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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2010/07/16

サッカラのピラミッド複合体の外2 ウナス王のピラミッド 


ウナス王は古王国第5王朝(前2494-2345年頃)最後の王である。ピラミッドはサッカラのジェゼル王のピラミッド複合体周壁の南西角にある。

近づくと東側にテラスのように石を敷き詰めたところがあった。ごろごろと転がっているのはピラミッドから落ちた石材だろうか。それともギザのカフラー王(第4王朝)のピラミッドのように葬祭殿が造られていたのだろうか。
ピラミッド本体は崩れた砂山のようで、内部にピラミッドテキストが初めて刻まれたピラミッドですと説明されても想像しにくい外観だ。
ここにも深い竪坑があった。ピラミッドと離れているので、別の墓のものだろうか。
『世界美術大全集2エジプト美術』は、下降通路の突き当たりに入り口の間、そして3つの落とし格子戸を含む水平通路を通ると前室、そしてその左手に3つの小室、右手奥には棺の置かれた玄室を設けるというものである。それと同時に、ウニス王のピラミッドにおいて初めて、玄室など内部の墓室壁面一面に「ピラミッド・テキスト」と呼ばれる宗教上の呪文が記されたヒエログリフや、当時の宮殿のファサードを模した偽扉、そして天井には星を象った模様などが刻まれるようになったという。
ピラミッド・テキストだけかと思っていたが、天井には後の時代にも表される星形が整然と並んでいる。時代によっては星が「大の字」のように表されていることもあるが、ここでは5等分の角度になっている。
右壁奥から奥壁にかけて幾何学的な装飾が施されている。全体に長短の四角形が並んでいて、その中に市松文様(石畳文)やジグザグ、大小の菱形が表されている。彩色も何色かあるようだ。葦の茎などに色をつけて編んだものなど、宮殿の室内装飾を表しているのだろうか。
このような格子状のものは他にもある。

ジェト王の石碑 石灰岩 浮彫り 初期王朝、第1王朝、前2900年頃 アビュドス、ジェト王の墓出土 高さ145㎝ ルーヴル美術館蔵
『世界美術大全集2エジプト美術』は、王の石碑には、アビュドスの各王墓から2体ずつ出土したものがあり、おのおのに宮殿を象った四角い枠の上に隼が留まった形の「セレク」に囲まれた「ホルス王名」が刻まれているという。 
宮殿は、縦に何本もの溝のある3つの壁と、その間に刳りのある門が2つ表されている。このような王の住まいをウナス王のピラミッド内部の壁面に表現しているのだろうか。
地図にも載っているようにピラミッドから参道がついている。周りにはマスタバが並んでいるのはウナス王の家族のものだろうか。イドゥトは娘だったらしい。
偽扉の発見されたイイカー書記イメムの墓も参道の下や周辺にあったが、ピラミッドや参道を造る時に取り壊されたのだろう。
そして、参道は河岸段丘を下り、河岸神殿へと繋がっている。来る時に見た遺跡のようなものがその河岸神殿だったようだ。参道と河岸神殿が付属しているのもカフラー王のピラミッドに似ている。
ジェゼル王のピラミッド複合体は周壁の内側や地下に複雑な建造物があるが、このような参道や河岸神殿はなかったようだ。 

※参考文献
「世界遺産を旅する12 エジプト・アフリカ」(1999年 近畿日本ツーリスト)
「世界美術大全集2 エジプト美術」(1994年 小学館)
「原色世界の美術12 エジプト」(1970年 小学館)