ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2007/03/16
饕餮が大喰らいだったとは
敦煌の観光後、西安に飛んだ。えらくオンボロの飛行機で、何時落ちるかと心配なくらいだったが、時々窓から見えるのは、ゴビ灘とその南部に広がる祁連山脈という全く変わらない河西回廊の景色だった。到着すると雨が降っていた。
陝西歴史博物館に行くと、屋根の上に鴟尾(しび)が載っていて、何故か懐かしかった。鴟尾って辟邪?中国には鬼瓦はないの?なんの予備知識もなく博物館に入ったので、展示されていたものがすごいもので(当たり前だが)、1つ1つに驚嘆しながら見学した。
やがて殷周時代の青銅器のコーナーに来た。様々な形の、文様だらけの青銅器というのは、日本でも見たことがあったので、特にびっくりもしなかった。青銅器についての西安のガイド謝苗さんの説明には驚いた。「饕餮は大喰らいの動物です。たくさん飲んだり食べたりできるように食器についています」えっ!辟邪と違うの?
自分の持っている本の中から陝西歴史博物館所蔵の青銅器を探したが、下の作品しかなかった。
2 羊形兕觥(じこう、盛酒器の一種) 西周前期(前11から10世紀) 陝西省扶風県白家出土
円の中に饕餮がいる。縦に断続的にに続く凸形のものが鼻梁となり、その両側に顔が表されている。
『世界美術大全集東洋編1先史・殷・周』は、腹部中央長辺には突出した目玉、C字形の角、大きな口、耳、胴体をもった饕餮を描く。その様態はいささか線が細く華麗で、上面一面に凹線が入って繁じょくな印象を与えている。
上面には稜飾りが中心部に突き出て、前後に異なった形の饕餮文が描かれるという。
饕餮は顔だけでなく、胴体もあり、顔は正面向き、胴体は両側に横向きになっている。 そして、複数の饕餮が組み合わさって、この容器が出来上がっている。なんやら饕餮について自分が思っていたこととまるで違うことを聞いたので、以来饕餮が妙に頭に残ってしまった。
下はおまけです。博物館内にあった巨大な獅子で、則天武后の母が葬られた順陵にあるもののコピーらしいです。唐時代の巨大な鎮墓獣ですね。
※参考文献
「世界美術大全集東洋編1 先史・殷・周」 2000年 小学館