっかけに久しく手に取ることのなかった、ウイーン美術史美術館で1999年に開催されたカリフの宝物 ファーティマ朝のイスラーム芸術展の図録を開き、イスラーム時代の11-12世紀までは粒金細工という技術が残っていたことを知った。
それについてはこちら

そして今回、『誕生!中国文明展図録』で妙楽寺塔の屋根の上に安置されていた獅子を調べていて、北宋時代の装身具に粒金細工を見つけた。どこかで唐時代以降の粒金細工を見た記憶はあったのだが、発見できて幸いだった。

金製アクセサリー 北宋時代(11-12世紀) 金・貴石 縦6.5横7.2厚0.3㎝ 重22.4g 洛陽市邙山宋墓出土 洛陽博物館蔵
『誕生!中国文明展図録』は、金の針金で枠をかたどった後、その内側に、極細の金の針金をよじった細線を複雑に絡み合わせて紋様を形作り、さらに枠の金線上に微少な金の粒を一つ一つ溶接するという、驚くべき高度な技法が駆使された一品である。中心の雨粒形のところとその四方の小円形には、トルコ石などの貴石が嵌め込まれ、贅を尽くした仕立てとなっているという。
金線による蔓草文様がメインだが、その間にロゼッタ文様が4カ所に配されている。
粒金は輪郭に沿って並んでいるほか、ロゼッタ文の蕊のところには部分粒金が盛り上げてある。
金製耳飾り 北宋時代(11-12世紀) 長4.2㎝重2.04g 洛陽市邙山宋墓出土 洛陽博物館蔵
同展図録は、細い金線や極小の金粒を用いた作りは同様で、繊細で手の込んだ技法には目を見張るものがある。萼のついた花の中心に蝶がとまるという、なんとも粋なデザインとなっており、そこには宋時代の奇抜で斬新な造形感覚をうかがうことができよう。花びらや蝶の胴にあたるへこみには、もとは貴石の類が嵌め込まれていたものと考えられる。
耳飾りとしてはかなり大ぶりで豪華な仕立てとなっており、貴婦人などがつけるにふさわしいという。
こちらは半分に表されたロゼッタ文の蕊に、ぎっしりと粒金が熔着されているのだが、ピンボケである。図版自体がピンボケなのだった。

同書は、上の2点のほかに金製の簪、腕飾り、銀製の箸や匙、瓶など、10数点の金銀製品とともに、北宋時代の貴族墓から発見された。細部にまでおろそかにしない丹念で精緻な作りには、当時、この種の物作りの技量がいかに高まりをみせていたか、その実態を垣間見ることができようという。
ひょっとすると、シルクロードあるいは海の道によってイスラーム世界から将来された宝飾品ではないかと思ったが、ファーティマ朝の粒金細工と比べると、宋墓出土のものの方が細工が繊細である。中国では、唐時代以降も絶えることなく粒金細工が受け継がれ、ますますその技術が向上していったのだろう。

また、金線も非常に細かな細工である。これらの作品を見ていて、ふとイスファハーンのバザールなどで見かけた銀の透彫のような製品が、ひょっとすると銀線細工ではないかと思った。
確かに透彫ではなく、銀線で作り出していた。
記憶は不確かだが、金色のものもあったような・・・

       イスラームの粒金細工

関連項目
中国の古鏡展1 唐時代にみごとな粒金細工の鏡
タブリーズ バザール

参考文献
Fatimidenzeit(カリフの宝物 ファーティマ朝のイスラーム芸術)展図録」 1999年 ウイーン美術史美術館
「誕生!中国文明展図録」 2010年 東京国立博物館・読売新聞社