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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2024/12/03

ブルサで見たトルコ襞


イシェルジャーミイではトルコ襞というものを見ることができた。

イェシルジャーミイのホールと礼拝室

礼拝室
トルコ襞はドームへの移行部

立体的なプリズム状の三角形ということだが、平面の重ね合わせというよりも、曲面に近い膨らみを感じた。


ホールのトルコ襞の方は平面の組み合わせに見えた。

オリジナルの箇所。

現在の色よりも紺色は濃い。全体にもっとしっくりした色彩だったのでは。



イェシルトゥルベのドーム移行部にもトルコ襞が使われていたが、現在では枠が赤い線になっている他は真っ白。創建時から変わっていないのだろうか。


トルコ襞というのは正方形から円形へと変えていくオスマン朝独特の架構法。
『トルコ・イスラム建築』は、トルコ三角形の手法を高度に発展させたものである。衣装の襞に似ているので、トルコ襞とも呼ばれる。平面の三角形に替わり、立体的なプリズム状の三角形を複雑に組み合わせ、装飾性を高めた手法である。
初期の例は、オスマン朝の最初の建物イズニキ・ハジュオズベキジャーミシで見られ、以後のオスマン朝の建築で使用された。ブルサ・イェシルジャーミの時代に最高度に発達した。15世紀後半からは、ドームの架構法としてはペンデンティブの手法が主流になったので、この手法は廃れたという。
イズニク Iznik のハジュオズベクジャーミイ Hacı Özbek Cami は Google Map で現在の内部を知ることができた。最古のトルコ襞は、真っ白に塗られていて、上のドームとの接合部はその写真にはないのが残念だった。

『トルコ・イスラム建築』より
①正方形の部屋の壁  ブルサ・アーチ ③トルコ襞 ④ドーム
ブルサ イェシルジャーミイ礼拝室のトルコ襞 トルコ・イスラム建築より


トルコ三角形について『トルコ・イスラム建築』は、壁の一定の高さの所から天井に向けて三角形の面を斜めに繰り出して、天井に正多角形を作り、ドームを載せる方法。
図はコンヤ・アラーエッディンジャーミシの場合で、正二十角形を作るために、36個の三角形の面を用いている。形と大きさの異なる三角形を5種類、そのうち4種類は反転形をも用いているという。
コンヤ アラーエッディンジャーミイのトルコ三角形 トルコ・イスラム建築より

アラーエッディンジャーミイ 礼拝室ドーム コンヤ ルーム・セルジューク朝(アナドル・セルジューク朝)、12世紀後半-1220年
『トルコ・イスラム建築紀行』は、アナドル・セルジューク朝が建設した初期のモスク。アラーエッディンの丘に、宮殿と共に建設された。建設期間が長く、複雑な構成の建物だ。ドーム架構に「トルコ三角形」の技法を用いた初期の例。ドームの直径8.2mという。
コンヤ アラーエッディンジャーミイの礼拝室ドーム トルコ・イスラム建築紀行より 


トルコ扇
『トルコ・イスラム建築』は、部屋の隅の適切な高さの所から天井に向けて、数個の細長い三角形の面を放射状に斜め上方に繰り出して、天井に正多角形を作り、そこにドームを載せる方法。
トルコ三角形の手法の特殊な例である。細長い三角形の並びが扇を広げたようなので、トルコ扇とも呼ばれる。また、ペンデンティブの球面三角形を数個の細長い三角形に置き換えたように見えるので、扇ペンデンティブとも呼ばれるという。
 コンヤ ブユックカラタイメドレセのドームの構造 トルコ・イスラム建築より

ブユック・カラタイ・メドレセ 1251年 コンヤ
『トルコ・イスラム建築』は、各隅から5枚ずつの三角形の羽を広げ、天井に正24角形を作っているという。
カラタイメドレセのドーム移行部
コンヤ ブユックカラタイメドレセのドーム移行部 トルコ・イスラム建築紀行より 

ペンデンティブでもスキンチでもない正方形から円形ドームへの架構法を工夫してきたというのに、どれも廃れてしまったとは残念。


                           →ブルサで見たステンドグラス

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参考文献
「トルコ・イスラム建築紀行」 飯島英夫 2013年 彩流社
トルコ・イスラム建築」 飯島英夫 2010年 富士房インターナショナル