ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2006/10/16
六葉で猪目も
夢ばかりなる日さんの釘隠に似ているかどうかわからないが、日本のもので、四葉ではないものを見つけた。それは大正期の調査で法隆寺五重塔の心礎から出土した舎利具のうち、ガラスの舎利容器を収めた金製の透彫容器で、銀製の透彫容器に収められていた。
下図は金・銀それぞれの調査時の拓本で、立体の卵形の頂部半分である。金製の方は柿蔕文に近いが全面では八葉となる。銀製の方は三つ葉のような形だが、全面では六葉となるもので、猪目があり、かつ四葉ではないものも存在したことがわかる。
製作時期としては、五重塔が完成した和銅4年(711)という、奈良時代の早期ということだ。実際には下のような形であったらしいが、調査後埋め戻されたので、写真は複製品である。
銀製の方に似たものが見つかった。それは正倉院中倉88「螺鈿箱」の蓋に表された花文であった。
四弁花・五弁花は洋の東西を問わずよく見かけられる文様である。正倉院宝物の中にも六弁花はあるが、たいていは花弁の中央がこの花の花弁のように出ておらず、へこんでいる。
金属製品の中に六葉のものがありそうな気がします。いかがでしょうか、夢ばかりなる日さん。
※参考文献
「日本の美術358号 唐草紋」1996年 至文堂
「日本の美術486号 正倉院宝物の装飾技法」2006年 至文堂