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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2010/09/14

エジプトの王像6 アクエンアテン像は写実的?誇張?



アクエンアテン像は写実的な彫像だろうか。


テル・エル・アマルナから遠く離れたアレクサンドリア国立博物館にも、アクエンアテンの頭部があった。どこで出土したのか確認するのを忘れていた。カルナック出土の同王像は付け髭をしていたが、この像の顎にはヒゲをつけた跡はない。
同館はエジプトでは珍しく写真撮影のできる博物館で、ちょうど人の目の高さのところにこの大きな頭部が展示されていた。
特徴ある顔立ちなのですぐに見分けることができ、前からも横からも眺めてみた。異様に細長いが、こんな顔の人は実際にいそうな気もする。
アクエンアテン胸像 第18王朝、アクエンアテンの治世(前1372-55年) カルナック出土 ルクソール博物館蔵
同館図録は、カルナックのゲンパアテン神殿より出土した28の彫像の1体(一部)。前頭部にコブラのついたネメス頭巾を着けている。長い顎、V字形の唇と引き延ばされた耳という、誇張された表現だという。
アクエンアテン王のアテン神信仰はすぐに否定されたので、神殿も宮殿もアクエンアテン像も破壊されたのだろうと想像していた。カルナックのアテン神殿に28体ものアクエンアテン像が残っていたとは。
アトン信仰という一神教を打ち立てたアクエンアテン王は、自分の像もこれまでにない姿形にしたいと思い、自分に似た像を造らせたのだろうか。
アトン神を礼拝するアクナトン王一家 石灰岩 縦102㎝横51㎝ テル・エル・アマルナ出土新王国第18王朝、前1567-1320年頃 カイロ、エジプト博物館蔵
『黄金のエジプト王朝展図録』は、このアケト・アトン王宮址出土の欄干片には、アトン神を礼拝するアクナトン王とその家族が描かれている。太陽神アトンは、降り注ぐたくさんの光線の先が手の形になっている太陽円盤で表現された。アクナトン王の長い顔と細い首、異様に膨らんだ下半身などはこの様式の特徴で、以前の均整のとれたファラオの像とは異なっているという。
王の姿がこのような異様なものだったとしても、王妃ネフェルティティも王女も同じ体型とは限らない。それが「この様式の特徴」とあるように、アマルナ時代の定型化した人物像だったようだ。それは王の姿を写実的に表したものなのか、それとも特徴を誇張したものなのだろうか。
王女の頭部像 新王国第18王朝 テル・エル・アマルナ出土 赤色石英岩 高25㎝ カイロ、エジプト博物館蔵
この頭部はおそらくアクナトン王の王女メリタトンのもので、別に作られた胴体にはめ込まれていちものと考えられている。アクナトン王によく似た顔をしている。この時代にたくさんつくられたアクナトン王の像や浮き彫りによく見られるように、この王女の後頭部も異常とも思えるほど細長く突き出ている。そのためアクナトン王が何かの病気にかかっていたという説もあり、王女たちも遺伝的な要因であると考えられるという。
誇張表現というよりは、特徴を写実的に表現したものと考えられているようだ。
やっぱりアマルナ様式は写実的ということだろうか。


壁画部分(大きな人々が物を運ぶ場面) アクエンアテンのゲムパアテン神殿出土 砂岩 第18王朝アクエンアテン王期(前1372-55年) 
『世界美術大全集2エジプト美術』は、アメンヘテプ4世(アクエンアテン)の宗教改革および遷都によってもたらされた新しい時代(アマールナ時代)に、古代エジプト美術は大きく変化した。アクエンアテン王像やカルナク神殿出土の浮彫りに見られるように後頭部が大きく張り出し、腹部が誇張ともとれるほど強調された、この時代独特のものになったのであるという。
王族と思えない人々も後頭部が出ているが、この程度では誇張とまでは言えないような気もする。
カイロ、エジプト博物館蔵のアクエンアテン像はこちら
舗床断片 新王国第18王朝、前1365年頃 テル・アル・アマールナ出土 漆喰・彩色 28.5X55.5㎝の鴨部分 カイロ、エジプト博物館蔵
鳥や植物などが、それまでの記号的な図形から目に映る実際の像に近いものとなり、型にはまったような表現から躍動感あふれる表現へと目覚ましい変化を遂げた。テル・アル・アマールナ出土に建設された王宮には、このような生き生きとした舗床画や壁画が描かれ、古代エジプト美術史上の特異な自然主義的作例となっている。しかしこれらに先立つマルカタ王宮にも、こうした作例に近い表現の壁画が確認されており、アマールナ様式の萌芽はこの時代までさかのぼれる可能性も指摘されているという。 
そういえば、アマルナ出土のタイルにも花の咲くパピルスの群落の中にいる牛という場面が表されていた。こちらはススキの茂みから飛び立つカモを表している。
同様に、人物像も自然主義的な表現ということで良いのでは。


※参考文献
「黄金のエジプト王朝展 -国立カイロ博物館所蔵-図録」(1990年 ファラオ・コミッティ)
「世界美術大全集2 エジプト美術」(1994年 小学館)
「ルクソール博物館図録」(2005年 Farid Atiya Press)