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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2011/04/29

コアガラス容器の文様もジグザグを目指した?

前15世紀のモザイクガラス容器破片のジグザグ文を見ていてあることに気がついた。コアガラスのほとんどの香油瓶に施されている文様は、モザイクガラス容器のジグザグ文を真似ようとしたものではないだろうか。

コアガラス アンフォリスコス及びアラバストロン 東地中海沿岸地域 前2-前1世紀 岡山市立オリエント美術館蔵
左:高13.5㎝幅5.5㎝径4.7㎝ 濃紺ガラス生地、白色・褐色ガラス
右:高15.2㎝幅6.4㎝径5.8㎝ 濃紺ガラス生地、白色・黄色、把手-淡褐色
右と左が同じ時代に作られたものとは思えない外観だ。左の器など現代に作られたものだと言われればそうかと思ってしまう。このようなガラス器がローマ時代以来伝世で受け継がれてきたとは思えないので、よほど条件の良い場所にあったのだろう。
ここにあげた2つの容器に限らず、この時代のコアガラスは大きさも文様も似通ったものが多い。もっと古い時代の、一つ一つ丁寧に作り上げた宝物というよりも、大量に作られた日用品といった印象を受ける。
『ガラス工芸-歴史と現在展図録』は、頸部は平行線文、胴部は羽状文という。ジグザグ文のように直線的ではないため「羽状文」というらしい。
この「羽状文」はどのようにして作られているのだろうか。
『古代ガラスの技と美展図録』の「コアガラスの製作」にその復元の様子が図解されている。
①耐火粘土や獣糞などで芯(コア)を作る ②芯に、本体となる色ガラスを巻き付け、加熱してならす ③別の色ガラスを巻き付ける ④尖ったもので掻くと波状の文様になる ⑤口縁、把手、底部などを付ける ⑥ゆっくり冷やしてから棒を抜き内側の芯を掻き出して完成(下図はその③④部分)
容器本体には紺色や水色などの不透明有色ガラスが使われ、無地のままで完成という例もあります。しかし、たいていは黄色や白などの異なる色ガラスを何重にも巻き付けて上下に引っ掻くと、連続U字文やジグザグ文、波状文の華やかな装飾文様が出来上がりました。アラバスターなどの縞状文様のある石材にインスピレーションを受けたとする考えもありますが、そうだとすればずいぶん華やかなデザインになりましたという。
私も縞瑪瑙などの貴石を再現したものかと思っていたが、テル・アル・リマー出土のモザイクガラス断片(前15世紀)などを見ていると、ジグザグ文が器の装飾として受け継がれ、溶けた色ガラスを引っ掻くことでジグザグ文を作ろうとしたのではないかと思うようになった。
羽状文の他にはU字文や波状文という呼び方があるのか。これらの名称は曲線的な文様であることから付けられたのだろうが、それは、溶けたガラスの性質によって、直線的なジグザグ文が曲線となってしまったからではないだろうか。
直線的なジグザグ文もあった。

両耳付小瓶 東地中海地域 前5世紀 ガラス 高9.5㎝口径3.1㎝
『古代ガラス展図録』は、黄色と青緑色のガラスを口縁部直下から底部まで螺旋状に巻き付け、全体を上下に引っ掻いてジグザグ文を施す。ギリシア陶器のアラバストロンの形を模しており、香油瓶として使われた。両耳に紐を通して吊り下げて携帯する女性の姿がギリシア陶器に描かれているという。
羽状文の場合は器の上の方に引っ掻くことの繰り返しだが、この器では、上または下方向に引っ掻いて、文様の山となった箇所を反対方向に引っ掻くことでジグザグ文が作られたようだ。文様の幅が狭いために直線的なジグザグ文に仕上がったのだろう。
紀元前後の香油瓶に比べると、色ガラスの線が密で、丁寧な細工だ。

※参考文献
「MUSAEA JAPONICA3 古代ガラスの技と美 現代作家による挑戦」(古代オリエント博物館・岡山市立オリエント美術館編 2001年 山川出版社)
「ものが語る歴史2 ガラスの考古学」(谷一尚 1999年 同成社)
「ガラス工芸-歴史と現在」(1999年 岡山市立オリエント美術館)

「古代ガラス」(2001年 MIHO MUSEUM)