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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2008/11/17

正倉院の紫檀木画双六局にひそむ忍者

紫檀木画双六局(すごろく盤) 2008年(第60回正倉院展)
同展図録は、木画(モザイク)による華麗な装飾が施された双六盤。天板は芯材の表裏にシタン各4枚を貼って、周囲に側板を立ち上げている。その四隅と長側中央に6箇の床脚を立て、地摺をつける。側板の稜角・四隅の床脚の角・地摺の稜角には象牙の角貼が施される。側板の外面には、花唐草文を主体として、間に飛鳥・飛雲・鴨に乗って飛ぶ人物を表す。木画の素材はツゲ・シタン・タガヤサン・竹・象牙・緑色に染めた鹿角・水牛角というが、会場は暗くて鴨に乗る人物はよく見えなかった。 図録の拡大図でようやく紫檀木画双六局の長側面の鴨に跨った人がわかった。それでも上着は背景の紫檀の色に紛れてしまっている。
カモは白で表され、右翼は下に、人の足のような右足は後方に、2つに分かれたような尾は人物の背後に跳ね上がっている。そうすると、人物が右腕で掴んでいるのは何だろう? その人が頭巾を付けているのは、同展図録の表紙を見てようやくわかった。赤いズボンは目立つものの、上着と同色の頭巾を付けていると、どうも忍者のように見えてしまうなあ。このような正倉院の宝物のモチーフで文字を飾った、楽しい図録の表紙というのは初めてではないだろうか。来年も期待しよう。

※参考文献
「第六十回正倉院展図録」(2008年 財団法人仏教美術協会)