奈良時代の匠たち展では、小さなものも展示してあった。
銅鈴 薬師寺金堂基壇より出土 幡飾金具内 高5.8㎝厚3.4㎝
同展図録は、金堂の薬師三尊の前を荘厳した幡などの垂れ飾りを構成した部品である。
茄子の形のように下膨れした楕円形状のもので大型である。表面には蓮弁の文様が毛彫りされる。法隆寺に伝来した金銅製金具に同種の鈴が取り付けられいてる例があるという。
蓮弁と子葉の間に細い線が無数に彫られているのは、蓮華の花脈を表現しているのだろう。幡の垂飾ということなので、薬師三尊の近くでこのような蓮弁が舞い、揺れると鈴の軽やかな音色が聞こえてきたことだろう。
ガラス玉 荘厳具内 興福寺北円堂出土
興福寺北円堂は、中心伽藍である中金堂院の北西側に位置する八角堂である。養老5年(721)藤原不比等の一周忌に建立された。
ガラス玉は幡や垂飾などの部品であったと考えられるという。
穴が上の方にあって、溶けたガラスが下の方で膨らむのを利用してこの形に仕上げたのだろう。上の鈴同様、蓮弁形を目指したのではないだろうか。幡自体が金銅製なら揺れると音がしただろう。
「奈良時代の匠たち展」の後、学園前のきのわで開催されていた田上惠美子氏のすきとおるいのち展に行った。
あちこちに工夫を凝らしてトンボ玉を展示してあったが、床にまで作品が並んでいた。その中にコアガラスが幾つか置かれていた。以前にもこのような作品を見たことがあるが、今回のものは大きく長めだ。
タイトルは「散華」、ここにも蓮弁があった。しかも、空中から舞い落ちたものだった。
※参考文献
「平城遷都1300年祭記念秋季特別展 奈良時代の匠たち-大寺建立の考古学-」(2010年 奈良県立橿原考古学研究所附属博物館)