お知らせ

忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2012/12/07

日本の迦陵頻伽


迦陵頻伽について
『日本の美術481人面をもつ鳥』は、古代のインド人は鳥のもつ美しい姿や心地よい鳴き声の象徴を自ら空想し求めようとした。そして生み出されたのが迦陵頻伽である。
迦陵頻伽は上半身が人、下半身が鳥からなる想像上の鳥である。スズメまたはその類で、一説にはインドでブルブルとよばれる鳥であるともいう。ただしその図像は細長い脚や尾羽をもつ水鳥に近い場合が多い。
サンスクリット語kalavinkaを音訳した「迦陵頻伽」は、鳩摩羅什が402年に漢訳した『阿弥陀経』、406年に漢訳した『妙法蓮華経』巻第六法師功徳品第十九などに見出される。

かの国には常に、種々の奇妙なる雑色の鳥あり。白鵠・孔雀・鸚鵡・舎利・迦陵頻伽・共命の鳥なり。このもろもろの鳥、昼夜6時に和雑音を出す。その音は、五根・五力・七菩提分・八聖道分、かくのごときらの法を演暢す。その土の衆生は、この音を聞きおわりて、みな、ことごとく仏を念じ、法を念じ、僧を念ず。
迦陵頻伽の図像は遅くとも8世紀までに日本に伝わったと見られ、その後、さまざまなジャンルに取り入れられていったという。
西方浄土では、いつも妙なる音色が聞こえているのではなく、午前6時と午後6時にだけ、6種類の鳥たちが和雑音を出すらしい。

正倉院宝物の螺鈿紫檀琵琶には、名称は分からないが、中程より少し上に一対の小鳥が飛び、中程より少し下に一対の迦陵頻伽、その下の螺鈿の葉の上に一羽の鴛鴦、一番下には上と同じ種類の一対の小鳥が飛んでいる。
迦陵頻伽は仏教から離れて、装飾意匠となってしまったのだろう。
散華用の華盤を持って、どんな音を発するのだろう。この琵琶の音色が、極楽で迦陵頻伽が出す音または声ということだろうか。
スズメの類にしては尾羽が長すぎる。
正倉院には螺鈿紫檀琵琶以外にも迦陵頻伽があった。

金光明最勝王経帙 正倉院中倉 
『第58回正倉院展目録』は、経帙は、巻子装の経巻を一定の数だけ巻き込んだ包みのことである。
本品は保存良好で、細竹を密に並べて緯糸の芯とし、紫と白の絹糸で竹の芯を覆い隠して編みながら、文様と文字を織り出している。
帙の文様は紫地を白地に抜くやり方で、人頭鳥身の迦陵頻伽を葡萄唐草文で囲んで丸文とし
ているという。

これを見て、迦陵頻伽とは思わなかった。まず長い尾に目が行き、サソリかと思った。目を下に移していくと、人面、人の腕、鳥の足、そして両側の翼が見えて、やっと迦陵頻伽だとわかった。
手を合わせていて、何も持っていない。
紅牙撥鏤尺 正倉院宝物
『日本の美術481人面をもつ鳥』は、髪を結い、女性形に表された迦陵頻伽である。中国の女性のような衣服をまとう。華盤を両手で捧げ持つという。
蓮華の蕾か、それを模したような香炉を盤に乗せて持っている。衣装と羽根や尾羽の文様が一体化している。
足は体に沿って後方にあるので、盤を持って飛んでいる場面だろう。
漆金薄絵盤 香印座 正倉院宝物
同書は、翼や尾羽は極彩色で華やかに、上方に巻きあがるように描かれ、重厚感がある。大きな髻を結い、宝冠を戴く。両手にそれぞれ持物をとるという。
左右の手に一つずつ花の蕾のようなものを持っている。
牛皮華鬘 時代不明 奈良国立博物館蔵
同書は、左手は華盤を捧げ持ち、右手は印を結ぶ。朱色の鮮やかな衣を掛け、首飾りや腕飾りなどの装飾品を身につける。円光を頭上に戴き、蓮華の上に立つ。尾羽は上方へ伸びているという。
これが螺鈿紫檀琵琶の迦陵頻伽に一番近いかな。頭光があって仏具の意匠らしくなっている。

関連項目
迦陵頻伽の最初期のもの?
涅槃図に迦陵頻伽
敦煌莫高窟7 迦陵頻伽は唐時代から
第64回正倉院展8 螺鈿紫檀琵琶に迦陵頻伽
中国の魚々子と正倉院蔵金銀八角鏡の魚々子

※参考文献
「第64回正倉院展目録」 奈良国立博物館 2012年 財団法人仏教美術協会
「第58回正倉院展目録」 奈良国立博物館 2006年 財団法人仏教美術協会  
「日本の美術481 人面をもつ鳥 迦陵頻伽の世界」 勝木言一郎 2006年 至文堂