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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2009/04/21

粒金細工は植民市に住むギリシアの工人が作ったという

 
『アフガニスタン遺跡と秘宝』は、スキタイの特色とされる金銀工芸品は、スキタイ貴族の要請に応えて植民地にいたギリシャの工人が作ったものであったといわれるという。
では、紀元前のサルマタイの地ではどんな粒金細工が出土しているのだろう。

首飾り 前1世紀 クラスノダル地方ペスチャヌイ村古墳群10号墓出土 クラスノダル博物館蔵
『南ロシア騎馬民族の遺宝展図録』は、サルマタイ貴族の女性に伴った多数の副葬品のなかで特に注意を惹くのは、多彩様式で作られた金製首飾りである。 
この首飾りの中心は、エメラルド・ザクロ石・トパーズが嵌め込まれた3つの菱形である。菱形は金の大粒で囲まれる。3つの菱形の両側には写実的に表されたヤマネコの頭があるが、これは細粒状で表された金の三角形の列と共に、大きなメノウ玉を飾るものである。金製の玉は細粒による三角形や菱形で飾られている。
これはこの時期の特徴である多彩様式の貴金属製品のひとつであり、明らかにボスポロスでギリシャ工人によって作られたものである。ボスポロスの工人の製品は、クバン・ラバ両河地帯のサルマタイの墓で、かなり多数発見されている。戦争の際の略奪品か貢物、あるいは交易によってサルマタイの手に入ったものであろう
という。
やっぱりサルマタイにもギリシャ工人が作った装身具が将来されていたようだ。 フィブラ(ブローチ形襟留めピン) 前2-1世紀 長5㎝ クラスノダル地方ディンスカヤ村古墳群3号墓出土 クラスノダル博物館蔵
細工としては細かい。細粒よりも線条細工の凝っている。象嵌した紅玉髄も形がよく整っている。 フィブラ 前3-2世紀 直径4㎝ クラスノダル地方ラズドリナヤ村古墳群7号墳13号墓出土 クラスノダル博物館蔵 
図版が小さくてよくわからないが、『南ロシア騎馬民族の遺宝展図録』は、線条細工、細粒細工、アーカンサスの芽と葉で装飾されているという。
地金を後で切り取ったのか、ほとんど輪郭は透彫になっている。石の象嵌はされていたのだろうか。  耳飾り 前4世紀 長8.8㎝ ケルチ市近郊クル・オバ古墳出土 
『ロシアの秘宝展図録』は、ギリシャの交易植民市に近い、幾つかのスキタイ人の古墳の出土品と同様に、クル・オバ古墳はおびただしい数のギリシャに関わりをもつ副葬品を包含していた。
この耳飾りは、中央にロゼッタ文をあしらった円盤状の部分と、平たい小船形の黄金片からなり、後者には8個のロゼッタ文と、そこから下がる線条細工と細粒細工が施されている。ロゼッタ文のある円盤状の部分と垂飾り部分とを繋ぐ箇所に有翼の女神2体があしらわれている
という。
驚いたことに、時代を遡った方が精緻な細工に出合った。私がこの作品で最も注目するのは、三日月状の板に、金の粒4個からなる菱形を整然と並べていることだ。  こんな細かい細工が前4世紀にできていたということは、もっと以前から粒金細工はあったんだろうが、図版がないのでそれを知ることができないのは残念だなあ。

※参考文献
「偉大なるシルクロードの遺産展図録」(株式会社キュレイターズ)
「世界文化遺産12騎馬遊牧民の黄金文化」(2001年 島根県立並河萬里写真財団)
「南ロシア騎馬民族の遺宝展図録」(1991年 朝日新聞社)
「ロシアの秘宝 ユーラシアの輝き展図録」(1993年 京都文化博物館・京都新聞社)