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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2014/03/21

イラクリオン考古博物館3 粒金細工



イラクリオン考古博物館にあった金製印章指輪の輪っかの外側に大小の粒金が並んでいた。

印章指輪 粒金部分 前1450-1400年頃 イラクリオン考古博物館蔵
右外側の印章と接している金の粒は、ほとんど地金には熔着していないように見える。
別方向より
多少のずれや大きさが均一でないなどの難点はあるが、粒金を3つの大きさにつくり分けている。

その前の時代の作品は、

耳飾り 金製 前1700-1350年頃 イラクリオン考古博物館蔵
左のものは粒金が熔けて、互いにくっついてしまっているように見え、右のものは粒金の粒が平たくへしゃがっている。

耳飾り 金製 前1700-1450年頃
金の粒だけを鑞付けしている。
ティリヤ・テペの墓で出土した金の粒だけを鑞付けした装身具(前1後半-後1世紀前半)にも見られる技法だが、それよりはるか以前にすでにあったのだ。

装身具の部品 金製 前1700-1350年頃
こちらは土台に直接粒金を熔着しているのではなかった。 

以前粒金細工の起源を探っているとき、ギリシアで最も古いのがミツバチのペンダントだった。

蜜蜂のペンダント 金 幅4.6㎝ クレタ島マリア出土 前1800-160年頃 イラクリオン考古博物館蔵
『世界美術大全集3』は、精巧な粒金細工(金の細粉を鑞付けする方法)を用いている。新宮殿時代初期の工芸品の傑作。クレタ島第3の規模を誇るマリア宮殿に隣接する、クリュソラコスと呼ばれる大規模な地下埋葬所の一画から出土。
ペンダントの構造は以下のとおり。蜜蜂2匹が紋章風に左右対称に向かい合う。中央に見事な粒金細工を施した、蜂の巣を想わせる円盤を抱えている。2匹の蜂の頭の上には、小さな球体が球形の籠のなかに収められている。蜂の羽と胴体の端から、三つの円盤飾りが下がっている。蜂の足部分と上方の球形の籠には細線細工(金の細線を鑞付けする方法)が用いられている。ペンダントの本体は金板の打ち出し細工によるもので、内部は空洞、背面は平滑
という。

粒金細工も金線細工もすでにこの時代確立した技術だった。

そして今回は、イラクリオン考古博物館でもっと以前の粒金細工を見付けた。

ライオンまたはカエル形ビーズ 金製 古神殿時代(前2000-1800年頃、同書と博物館の説明では時代が異なっている。こういう場合、博物館の方を優先することにしている) メサラ出土 イラクリオン考古博物館蔵
博物館の説明では、粒金細工と渦巻装飾の初期の例という。

せっかく撮ったのに全くのピンボケのため、『Το Δαχτμιδι τομ Μινψα: η οπισθια οψη της οφενονης χαι ο χφχος』の図版を借りる。
私にはカエルに見える。そして、粒金が立体的に鑞付けされているように見える。

世界的にみて、前2000-1800年頃の粒金細工は早い時期のものだが、それでもメソポタミアの方が古くからある。
それについてはこちら

  古代マケドニア6 粒金細工・金線細工←  
              →イラクリオン考古博物館4 水晶製のリュトン

関連項目
黄金伝説展2 粒金だけを鑞付けする
黄金のアフガニスタン展1 粒金のような、粒金状のは粒金ではない
メソポタミアの粒金細工が最古かも
ティリヤ・テペの細粒細工は金の粒だけを鑞付け
ギリシアの粒金細工
イラクリオン考古博物館1 壁画の縁の文様
イラクリオン考古博物館2 女性像
イラクリオン考古博物館5 ミノア時代の建物の手がかり
イラクリオン考古博物館6 ミノア時代のファイアンスはすごい
イラクリオン考古博物館7 クレタの陶器にはびっくり
イラクリオン考古博物館8 双斧って何?

※参考文献
「クノッソス ミノア文明」 ソソ・ロギアードウ・プラトノス I.MATHIOULAKIS
「ギリシア美術紀行」 福部信敏 1987年 時事通信社
「世界美術大全集3 エーゲ海とギリシア・アルカイック」 1997年 小学館
「名画への旅1 美の誕生 先史・古代Ⅰ」 木村重信・高階秀爾・樺山紘一 1994年 講談社
「Το Δαχτμιδι τομ Μινψα: η οπισθια οψη της οφενονης χαι ο χφχος」  ΤΟ ΔΑΚΤΥΑΙΑΙ ΤΟΥ ΜΙΝΩΑ
「HERAKLEION ARCHAEOLOGICAL MUSEUM」 ANDONIS VASILAKIS EΚΛΟΣEΙΣ ADAM EDITIONS