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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/10/23

サーマーン廟4 平たい焼成レンガを重ねた文様


サーマーン廟には焼成レンガを組み合わせた20数種類の文様があるという。
内部では幾つ見つけられるだろう。

ドーム頂部からみていくと、
1:無地 平レンガの薄い面を持ち送って、凹凸のない、無地の壁面になっている。それも一つとしよう

ドームの下端、円形の最後の部分は、

2:菱繋文 上下平レンガと比べると、1辺が小さいが、その平たい側を、対角を縦横にして一列に並べている

3:連珠文 平レンガを4枚重ねると円形になるように加工して、目地材で貼り合わせているのかな

2枚の平レンガの帯が下にある

円形を導く十六角形をなす、16の地小さな区画には、

4:四弁花文 平レンガを小さく切り、その両側に円形にモルタルを盛り花びら状にし、それを4つ組み合わせて四弁花文をつくったものに見える

その下の菱繋文も高さのない区画だが、八角形なので四弁花文の区画の2倍の長さがある

3枚の平レンガの帯と1枚だけの平レンガの帯も
その下

5:矢筈文 尖頭アーチ上の壁面は斜めに積み上げた平レンガの列を、向きを変えて交互に並べて矢筈文に

6:円文 よく言えば青銅鏡、悪くいえば鍋の蓋のようなつまみのある形を、平レンガを弧状に歪めたような部品を組み合わせる
これは外側の扉口上の壁面に四角い紋のようなものが左右一対あるのと同じデザイン
それについてはこちら
この丸い形の由来は不明だが、日月を表しているのかななどと勝手に思ったりする

7:名称は不明だが、尖頭アーチの枠を2枚ずつ貼り合わせ、その間に半分の大きさの平レンガを2枚2列入り込ませて、細い隙間を破線状に作っている

8:十字文 2枚の平レンガの外側に、モルタルで丸みをつけた形に成形し、それを縦横に組み合わせて、隙間が十字に見える
9 七宝繋文 レンガ2枚とモルタルで膨らみのある形にし、上下左右に繋いで文様を構成する
両端も凹面に仕上げているので、4つの部品が合わさった箇所に小さな円ができている

10 玉縁 焼成レンガの端を丸みのある形に成形し、小さな半円筒2つと大きな半円筒1つを1単位として横に並べる
ギリシア時代からみられる玉縁(astragalまたはbead)は楕円形が多いが円形もあるし、ローマ時代には丸くなる。その変形ではなかろうか。

スキンチ部

11 幅違い石畳文 2枚の平レンガをモルタルで貼り合わせたものを、縦にほぼ平レンガ一つ分の間隔を空けて、上下交互にモルタルで重ねている

12 菱形文 ムカルナス形の部分、アーチ形開口部の上にモルタルに平レンガを菱形にして埋め込む、あるいは貼り付けている

入口上

13 斜文 平レンガを斜めに並べた帯が1列

14 連珠文ドーナツ型 8枚平レンガを放射状に配し、隙間をモルタルで埋める
連珠文ではあるが、中心が円形に空いているので、別の文様とした

15 狭い石畳文 平レンガを2枚ずつ組んで、上下交互に配置
石畳文よりも幅がせまいのでこう呼んでみた

16 広い鋸歯文 正方形の平レンガを数枚重ねて角を出して配置

アーチと四角い枠の両端には、非常に小さな2つの円形と、3つの三角形がある。これは平レンガの組み合わせではないので、文様には入れないが、こんな隅々にまで装飾を施すが、これは平レンガを組み合わせたものではない。
17 立体的鋸歯文 アーチ上部は平レンガの角が立つように、しかも上下で交互に配置している
斜めから見ると、鋭角の三角形に焼いた平レンガを2枚重ねている

南側アーチ内

18 平レンガを数枚重ねて角を見せるものが2つ、隔てのように2枚重ねたものを縦におく

壁面上部

19 変形石畳文 石畳文は上下交互に正方形を配置するが、ここではできた空間に正方形を90度回転させた菱形で埋めている
正方形のものは平レンガ5枚を厚めのモルタルで繋ぎ、菱形の方は小さめの平レンガを4枚貼り付けている
しかも、菱形の方は1段毎に向きを変えるという凝ったもの
壁面下部

20 変形石畳文2 3枚の平レンガを繋いだものと。立体的鋸歯文を交互に配置したもの
おそらく17と同じ鋭角の三角形を、頂点側と底辺側交互に組んで密着させているのだろう

廟の外壁面へ

ほぼ20:変形石畳文2で埋め尽くされている。
四隅の付け柱の石畳文はもう少し大きい。

21 変形石畳文3 4枚の鋭角三角形の平レンガを4枚貼り合わせて、文様が大きくなっている
遠くから見ても、この円柱がはっきりとわかるようにしたのかな
玄関部

22 縦縞文 付け柱は平レンガを縦に並べて円形にしているが、横段の目地が幅広なので、文様が途切れている

アーチ部分

23 四弁花文入り七宝繋文 下から見上げているので七宝繋文が円形なのか楕円形なのかがわかりにくい
9:七宝繋文に4:四弁花文を組み入れたと思っていたが、よく見ると尖った四弁花文もある
ここでは、テラコッタはそれぞれの形の輪郭をなしていて、白いのがモルタルらしいのが、ひびの入り方でわかる 

柱廊部分

24 円文と2本の直線による枠文様
小さな円はテラコッタとモルタルで作っている

ドーム部分

25 名称不明 正方形の平レンガの広い面を外側にして貼られている

26 雪止め? 三角の出っ張りが2段あり、屋根の雪止めのよう

『ウズベキスタンシルクロードのオアシス』は、モンゴル来襲による破壊をまぬかれたのは、当時、この廟は砂に埋もれていたためで、1926年に考古学者のピャトキンが掘り起こし、イスマイル親子の遺体を発見するまで暗黒の中で静かに眠っていたことになるという。
日にさらされるようになって約90年、ウズベキスタンの真珠と呼ばれるサーマーン廟にも塩が上がって劣化が見られる。

           サーマーン廟3 浮彫タイルの起源?

関連項目
サーマーン廟1 入口周りが後の墓廟やメドレセのファサードに
サーマーン廟2 建築の起源は?
ブハラのサーマーン廟
ウズベキスタンの真珠サーマーン廟1 美しい外観
ウズベキスタンの真珠サーマーン廟2 内部も美しい

※参考文献
「中央アジアの傑作 ブハラ」 SANAT 2006年
「シルクロード建築考」 岡野忠幸 1983年 東京美術選書32
「イスラーム建築の見かた-聖なる意匠の歴史」 深見奈緒子 2003年 東京堂出版
「岩波セミナーブックスS11 イスラーム建築の世界史」 深見奈緒子 2013年 岩波書店 
「ウズベキスタン シルクロードのオアシス」 萩野矢慶記 2000年 東方出版