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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2012/02/14

アクダマル島の教会2 アルメニアの人頭とロマネスクの人頭

アクダマル島のアルメニア教会を見た時、人の顔や動物の浮彫が多く見られた。それも軒の下側に並べるなど、魔除けの意味がありそうだ。
北壁は西側の軒下に並んでいた。
それだけでなく四福音書家のひとり聖マルコの頭上にも人頭がある。
南壁にも、西側の軒下に並んでいて、西の正面入口を中心に考えると、左右対称に、教会の軒下に人頭が並んでいることになる。
それは私が長年、じっくりと見て回りたいと思っていたロマネスク美術に似たものだった。
ロマネスク美術は11-12世紀で、アクダマル島の教会(915-9211年)よりも後の時代のものだが、アルメニア美術が伝わったというよりも、西欧に古来より住んでいたケルト人の名残である。
ケルトの人頭についてはこちら

軒や柱頭に人の顔が並んでいるロマネスク様式の教会はいくらでもあるはずと、改めて探してみると、意外なことになかなか見つからなかった。

フランス、ポワティエ、ノートルダム・ラ・グランド聖堂 西正面の装飾 12世紀
『ヨーロッパ巡礼物語』は、小柄だが正面全体に石の彫刻がほどこしてあるすばらしい建物であったという。
3段のアーチ列があるが、その上の浮彫に人の顔が並んでいる。
その拡大写真。人頭だけでなく動物の頭部もある。
スペインのカタルニア地方の教会を探してみた(現在はカタルニア語の地名が使われていますが、『カタルニア・ロマネスク』の出版された1987年頃はスペイン語の地名だったので、そのまま表記します)。

サン・ペドロ教会 軒飾り タラッサ 10-12世紀 
この教会はもと西ゴート様式の後陣を持ったものであったが、12世紀に修復された。軒飾りや壁面飾りは、ロマネスクの教会の一つの特色をなすもので、動物や人頭が図案化されたものや抽象的テーマが用いられるという。
人頭は長い鼻と小さな目が彫り込まれている程度で、ロマネスクというよりもケルトの人頭を思わせる。
サン・ペドロ教会 扉口柱頭 アラン谷エスクニャウ 12世紀
『カタルニア・ロマネスク』は、古風な雰囲気のただよう建築。扉口はきわめてアルカイックな持送りで、梁には市松模様の装飾が施されている。柱と柱頭には抽象的な植物模様や人の頭部が浮彫りにされるという。
タラッサの人頭よりも表情のある顔に仕上がっている。左側の柱頭では、人物の髭が放射状に表されている。
サンタ・マリア大聖堂 セウ・デ・ウルヘル 12世紀
ロンバルディア・ロマネスク様式の典型であるという。
アーチを支える円柱の各柱頭の浮彫にも中央に小さな人頭が表され、その上の垂飾には大きな人頭が高浮彫されている。
右の人物の髭も直線敵だが、エスクニャウのものよりもこなれた表現となっている。
アクダマル島の教会に髭のある人頭はなさそうだ。
それにしても、ロマネスクの教会で見られる人頭がアナトリア東部のアルメニア教会でも見られるとは。

※参考文献
「ヨーロッパ巡礼物語」田沼武能 1988年 グラフィック社
「ロマネスク古寺巡礼」田沼武能 1995年 岩波書店
「カタルニア・ロマネスク」田沼武能 1987年 岩波書店
「世界歴史の旅 フランス・ロマネスク」饗庭孝男 1999年 山川出版社