「始皇帝と彩色兵馬俑」展では兵馬俑以外にどんなものが展観されているかを見てきたのだが、高さ22.2㎝の独特の形をした前漢(前2-1世紀)時代の博山炉のてっぺんに葉っぱのようなものが1枚と、その両側に葉っぱの端が見えた。全部で4枚、柿蔕だと思ったものの、ガラスの中なので向こう側を見ることができなかった。
図版を拡大してもこれではわからないが、柿蔕文だと思う。
同展図録は、竜の背中に乗った力持ちの妖怪?が、右手で桃形の博山を掲げ、左手で竜の頭をなでているという独特の形をした香炉をいう。博山炉は、神仙が棲む島といわれている博山の形をした蓋がついた青銅製の香炉である。古代中国では香炉には、不老不死の神や仙人が住む世界が表現されていることが多いが、これは香が神や仙人を呼び寄せる力を持っていたと信じられていたからである。こうした神仙思想の流行を背景として、この種の香炉がたくさん製作され、貴族の生活に用いられた。通常博山という山を表現するが、これは運気紋のみで構成されており珍しいという。
残念ながら頂部の装飾については記されていない。また、火舎(ほや、このような香炉の蓋の形)の運気文には筋状のものが確認できるものの、魚々子地というほどの円文はないようだ。龍の首には点の陰刻のある鱗が刻まれているが、龍の大きさの割に鱗が大きいので、これが魚々子文になっていくとも思えない。
※参考文献
「始皇帝と彩色兵馬俑展図録」2006年 TBSてれび・博報堂