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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2014/07/15

きのわでの八木洋子氏の個展2 ムリーニ



きのわには西側に棚があり、そこには小さな作品が並んでいて、その下側にムリーニになる前の段階のガラスがあった。

右、色板ガラスを熔着させたもの
左、そのような塊を斜めに切って貼り合わせ熔着して、ジグザグ状にしたもの。上から写したせいか、台にガラスの色や模様が映っていた。
右のガラスを光に透かしてもらった。
透明ガラスが厚さを違えながら挟んであるのがよくわかる。これでほぼ原寸大。

その下の段にはもっと小さなものが。

文様に組み合わせた色ガラスを細く伸ばしていき左のような角棒にする、と簡単にいうけれど、こんなに太さを揃えて、歪みなく均一な棒に引き伸ばすのはかなりな手間と技術だろうなあ。ガラスって溶かすと丸くなっていくのでは?

このよう角棒状のものを、器やアクセサリーなどの形に組み合わせるために、切っていったのがムリーニかな。それらが右側の箱に入っていた。
横に移したものを縦にしたのでちょっとヘンな画像(横向きだと大きく表示できないので)。
上の大きな塊から伸ばして小さくしたようなジグザグのムリーニだけでも何色もあるし、大きさも色々。
こんな様々なムリーニを組み合わせ、熔着させ、壺などはさらに吹きガラスのように加熱して形にしていくという複雑で、気の遠くなるような工程。色ガラスの中には、火を通す度に色が変わってしまうものもあるとのこと。
宝石というものに全く興味のない私には、このケースこそ宝石箱に見える。

これがそのパーツに近い作品。
左 中央の赤と黒の文様は、羊のショーンに見えて仕方がない。その周囲のエメラルド・グリーンのところも複雑。そして丸い周囲は無色透明なガラスに細~い色の線が通っていて、糸巻き文様になっている。
右 斜めから上面を見ているので、文様がよく写せなかったが、無色透明なガラスに白色ガラスの縦線が色んな幅に通っている。

そして、このような様々なムリーニを組み合わせて創られたアクセサリーが、小さな棚に置かれていた。

左上 一つのムリーナのイヤリング
左下 端に強力な磁石がついたイヤリング。ムリーニを縦に並べて、加熱して湾曲させて・・・ あれ、どうやってこんな丸みのある形にもっていくのだろう?
右 イヤリング。これは左下と同じ技法で輪っか状にして、それを半分に切ったのかな?
ええ加減な知識しかない上に、モノをつくることのできない私の、勝手な解説でした。写真をクリックして拡大し、それぞれの作品の不思議の世界に魅入って下さい。 

ペンダントとイヤリング
同じような色や文様に見えても、それぞれが微妙に異なっていて、同一のものは一つとしてない。
同じといえば、一対に仕上げたイヤリングだけだが、左右で表面が少し違う。それは、創り上げたものを半分の幅にカットするからだそう。
奥のペンダント
写真に撮った段階で、すでに作品の色は変わってしまっているし、均等に光が通っていないので、見えていない色もありそうだが、日本の伝統色 和色大辞典の色名と比べてみた。
一番濃い赤が深緋(こきひ)、
ピンク系では濃い順に 長春色(ちょうしゅんいろ)または退紅(あらぞめ) 浅蘇芳(あさすおう) 薄柿(うすがき)
グレー系 利休鼠(りきゅうねず)
青系 花色(はないろ)または瑠璃色 白群(びゃくぐん)

それに 黒 白 無色透明
それだけでなく、右下と左上の透明部分のギザギザの片隅に櫨染(はじぞめ)のような色も見える。
もっと光にかざすと、色んな色が見えてきそう。
ムリーニの単位を一つずつ探るのも面白いが、白い色が効いている作品である。例えば上右や下左に並んでいるムリーニは、白ガラス(ピンク系もだが)が持ち送り状に並んでいるのが印象的だし、左中央の4つを組み合わせたムリーナは、ピンク系の間に薄く入り込んで、縞柄を際立たせている。
その下から穴の下、右と連なるグレー系の、ヴェネツィア・カーニヴァルの仮面のような帯文様も、白い層の重なりである。
やっぱり大きなものの方が、ムリーニを楽しめるかな。

もっと大きな壺は、もちろんもっとたくさんの種類のムリーニでできている。
くっきりした文様と、ぼんやりした文様の組み合わせ。くっきりした文様を見ているとぼんやりした文様が浮かんでくるし、ぼんやりした文様を見ているとくっきりした文様が主張し始める。 
透明ガラスに貼り付けて吹き、このような形に成形。その後磨きをかけるそうです。重すぎると持っているのが大変なので、これくらいの大きさが限界とのこと。
かけ過ぎるとピカピカになってしまうだろうし、これくらいのツヤの出ない状態というのも八木氏の作品の特徴だろう。
そう言えば内側を覗いたら、結構でこぼこしていた。それはそれで面白かった。 
壺を飾って、そのものを眺める。
中をのぞき込んで、表面との違いを確かめる。
光にかざして、色が変わったり、光が透けたりするのを楽しむ。
裏返して底の文様を見る。
八木氏の器はいろんな見方ができる。ただ飾っていたのではもったいない。

去年、アテネ国立考古博物館で、アンティキティラ島の沈没船出土物という特別展を見学した(同館のホームページを見ると、2014年6月29日で終了したらしいが、今でも出てくる)。その時にもモザイクガラス碗はあったが、大きなパーツのものばかりだった。

縞柄のモザイク碗 前1世紀第2四半期 高4.3㎝口径9.3㎝
角形のムリーニとレースガラスや白・黄色などの棒状のガラスを組み合わせたものだが、それぞれがかなり変形している。

モザイク碗 前1世紀第2四半期 高4.3㎝口径8.9㎝
同心円文のムリーニと白いガラスを組み合わせたもの。上の碗と比べると、密に並んでいるが、
拡大すると、それぞれが歪んでいる。
当時はそれでも貴重なガラス碗で、おそらくローマの市場に向けて運ばれるところだったのだろうと、同ホームページの解説にある。
いつまで見られるかわかりませんが、そのページはこちら

このような古代のガラス制作の技術で、新しい作品を創り続ける八木洋子氏ですが、きのわでは別の面も垣間見えました。

それについては次回。

   きのわに八木洋子氏のガラス展を見に行った
                      →きのわでの八木洋子氏の個展3

※ ギャラリー内及び作品は八木氏の許可を得て撮影しました。

関連項目
八木洋子氏のモザイクガラスにびっくり
レースガラスはアンティキティラ島出土物にも

※参考サイト
日本の伝統色 和色大辞典