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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2012/02/24

ウラルトゥの美術1 青銅製品

ウラルトゥという国に興味を持ったのは、岡山市立オリエント美術館で見つけた『ウラルトゥの美術と工芸展』の図録だった。その特別展はとっくの昔に終わっていたが、表紙の青銅製のベルトは、薄板に動物や戦車図が打ち出され、それ以前に見たことのないものだった。
以来、ウラルトゥは青銅工芸に秀でた国というのが頭の片隅に残っていた。

ベルト 前9-7世紀 出土地不明 青銅 長109幅13.5 神奈川県シルクロード研究所蔵
『世界美術大全集16西アジア』は、ウラルトゥの美術作品のなかでもこのような青銅製のベルトは周辺地域に類例を見ない特殊なものである。多くは幅が10㎝以上あり、周縁部に小さな穴が等間隔に穿たれているのは布や革に縫い合わせたのだろう。裏側にモティーフを彫り込んだ型(おそらく石製)を当てて打ち出された文様には、種々の動物、合成獣、神像などがあるという。 
本作品は2頭立ての戦車に乗ってライオンや牛を弓で追ったり、槍を持った騎馬人物が描かれた狩猟の場面がロゼット文や植物文をところどころに挟みながら連続して表され、留め金のある端部は聖樹の両脇で前脚を掛け立ち上がった2頭の山羊、片膝をついてライオンに弓を向ける兵士が表されている。文様の題材は総じてアッシリア帝国の浮彫りに見られるような展開であるが、ありとあらゆる動物を組み合わせてしまう(人面、胴体は有翼の魚、脚はライオンや猛禽類、尾は蠍など)合成獣の表現はウラルトゥの独創性が発揮されているという。
型を当てて打ち出したものだろうというのは想像がついたが、ロゼット文が一つ一つ異なっていたり、戦車の前後にいる矢を射られた動物の種類や動きを別のものにするなどといったことが目に留まった。
武人像 カルミル・ブルール出土 木製
『ウラルトゥの美術と工芸展図録』は、金属製のベルトが付けられており、盛装や武装した際の腹帯として用いられたものと思われるという。
上のようなベルトは、身につけるともっと幅が広いだろうが、儀式用など特殊な場合に使われたのだろう。 
下図から当時トゥシュパと呼ばれた都(現ヴァン)は、下図で見るとウラルトゥ王国のほぼ中央部にあったことがわかる。
カルミル・ブルル(カルミール・ブルール)は現在のアルメニア、ハッサンルはイランとなっている。
冑(部分) 前8世紀 アルメニア、カルミル・ブルル出土 青銅 高30㎝ サンクト・ペテルブルグ、エルミタージュ美術館蔵
『世界美術大全集東洋編16西アジア』は、カルミル・ブルル(アルメニア語で赤い丘の意)は、アルメニアの首都エレヴァンの北西に位置し、1939年以来発掘調査が行われてきた。その結果、この都市の古名がウラルトゥの天候神ティシェバに由来するティシェバイであったことも明らかにされ、神殿や大型の建築物などの存在が確かめられた。出土した碑文などによれば、ルサ2世の時代にこの地の中心地として新たに築かれたものとのことである。
この青銅製の冑には、ウラルトゥの最盛期の王の一人、アルギシュティ1世の銘が刻まれ、彼によって主神ハルディ神に供献されたものであることがわかっている。
前面は水平方向に2段に区画され、そのあいだには生命の樹を挟んで両側に立つ有翼の聖霊をモティーフにした図像が五つずつ、そして最上段にもう一つ、計11配される。これらの装飾は、ウラルトゥ独特の打出し技法によるものという。
生命の樹と有翼精霊というモティーフはアッシリアに見られるものだ。生命の樹はそれぞれの特徴によって種類が異なるらしいが、有翼精霊が授粉する生命の樹といえばナツメヤシ。ウラルトゥの地にナツメヤシは育たないので、儀式だけが伝わったのだろうか。
主文の上下には鋸歯文が2列ずつあって、それぞれ上下の鋸歯に点状の刻み文があり、この文様を口を開けて並んだ歯を見せているような印象を与える。刻み文はよく見ると縦横に細い線を刻み込んでできている。
この冑の背面はこちら
ウラルトゥの金属技術は打ち出しだけではなかった。

兜 トルコ東部出土 青銅
『ウラルトゥの美術と工芸展図録』は、ウラルトゥが栄えたのは、考古学の時代区分から言うと初期鉄器時代Ⅱ、Ⅲ期に相当するが、最も重要な武器である剣も鉄製と共に青銅製のものも多く使われていた。ウラルトゥ人の用いた武器としては、剣のほか、槍、兜、楯、弓と矢筒などが知られている。これらは青銅で作られ、神像や怪獣の文様で飾られていた。人々は武器を戦の神ハルディの神殿に奉納し、神の加護を願ったのであるという。 
他の地域でも鉄器時代になっても青銅製の武器は多く作られている。
額の上に牡牛の角のような形で打ち出され、その下に左耳から右耳の上あたりにヘビが打ち出されていて、それぞれに動物などの文様がある。
それが白黒写真では金象嵌のように白く光って見える。ウラルトゥの工芸には象嵌もあったのだろうか。
ところが、同じ図録のカラー写真では象嵌というよりも線刻に見える。この線刻は、帯や冑のものよりもずっと細く優れている。
描き起こし図によると、牡牛の角状部分には、両側の有翼牡牛像が中央の人物に首を掴まれている。中央の人物は戦いの神ハルディだろうか。
そして、左後方から兜をまわってきたヘビの頭部は、上からみたように細かく線刻され、その上にライオンを先頭に有翼の牡牛と有翼の鳥グリフィンが進んでいる様子が表されている。

関連項目
生命の樹を遡る

※参考文献
「ウラルトゥの美術と工芸展図録」(1985年 岡山市立オリエント美術館・古代オリエント博物館)
「世界美術大全集16 西アジア」(2000年 小学館)