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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2009/07/24

アレクサンドロス大王の父フィリッポス2世の墓は

 
『古代王権の誕生Ⅲ』は、ハルシュタット文化後期とほぼ同じ時代、ヨーロッパからアナトリアにかけて各地に古墳が盛んに造られた。イタリア半島中北部のエトルリアではさまざまな形式の墓が造られ、その中に円墳もあるが、あまり大きいものはなく、内部の墓室はギリシア風の切石造りの横穴式である。バルカンのトラキアでも前5-3世紀に同じくギリシア風の墓室を持つ円墳が造営されている。トラキアのすぐ南に位置するマケドニアでも円墳が造られた。特に大きくて有名なのは、アレクサンドロス大王の父であるフィリッポス2世の墓といわれているヴェルイーナの大古墳であるという。
マケドニアにも大円墳が築造されていたのだ。
『ギリシア遺跡事典』は、アンズロニコスが発掘した大墳丘は、直径110mの巨大な塚とそれよりも古い内側の直径20mの赤土製の塚の二重構造になっており、その内側の塚の下から、小さな石櫃式墳墓(第1墳墓)とマケドニア式墳墓(第2墳墓)、翌1978年にはさらにもう1基のマケドニア式墳墓(第3墳墓)が発見された。塚の外周に近い第1墳墓は、完全に盗掘されていたが、第2・第3墳墓は幸いにも未盗掘で、王家にふさわしい豪華な副葬品と見事な壁画が出土したのであるという。
複雑な墳丘だ。外側の直径は、南シベリアのアルジャン古墳1号墳(前822-791年)に匹敵するが、内側よりも後の時代に築かれたらしい。後の人が盗掘をおそれて大きな墳丘にしたのだろうか。  『ギリシア遺跡事典』は、古代マケドニアの王族や貴族の墓であるマケドニア式墳墓は、迫石(せりいし)によるカマボコ型天井の墓室を特徴とし、神殿建築を模したファサードを持つ独特の建造物である。
第2墳墓は、主室(4.46mX4.46m、高さ5.3m)と前室(4.46mX3.36m)の2室構造の典型的なマケドニア式墳墓である
という。
ギリシアの神殿の形はわかるが、墳墓がどのようなものだったのか全く見当がつかないので、マケドニアの墳墓がギリシア風なのかどうかわからない。マケドニア式は、木槨墓ではなく石造であるらしい。 『ギリシア遺跡事典』は、ドーリス式の神殿を模したファサード上部の大フリーズには、狩猟の場面を描いた見事なフレスコ画(縦1.16mX横5.56m)  ・・略・・  は、林のなかで10人の男たちがライオンや鹿の狩猟に興じる場面を描いたものという。
フレスコ画はたくさんの人が何かしているらしいくらいにはわかる。壁画のある墳墓はいままでの円墳にはなかった。 『ギリシア遺跡事典』は、主室と前室からは、黄金製の骨箱(ラルナクス)を納めた大理石製の石棺、黄金の王冠、金銀の装飾品や容器類、青銅製の数々の武具など、目をみはる豊かな副葬品が手つかずで出土した。
主室と前室それぞれの黄金製の骨箱のなかに納められていた火葬された人骨の分析から、主室には40-50代の男性、前室には23-27歳の女性が葬られていることが判明した
という。
大墳墓が火葬墓だったのは他の地域では類のないことではないだろうか。ギリシアでも火葬が行われていたが、骨は壺に納めていた。  骨箱について『世界古代文明誌』 は、このフィリッポス2世の火葬された遺骨を納めた黄金の棺は、わずか33㎝X41㎝の大きさしかなかったが、重さ10㎏もあった。上蓋の星文様はマケドニア王家の象徴であったという。 
紋章は太陽を表しているのだろうが、中央は銀製なのか、黒っぽい花弁とその下に金色の花弁がある。胴部上段には交互のパルメット文なのかなあというような帯文様がある。ありそうだがギリシアの陶器にも建物のフリーズにも見つけられなかった。
中段は銀製の花弁文様が5つ、左右の薄板の枠には縦に花弁文様が4縦に並び、その下は獣足がついている。平面的なものから猛獣の足が出ていて妙だ。
下段は中央のアカンサスから左右対称に唐草文様がのびている。 現在では、フィリッポス2世の墓かどうか疑問視されているらしい。『世界歴史の旅』は、被葬者の問題をめぐっては延々と議論が続いているが、ヴェルギナの墳墓が前4世紀後半のマケドニア王の墓であることは確かであり、これまでエデサと考えられてきたマケドニアの古都アイガイの場所が、ヴェルギナにほぼ確定されたという。

ユーラシアには各地に巨大な円墳や、積石塚や、木槨墓が作られたが、互いに影響があるとは限らないことがわかった。新羅の積石木槨墳も新羅という土地で独自に生まれたのかも。

※参考文献
「古代王権の誕生Ⅲ 中央ユーラシア・西アジア・北アフリカ編」(角田文衛・上田正昭監修 2003年 角田書店)
「古代ギリシア遺跡事典」(周藤芳幸・澤田典子 2004年 東京堂出版)
「ギリシャを巡る」(萩野矢慶記 2004年 中央公論社)
「世界歴史の旅 ギリシア」(周藤芳幸編 2003年 山川出版社)
「世界美術大全集2ギリシアクラシックとヘレニズム」(1995年 小学館)
「世界古代文明誌」(ジョン・ヘイウッド 1998年 原書房)