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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2012/07/03

四神1 10世紀の契丹と五代



契丹展で、棺の外側に貼り付けられていたらしい木製の四神が出品されていた。

四神 赤峰市朝オンニュド旗格温都蘇木出土 木、墨、彩色 10-12世紀 長30-60 翁牛特旗博物館蔵
『契丹展図録』は、棺の側板にとりつけたと推測される四神像。
契丹時代の四神は、いまの遼寧省朝陽市を中心とする地域で石棺に彫刻した例が20例ほど見つかっている。それらは主として10世紀末から11世紀半ば頃にかけてのものであるという。
朱雀
正面向きで今まで見たことのない姿だ。足は鴨のように短い。
玄武
亀と蛇が絡み合う姿の玄武は、上半部が失われているものの、亀を正面からとらえた構図であることがわかる。このような構図は、浙江省安市呉越国慶陵(939年)の玄武など、同時代の契丹領外でもみられる。甲羅には「王」字を浮き彫りにする。このいわゆる王字亀甲は、新疆ウイグル族自治区アスターナ44号墓出土の錦にもあるように、おそくとも唐時代には確認できるという。
甲羅は文字通り亀甲繋文で、その一つ一つに「王」の文字が様々な方向に刻まれているらしいことが、残存部分から推測される。
白虎と青龍
いずれも胸を張り、片方の前脚を顔の付近まで挙げているという。
上の白虎は、虎にしては胴が長く尾も長く太い。うっすらと縞模様が墨で描かれているようだ。
それに比べて龍は鱗が前身に浮彫されている。そして尾は白虎のようにあげずに、左後ろ足に巻きついている。右後ろ足が無くなっているのか、元々なかったのか。
10世紀のホータンでも棺の四方に四神を描くという習慣があったようだ。

四神双鳥文木棺 木製彩色 長210高99-85幅74-64 ホータン市ブザック墓地出土 五代時代(10世紀) ホータン地区博物館蔵
『シルクロード 絹と黄金の道展図録』は、身の側面には、青龍、白虎、朱雀、玄武という東西南北をつかさどる四神を描くという。
木棺についてはこちら

朱雀
描かれた扉の上に留まる朱雀は、契丹のものと同様に正面を向いている。派手な尾羽も体も、どちらかというと、朱よりも白が勝っている。
玄武
体は横を向いているが、頭を後ろに回して、自分の胴を二重に巻く蛇を見上げている。
白虎
白虎は白い顔料がよく残っている。棺の側面いっぱいに描かれているので、龍と同じくらい胴体が長い。左前脚を顔の高さにあげている。
青龍
青龍は画面からはみ出るくらい大胆に描かれ、勢いがある。右前脚を頭部と同じくらい高くあげ、その下に左前脚の爪が見える。
このように唐時代の後にも、辺境の地でも四神は棺に表されていたのだった。
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※参考文献
「草原の王朝 契丹展図録」 2011年 九州国立博物館
「シルクロード 絹と黄金の道展図録」 2002年 NHK