

誕生釈迦仏立像 愛知正眼寺蔵 飛鳥時代(6世紀末~645年)
『日本の美術159誕生仏』は、わが国に伝わる最古の誕生仏である。面長な頭部や短い裳の襞を左右対称に折り重ね裾を図式的に表現するところなど止利様式の作品と共通する。全身にわたり鍍金が鮮やかに残っているという。
日本の誕生仏は、右腕をあげるだけでなく、この像のように頭部にかかるものが多いように思う。

同書は、幼児を思わすような可愛らしい姿につくられている白鳳時代の典型的誕生仏であるという。
この像は右腕をまっすぐにあげて宣誓しているかのようである。また、腰あたりの裳の襞は立体的に鋳造されているが、紐や裾の折り重ねは線刻で軽やかに表現されて、飛鳥時代よりも洗練された表現が見られる。

金銅誕生仏 三国時代(7世紀) 高さ10.7㎝ 国立慶州博物館蔵
しかし、国立慶州博物館で見た誕生仏は右手を上に上げていなかった。施無畏印(せむいいん)である。

大邱の博物館でも右手をあげない誕生仏をみた。これも施無畏印なのだろう。

※参考文献
「日本の美術159 誕生仏」(田中義恭編 至文堂)
「国立慶州博物館図録」(1996年 世光印刷公社)
「国立大邱博物館図録」(2002年 通川文化社)