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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2012/12/04

第64回正倉院展8 螺鈿紫檀琵琶に迦陵頻伽



第64回正倉院展の目録表紙は瑠璃坏と螺鈿紫檀琵琶だった。
大抵の作品は、要領よく人の隙間に入り込んで、最前列で見ることができたが、この琵琶だけはそれができなかった。

螺鈿紫檀琵琶 らでんしたんのびわ 北倉
全長99.6胴幅41.5
『第64回正倉院展目録』は、槽(背面)はシタン製で、全面にヤコウガイを用いた螺鈿、タイマイや琥珀の象嵌によって宝相華唐草文様を表している。文様は遠山(槽の上部)と胴部とで分かれており、それぞれ文様構成はほぼ左右対称となっているという。

背面には、ゆったりとした弧を描く蔓が、左右対称という文様構成の硬さを和らげている。
一番下中央の両端が下に巻いた、イオニア式柱頭のような螺鈿から茎が2本出ていて、それぞれ左右に枝分かれしながら唐草文様を作っていく。それとは関係なく、中央には茎で蓮弁のようなものを表し、その頂点に螺鈿の花が咲いている。

目を上に移していくと、蔓は小さな飛雲のところで一度終わり、四弁花文が上に表されている。そう思っていたが、四弁花文ではなかった。花弁風な枠で上と下の装飾を分けていた。花弁状の中央に玳瑁の大きな花がおかれ、その上に中に玳瑁の葉のある猪目があって、そこから4本の蔓が出て、また唐草文様が始まっていた。
宝相華唐草文の蔓の間地には迦陵頻伽、飛鳥、飛雲が表されているほか、ヤコウガイに線刻で表された鴛鴦も見られる。唐草文のうち大半の花や葉及び鳥、雲は螺鈿で表され、蔓や一部の花と葉はタイマイで表現されているという。
この鴛鴦はなかなか見付けることができなかった。左の大きな白い葉の中に小さく線刻されていた。両足を広げて走っているようだ。それとも蓮池で泳いでいるところを表しているのだろうか。
ヤコウガイには毛彫が施され、刻線内に黒い色が入れられているという。
葉や花の茎が、元の茎をくぐったり、越えたりしながら描く曲線が柔らかい。 
また、タイマイは下に金箔を押すことで斑文が浮き立つように工夫され、タイマイの周囲は細く切ったツゲで縁取られているという。
黄色っぽい色の輪郭線がツゲなら、もう少し太い茎の輪郭線が琥珀だろうか。それとも迦陵頻伽が乗っている花の丸いシベが琥珀だろうか。
迦陵頻伽とは、サンスクリット語のカラヴィンカの音写。妙音鳥・妙声鳥と訳される。人頭鳥身の想像上の鳥で、極楽浄土に住むとされ、非常に佳い声で鳴くという。また楽器を奏する姿で表されることも多いという。
この迦陵頻伽(かりょうびんが)は楽器ではなく、団子を盛ったお盆を持っている。しかし、極楽に団子は似合わない。きっと蓮弁を盛った華鬘を持ち、散華するつもりなのだろう。
左の迦陵頻伽は少し低い花の上にいて両手を挙げている。もう散華が終わったのだろうか。こういう所で左右対称を少し破っている。
迦陵頻伽は、こんなに長い尾をしていたかな?

                      第65回正倉院展1 樹木の下に対獣文

関連項目
迦陵頻伽の最初期のもの?
涅槃図に迦陵頻伽
敦煌莫高窟7 迦陵頻伽は唐時代から
日本の迦陵頻伽
中国の魚々子と正倉院蔵金銀八角鏡の魚々子

※参考文献
「第64回正倉院展目録」 奈良国立博物館 2012年 財団法人仏教美術協会