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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/12/25

タシュ・ハウリ宮殿のタイル1 幾何学文と植物文


タシュ・ハウリ(石の庭)宮殿(1832-38年)のハレムは、文字通り切石を敷き詰めた中庭を、タイル張りのアイワンや壁面が囲む、ほぼ青と白の世界だった。
そこでは、南側にアイワンが5つ並び、東端はハンの間、
後の4つが妃たちのそれぞれの間となっている。
そして北側にも上に小さなアイワンの並ぶ、その他大勢の夫人たちの建物があった。

クニャ・アルクの謁見の間やモスクでは幾何学文と植物文という組み合わせだった。
タシュ・ハウリのタイルにも、趣の異なる幾何学文と植物文のタイルは多く見られた。

名称不明の幾何学文 ハンの間
東壁端の大パネルは、クニャ・アルクにはなかった幾何学文で、何と呼べばよいのかわからない形で構成されている。
その中にはクニャ・アルクの謁見の間に多く見られた、左右あるいは上下に対称の渦巻く蔓草文が詰まっている。

六角形・6点星を基本とした幾何学文 ハンの間・妃の間1
これはセルジューク朝期(13世紀)の木製扉と同じ幾何学文様(ギリヒ)だ。
その扉は、大きな6点星・六角形・五角形を二つ接合したような形の3つの幾何学文で扉の中央部を構成している。それぞれの文様の中には左右対称の蔓草文が透彫のように浮彫されている。
その扉の左右対称の蔓草文はこのタイルとは異なるが、ひょっとすると、扉などに用いられてき幾何学文様が、そして、幾何学文様と左右対称の植物文というものが、ヒヴァの絵付けタイルに表されるようになったのだろうか。
六角形の中は、四弁花文の頂点に六弁花文、そこから左右に渦巻いて、途中で括れをつくって別の渦を巻いている。

10点星を基本とした幾何学文 ハンの間
10点星を構成する組紐が延長して、様々な幾何学文をつくっていく。
小さな区画には左右対称の蔓草文が描かれるが、10点星では、中心から一重に渦巻く蔓草が放射状に配されている。

木瓜文繋ぎ(と勝手に呼んでいる文様) ハンの間
これはクニャ・アルク謁見の間でも見られた。
それが妃の間1では、中の植物文がかなり簡略なものになって、妃の間2では木瓜文繋ぎの枠だけになってしまう。その文様は幾何学文の記事で。

妙な幾何学文の組み合わせが多く見られた。それが縦一列に並ぶパネル、幅広のパネルには2列になっていたり、大パネルでは3列になっていたりした。

1列 ハンの間・妃の間1
組紐文の形は今までにはないものだが、その中に組み込まれた蔓草文は左右対称であったり、上下対称であったりと、従来のもの。

1列 妃の間3
一重に渦巻く蔓草が、2列、左右対称に枠を越えて展開していく。
枠を越える蔓草にも、別の種類がある。

2列 妃の間1
中の植物文はかなりおおざっぱに描かれているが、上写真の妃の部屋3のものと同じ。

3列 妃の間4
蔓草は左右対称に四重に渦巻いている。

風変わりな幾何学文多かったが、幾何学文の種類としては多くなかった。
クニャ・アルクの謁見の間やモスクなどと比べると、タシュ・ハウリのハレムではタイルで飾られた壁面はかなりの面積になる。同じパターンのものがあちこちに見られるのは仕方のないことだろう。
また、おなじ幾何学文と組み合わされた蔓草文が異なっていて、3種類ほどあるように思われた。これだけ大量のタイルを製作するとなると、一つの工房では無理で、複数の工房が関わっていて、その工房の違いが、このような蔓草文の違いになるのかも、などと考えている。

                    →タシュ・ハウリ宮殿のタイル2 幾何学文だけ


関連項目
渦巻く蔓草文の絵付けタイルの起源は
タシュ・ハウリ宮殿のタイル3 植物文だけ
タシュ・ハウリ宮殿1 ハレム
タシュ・ハウリ宮殿2 ハンの間
タシュ・ハウリ宮殿3 妃たちの部屋
クニャ・アルクのタイル1 謁見の間
クニャ・アルクのタイル2 モスク