お知らせ

忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2007/01/03

2007年の干支 亥の像1



2007年は亥年。そこでイノシシを表した像を、自分の持っている本から探してみました。猪狩の図様は各地にたくさん見られますが、今年の干支なのでそれは採り上げていません。古い順にみていきます。

1 黒陶猪文鉢 河姆渡(かぼと)文化(前5300年頃から前3800年頃) 杭州市浙江省博物館蔵 
稲作の歴史をさかのぼらせたことで有名な浙江省の河姆渡遺跡の最も古い文化層より出土したということだ。解説にはイノシシの腹部の同心円文を目としているが、不思議な文様だ。
2 猪形装飾付玉飾 紅山文化(前4500年頃から前3000年頃) 瀋陽市遼寧省博物館蔵
璧形を3つ連ねた連璧形玉飾ということだ。これがイノシシの頭とよくわかったなと思う。
3 鳥形玉飾 薛家岡(せつかこう)文化(前3800年頃から前1400年頃)  合肥市安徽省文物考古研究所蔵大汶口(だいぶんこう)文化・良渚文化・薛家岡文化の交接地域にあって、それぞれの影響を受けながら、独自に生み出されたのが凌家灘(りょうかたん)の玉器で、ここで発掘された墓には玉器の完成品だけでなく、玉芯や道具も多数副葬され、玉器製作の一大センターだったらしい。『世界美術大全集東洋編1先史・殷・周』は、大きく広げた両翼は口をあけた猪頭形で、 ・略・ 胴部に太陽を刻んで、鳥が太陽を運ぶ信仰を象徴的に示したものであろう。こうした考えは河姆渡遺跡の骨器に彫刻された太陽を背負う鳥の図像にさかのぼり、下っては良渚文化の玉琮の文様につながるものであろう。また猪は、鹿と並ぶ重要な狩猟対象であり、土地神の化身でもあった。とすれば、これは天と地の神が合体した最高神であったのかもしれないという。
これは2005年に「中国国宝展」で見た。何故鳥の翼がイノシシなのか不思議だった。4 野猪形土器 前3000年から前2500年頃 イラン南部出土 メトロポリタン美術館蔵
『世界美術大全集東洋編16中央アジア』で堀晄氏はイランではスーサ3期になると彩文土器の製作が復活するが、それはザクロス山脈中の諸部族がスーサ方面に勢力を伸ばしてきたことと関連している」と解説している。
体がころんと丸くてかわいい形をしている割に、脚は写実的な表現となっている。
5 猪形尊 殷安陽期(前14から前11世紀) 長沙市湖南省博物館蔵
解説によると、鳥獣尊の中で猪形のものはきわめて珍しく、蓋のつまみは鳳凰。腹部、背部と首回りは鱗状文、四足と臀部には雷文の上に頭を下にした「き龍文」が表されているらしい。山などの自然を対象とする祭祀に用いられたものらしい。
つまみの鳥はカバなどの背中で寄生虫を餌にしている鳥かと思っていた。 6 怪獣文斧 バクトリア青銅器文化(前2000から前1800年頃) アフガニスタン北部出土 メトロポリタン美術館蔵
『世界美術大全集東洋編15中央アジア』の解説によると、中央の鷲人間は斧の両面に表現されているために、片面から見ると頭が二つあるように見える。双頭の鷲の図像もバクトリアの印章に知られており、この鷲人間が初めから双頭をもつものとして描かれた可能性も否定できない。左は猫科の動物の胴部、猛禽の脚、角と翼を有する合成獣で、ドラゴンの一種である。右側は丸めた背中が斧の刃部になった猪であるという。 双頭の鷲の最も古いものはヒッタイトだと思っていた。 7 野猪の儀仗装飾 バクトリア青銅器文化(前2000年から前1800年頃)アフガニスタン北部出土 ルーヴル美術館蔵
上の像と同じ時代のものだが、こちらの方が立体的に表現されている。8 猪付短剣 タガール文化(前7世紀)
エルミタージュ美術館蔵
『世界美術大全集東洋編1先史・殷・周』の解説で畠山禎氏は、猪は鼻面を下げ、前足をやや曲げ、尾は巻き上がって胴体に貼り付いている。円い目、大きな牙、筋肉の盛り上がり、たてがみ、蹄などが立体的に表されている。
このように柄頭を差し込む形の短剣は、タガール文化の初期に特徴的なものである。タガールスコエ・オゼロ(タガール湖)第32号クルガン(古墳)出土の短剣は差し込み式の柄頭を伴うが、動物は佇立せず、茸の傘状に広がった部分に浮彫り状に表されている。
佇立する猪を柄頭に伴う短剣は、トゥヴァのアルジャン古墳からも出土している。アルジャン古墳では、黒海北岸のスキタイ文化以前の型式と比較される馬具や鏃とともに、スキタイ系の文化に特徴的な動物文様が見られ、スキタイ系のクルガンの最初期のものと考えられている。アルジャン古墳出土の短剣の柄頭は差し込み式ではないが、猪の鼻面を下げた姿勢や円い目の表現が、本作品と共通する。
鐔は幅が狭く先端が丸く膨らんでおり、タガール文化に先立つカラスク文化にさかのぼる特徴がうかがえる。佇立する猪の表現が、スキタイ系の動物文様のなかでも古くから出現することを示すものであろう
という。
スキタイなど北方遊牧騎馬民族も数年前から関心を持っているが、単独の像はたいてい脚を曲げているので、このように立っている像は知らなかった。小さなものだが面白いのであえて採り上げた。

このように、古いところでは中国各地のものが多いのに驚きました。そして、どうも猪が獲物だけでなく、信仰の対象でもあったように思えます。黒陶の猪にしても、胴体に目があるというのは、そのようなものの現れのようにも受け取れます。

※参考文献
「世界美術大全集東洋編1先史・殷・周」2000年 小学館
「世界美術大全集東洋編15中央アジア」1999年 小学館
「世界美術大全集東洋編16西アジア」2000年 小学館