お知らせ

忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2009/07/14

田上惠美子氏のトンボ玉展から透明がなくなった

 
久しぶりに田上惠美子氏の個展の案内が届いた。今回のタイトルは「トンボ玉展」で、「透明」という文字がなくなっていた。
しかし、ハガキのトンボ玉は透明である。透明なブルーも中の方にうかがえる。表面は銀箔の部分と透明な部分に分かれてはいるが、それに関係なく、いろんな直線がいろんな方向に伸びていて、切れているところもあれば曲がっているものもある。
それらの線のために外形も複雑なように見えるが、直方体である。これが円筒形なら粘土の上に転がすと面白い文様が浮かんでくるかも。他人の作品を見て、ついつい遊んでしまう。 円筒形のものを転がしてその文様を粘土につけるものは円筒印章と呼ばれている。細い筒一回りで何かの場面を表した複雑なものもあるが、簡単な彫り込みで面白い文様ができるものもある。
『オリエントの印章』は、円筒印章は粘土板やその封筒、あるいは壺、容器、扉等を封印する大型の粘土塊を広く印で覆うのに適しているという。

1円筒印章 材料不明 斜線文様 ジェムデト・ナスル期(前3100-2900年頃)
円筒の一部から両側に下降斜線を数本ずつ付けると、印影は上昇する斜線と下降する斜線の連続となる。あるいは、複数の山形の連続とも見ることができる。 2円筒印章 石彫 眼文様 前3000年頃 メソポタミア出土 個人蔵
円筒の中央に横線をつけ、上下にその線を囲むように平行な曲線をつけると、印影は「眼文様」になるという。魔除けの意味合いが生じてくるのだろうか。 3牛角形紐付円筒印章 石製 有角獣文様 前3000年頃 メソポタミア出土 古代オリエント博物館蔵 
円筒には平行線が適当に曲がって2本ある程度にしか見えないが、印影では大きな角を持つ草食獣が2頭並んでいる。円筒に脚は見えないが、そのような線でも印影にははっきりと出ている。 4円筒印章 ファイアンス 魚、植物文様 前1500年頃 メソポタミア出土 岡山市立オリエント美術館蔵
ガラス製の円筒印章も見たことがあるように思うが、図版では見つけることができなかったので、ファイアンス製のものをあげる。
ファイアンスを円筒形に作っておいて、文様を彫り込んだのだろうか。硬い材質ではないので、シャープな印影は出ないようだが、中央に魚の開きのようにも見える植物文、その上下に魚が右方向に泳いでいるのがわかる。 田上氏のトンボ玉は粘土に押捺すれば、どんな文様になるのだろう。そうそう円筒印章ではなく、トンボ玉でした。

田上氏の「トンボ玉展」は、7月15日から26日までART BOXで。どんなものが出品されているのか楽しみ!

※参考文献
「世界の文様2 オリエントの文様」(1992年 小学館)
「岡山市立オリエント美術館館蔵品図録」(1991年 岡山市立オリエント美術館)
「大英博物館双書 古代を解き明かす4 オリエントの印章」(ドミニク・コロン 1998年 學藝書林)