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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/07/17

ハフト・ランギー(クエルダ・セカ)の初例はウスト・アリ・ネセフィ廟


『砂漠にもえたつ色彩展図録』は、何といっても注目せねばならないのは、ハフト・ランギー技法の出現で、先のサファヴィー朝技法の先駆けとなった。その初例は管見の限りシャーヒ・ズィンダーに見受けられる。
サファヴィー朝の首都イスファハーンに建立されたマスジディ・シャーでは、ほぼ20㎝角のタイルに、青を基調に空色、緑、白、黄、黒などの彩色がなされており、この技法を現代イランのタイル職人たちはハフト・ランギーと呼ぶ。ハフト・ランギーとはペルシア語で七色を意味し、となりあう色と色が交じり合わないように、まず境を溶剤で線描し、線に囲まれた面に色を発する釉薬を挿して焼き上げる方式であるという。
それがウスト・アリ・ネセフィ廟(1360-70年)にあるということで、同廟のこのタイルの図版が同書に記載されていた。
それについてはこちら
部分拡大すると、微妙に凹凸があるような。
『世界のタイル・日本のタイル』は、鮮やかな色彩を用いた明快な文様が特徴のクエルダ・セカは、油性の顔料で輪郭を描いたのち、各面を色釉で塗りつぶして焼成したものである。顔料は燃えてしまうため、輪郭線が色釉の部分よりも凹んだ状態で残る。イスラーム支配下にあったスペインでも用いられ、クエルダ・セカという名称もスペイン語から生まれた。本来は「乾燥した紐」を意味するという。
色タイルの部分だけ浮き出て見えるが、実際には黒い輪郭線が窪んでいるのだった。

別のタイルはもっと凹凸がある。その上分割して製作されているみたい。補修タイルだろうか。
その拡大
明らかに凹凸がある。これはハフト・ランギーではない。

では、同廟には他にハフト・ランギーのタイルはあるのだろうか。

ファサードでは、
イーワーン上は、同じ文様の六角形のタイルを貼り合わせて壁面を飾っているが、輪郭線が黒いかな程度にしかわからない。
玄関両側の壁面ではアラビア文字の文様帯の間にある植物文が、創建当初はハフト・ランギーだったかも。
玄関両脇の円柱は輪郭線が凹んでいるようだが、黒くない。
玄関付近には、浮彫タイルでアラビア文字の文様帯の間に絵付けタイルの文様帯がある。
色の釉薬が輪郭の外にはみ出していたりして、補修タイルだった。しかし、このように黒い輪郭線を描いて補修しているということは、オリジナルのタイルはハフト・ランギーだったのではないだろうか。

内部はどうだろう。
八角形の移行部には同じ文様の六角形絵付けタイルが貼られている。
窓のある壁面にも別の六角形絵付けタイル。色の薄いタイルが古い。

腰羽目にも六角形絵付けタイル。
その中に、みごとな幾何学文の組み合わせが組紐文を伴って描かれている。
大抵が六角形で、どのように配置しても文様が繋がる絵付けタイルだった。正方形よりも六角形の方が、幾何学文を描き易いのかな。
黒い線がくぼんでいるところまではわからないが、それぞれに黒い輪郭線が入っている。創建当初はハフト・ランギーのタイルが張りつめられていたのだろう。


関連項目
ハフト・ランギーの起源は浮彫タイル
世界のタイル博物館6 クエルダセカのタイル
シャーヒ・ズィンダ廟群8 ウスト・アリ・ネセフィ廟


※参考文献
「中央アジアの傑作 サマルカンド」 アラポフ A.V. 2008年 SMI・アジア出版社
「砂漠にもえたつ色彩展図録」 2003年 岡山市立オリエント美術館
「世界のタイル・日本のタイル」(世界のタイル博物館編 2000年 INAX出版)