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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2006/11/20

第五十八回正倉院展の袈裟は素晴らしい

 
正倉院展ではいろんな宝物が展観される。昔は西新館だけだったが、東新館ができてからは、両方の建物が会場となったため、ゆったりとした配置になっている。「七条刺納樹皮色袈裟」は縦247.0㎝横144.5㎝という大きなものだが、四方から見ることができた。しかし、単眼鏡を通して見ても細かいことはわからなかった。作品の保護のため暗くしてあるせいなのか、それとも老眼のせいだろうか。 図録は、袈裟はインドで身体に巻き付けて着用した衣服の形式をくみ、僧衣として用いられる。
塵埃の集積所または墓地などに捨てられていた布の断片を縫い合わせて作った糞掃衣(ふんぞうえ)が原則であった。
聖武天皇がもっとも身近に用いられた品と推測される。緑、紫、赤、青、黄、白等の平絹(へいげん、平織りの絹)を不規則な形に切って重ね細かく刺縫いし二長一短に仕立てた細長い裂(きれ)を7枚横に並べてつなぎ合わせている。
なお、刺納(しのう)とは刺縫い、樹皮色とは経典に樹皮を以て染めるとあるところから言い、袈裟の文様はいわゆる遠山文様(とおやまもんよう)の源流である
という。
下図は上の全体の右上端部分で、ほぼ「二長一短」の大きさである。しかし、これでもまだ、その「緑、紫、赤、青、黄、白等の平絹を不規則な形に切って重ね細かく刺縫いし」の様子がわからない。図録にはもっと拡大したものが載っていた(下図)。これだけ大きくすると、裂の端の切れっ端がちらちらと見えるが、それでもこの程度である。身近に用いたものなら、もっと端がバラバラになっていても不思議ではない。切った裂の端を折り込んだような布の厚みや、異なった色の裂を重ねたような凹凸さえ感じられない。当時の刺縫いの技術の高さというのは、想像を遙かに超えたものという他はないのだろうか。刺縫いの技術だけでなく、この袈裟のデザインも素晴らしい。樹皮色の遠山文様か。絹を切り刻んで、捨てられるようなボロ布を縫い合わせた衣に仕立てるとはなんという贅沢だろうか。
このような袈裟を3領ずつ碧綾■袷(みどりのあやのつつみのあわせ、展示)に包んで漆皮箱(展示)に納め、その箱を臈纈袋に納めたという。この漆皮の御袈裟箱は縦44.5㎝横38.6㎝高さ12.4㎝という、広げた袈裟からすると小さな箱に見えたが、そんな小さな箱に大きな袈裟が3つも納まったということは、袷でもかなり薄いのだろうという。
そういえば、正倉院展では、宝物だけでなくそれを収納していた箱や包んでいた袋もいっしょに展観されているものもあり、それぞれに興味深い。

※参考文献
「第五十八回正倉院展図録」2006年 奈良国立博物館