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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2014/09/09

蓮華座7 中国石窟篇



中国の石窟で、塑造や石造の仏像の蓮華座をみていくと、

隋(581-618)

仏三尊像 敦煌莫高窟第427窟中心柱東向面
薄造りの素弁の蓮華座。受花と、台座が高いせいか、二段の反花は真下に垂れている。 

両脇侍菩薩 敦煌莫高窟第420窟西壁龕
厚い素弁の大きな反花。

仏三尊像の左脇侍菩薩 敦煌莫高窟第304窟西壁北側仏龕外 
複弁の反花

西魏(535-556)

菩薩立像 西魏大統年間(535-551) 天水麦積山石窟第127窟西壁龕内
真下に垂れる厚い反花

北魏

仏坐像 雲崗中期(470-494) 雲崗石窟第12窟後室南壁第3層東側仏龕 
仏の坐す蓮華座は、彩色で子葉部分を描き分けているので単弁の反花、各層の下縁には複弁の反花が並ぶ。

仏三尊像 敦煌莫高窟第248窟中心柱東向面仏龕
かなり細身になっているが、通肩の大衣を付けているので、洛陽遷都前の北魏前期様式(494年以前)。
線刻で大きめの子葉が線刻された単弁の反花は、仏正面から左右に少しずつ重なっている。
龕の外枠に龍の体が回り、両端で饕餮のような顔を見せる。

仏立像 雲崗初期(曇曜五窟うち、460-465) 雲崗石窟第18窟東壁
当時の仏三尊像は仏と両脇侍という形式ではなく、過去仏・現在仏(釈迦)・未来仏(弥勒)という組み合わせだった。
その過去仏は反りの強い複弁の反花の蓮華座に立つ。 

敦煌莫高窟の北涼時代の窟には蓮華座は見られず、石窟の蓮華座は北魏が最も古いと思っていたが、西秦のものを見付けた。

西秦(385-431)

仏三尊像 永靖炳霊寺石窟第169窟北壁後部仏龕
中尊は平たいが大きな複弁の反花の蓮華座に坐し、両脇侍は単弁の反花の蓮華座に立つ。

日本では、出現の順序に従い、花弁の形状を素弁(無子葉弁)・単弁(単子葉弁)・複弁(複子葉弁)の三種という(『日本の美術359蓮華紋』より)が、中国では五胡十六国時代にすでに複弁もあったのだった。

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関連項目
蓮華座1 飛鳥時代
蓮華座2 法隆寺献納金銅仏
蓮華座3 伝橘夫人念持仏とその厨子
蓮華座4 韓半島三国時代
蓮華座5 龍と蓮華
蓮華座9 クシャーン朝
蓮華座10 蓮華はインダス文明期から?
蓮華座11 蓮華座は西方世界との接触から

※参考文献
「中国石窟 敦煌莫高窟1」 敦煌文物研究所 1982年 敦煌文物研究所
「中国石窟 敦煌莫高窟2」 敦煌文物研究所 1984年 敦煌文物研究所

「中国石窟 天水麦積山」 天水麦積山石窟芸術研究所 1998年 文物出版社
「中国石窟 永靖炳霊寺」 甘粛省文物工作所・炳霊寺文物保管所 1989年 文物出版社 
「中国石窟 雲崗石窟2」 1994年 文物出版社