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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/12/22

クニャ・アルクのタイル2 モスク


クニャ・アルクは日干し煉瓦の外壁で、東門から入ると焼成レンガの建物という、土色一色だったが、謁見の間に入ると、一転して青の世界だった。
そして、モスクもまた青の世界で、しかも、その絵付けタイルは、イルテザル・ハン(1804-06年)が建てた謁見の間のものとは異なる文様だった。
モスクは、アッラクリ・ハン(1825-42)時代に建設された(『ウズベキスタンの歴史的な建造物』より)というから、20-40年ほど謁見の間よりも後に建てられたようだ。

まず、ミフラーブ
植物文だけという大パネルがほとんどだが、唯一幾何学文があるのが、このミフラーブ。
六角形と6点星の組み合わ。白線に囲まれたコバルトブルーの組紐が幾何学文様の輪郭となる。その中も、同じものもあるが、それぞれに異なった植物文が精緻に描かれている。6点星の中の植物文などは、宝相華文のような感じさえ受ける。
幾何学文の間の文様帯は二重蔓の蔓草で、渦巻くことなく、花を咲かせながら繋がっている。ただし、上下に続く2つの六角形の間では、文様は上下対称となり、繋がっていない。

ミンバル(説教壇)の側面
一見して古びたものと補修タイルとがある。雨水も日光も当たらないところで、タイルがこんなに変色してしまうとは。
古びた方は文様が大きく、露が少ない。
補修タイルは小さく渦巻く蔓草で、露が多い。
古いタイル
作った時点で、こんな風に真っ白ではなく、青も濁り気味だったのかも。全体にぼんやりしている。
新しいタイルは、露が多すぎるのが目障りだが、文様ははっきりしている。

西壁
細い蔓草の、枝分かれする箇所の白が目立つ。
謁見の間の絵付けタイルの渦巻は、どちらかというと定規で測ったような同心円状だったが、ここでは、同じ文様の繰り返しだが、真円ではなく、フリーハンドで描いたような勢いがある。
いったい何本の蔓で、幾つの渦巻を作っているのだろう。

南壁西端
トルコブルーの目立つパネル。
ロゼット文を縦横に密に配し、一つのロゼットを葉か別の花で囲んだようなものがトルコブルーで絵付けされている。離れて見ると、それが目立つ。
西壁のものよりも、渦の巻き方が単純。

ミフラーブ上
枝別れする箇所の白が目立つパネル。
蔓は渦巻くだけでなく、S字状に伸びたりして躍動感に富む。
下部中央にアラビア文字が入るが、枠で囲むわれでもなく、蔓草を邪魔しない。まさか、こんなところにタイル工人のサインでもないだろう。

南壁東側
全体の写真はなかったが、辛うじてこんな部分だけは写していた。
左右対称性のある蔓草の展開などは、謁見の間のタイルに繋がる。

東壁
西壁のパネルに似ている。
でも、トルコブルーに絵付けされた形が異なる。
よく見ると、白い蔓にはあちこちで肥痩が見られ、また隣り合う蔓の間隔もまちまち。このええ加減さが目に心地良いのかも。

腰壁は、2種類を2つずつ並べたり、交互だったりする。

パネル全面に左右対称に蔓草が広がっている。
 蓮弁のようにも見えるこの形も面白い。

縁の文様帯も多様。

白・コバルトブルー・トルコブルーの文様のないもの、三つ葉が単純な蔓で繋がったもの。そして、ヒヴァで初めて見た、二重蔓が緩やかにS字状にうねりながら伸びて、葉や花がついたもの。花には大小があり、大きなものには満開のものと盛りを過ぎて散る前のものなどが豊かに表現されている。この蔓草は渦巻かない。
2本の蔓による文様帯は他にもあった。

上:コバルトブルーの地に咲く花の上方から左右に出た蔓は、大きくS字を描いて向きを変えてその花の左右に先を戻す。一方下から左右に出た蔓は、次の花を越えて、その向こうのコバルトブルーの地の花の下側に繋がる。

下:2本の蔓が少し間を置いて、上下にうねっていく。ところどころで枝分かれした茎は弧を描くように伸びるが、渦巻かない。


上:二重の蔓草が2組、交互に左右にうねる。一方は大きな花をつけ、他方は少し小さな花を付ける。その花から出た蔓が大きな花を囲むように伸びる。

下:一見幾何学文のようだが、白い組紐が一筆書きのようにくぐったり越えたりして四弁花文を作っているという風にも見える。その角角した花は横に並び、左右の花弁をコの字形の白い組紐が繋いでいる。このような組紐文でできた細い区画には小さな四弁花文が描かれている。


中:一見2本の細い蔓が、交互にうねっているようだが、そうではない。C字形のようなどこにも壺ながらないものがありいの、枝分かれして戻るものありいの。

下:木瓜文と面取りされた四角形が、互いに重なる文様帯。


中央:幅の広い帯に、左右対称に、蔓草文が表される。

左:単純な二重蔓の蔓草の端がどうなっているのかがわかる。

右:ハート形(フクロウの顔に見える)から左右に出た蔓は、くるりと弧を描いて、隣の蔓と接している。その連続の中に、花瓶のような柱礎のような形が並んでいる。

付け柱と冬用モスク入口
付け柱は、縦横に菱形を配置し、その間を草花文の文様帯が通る。3本の文様帯の交差するところには六角形、6本の文様帯が交差する箇所には6点星が形成され、その中にロゼット文が描かれる。
入口上のパネルは、左右対称に渦巻きながら伸びる蔓草文様が3.5対あって、トルコブルーの花のような2種類の文様が入り込んでいる。
大パネルの文様は、似ているようで、それぞれ異なる。


         クニャ・アルクのタイル1 謁見の間
                    →タシュ・ハウリ宮殿のタイル1 幾何学文と植物文


関連項目
渦巻く蔓草文の絵付けタイルの起源は
クニャ・アルク4 モスク
タシュ・ハウリ宮殿のタイル2 幾何学文だけ
タシュ・ハウリ宮殿のタイル3 植物文だけ