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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2010/06/08

世界のタイル博物館9 ジェゼル王の階段ピラミッドのファイアンスタイルの壁面


エジプトの青いファイアンスタイルと言えばジェゼル王(第3王朝、前27世紀)の階段ピラミッドのタイル壁面だ。それが世界のタイル博物館に、メソポタミアのクレイペグの壁の次に再現されていた。

ジェゼル王がセド祭で走っている場面が中央の白いパネルに浮彫になっていて、その上にはすだれを巻き上げたような円筒状のものがあり、両側にも青いファイアンスタイルが貼り付けられている。

外側の三方に白い帯状の浮彫があり、上側はヒエログリフ、両側にはジェゼル王の王名(まだカルトゥーシュになっていない)が連続して表される。その上と左右にも青いファイアンスタイルがぎっしりと並んでいる。タイルの真新しい感じは否めなかった。
そして、展示室の方には、青いファイアンスタイルの実物があった。

ファイアンス・タイル エジプト出土 前27世紀 世界のタイル博物館蔵
『世界のタイル日本のタイル』は、建築装飾素材としてのタイルの、ごく初期の遺例は、エジプトに見られる。ここに挙げるファイアンス・タイルは、世界最古の施釉タイルとされ、古代エジプト第3王朝・ジェゼル王の階段ピラミッドから見出された。石英を粉末にして練り固めた素地に、天然ソーダと酸化剤を混ぜて施釉してある。裏面には紐通しの穴が開いた凸状の足がついている。紐で連結し、壁面の溝に嵌め込んで張ったと考えられるという。

タイルの表側は曲面になっている。開放鋳型で作ったのだろうが、穴はどのようにあけたのだろう。開放鋳型についてはこちら
世界のタイル博物館で撮った画像は黄色がかってしまった。実物はここまで青緑色ではないが、上の壁面ほど真っ青でもなかった。
そしてカイロ博物館に復元されたタイル壁画の写真があった。しかしそれは復元されたものとは違っていた。2種類の壁面パネルがあるのだろうか。
『砂漠にもえたつ色彩展図録』には下の写真とほぼ同じ図版が掲載されている。同書で山花京子氏は、ジェゼル王の地下東側通路には6枚の偽扉があり、その周辺と壁一面にタイルが施されているが、ちょうど葦を束ねて作った家屋を模している。青色~青緑色のタイルは平面的には長方形だが、断面を見ると凸形に盛り上がっている。これを横一列に並べてタイルの上下の間隔に白色プラスターの帯を入れると、等間隔に結わえた葦の束を何本も並べているように見える。本来は葦や木材などの朽ちやすい材料で造られていた王宮の外観をファイアンスタイルを使って模したのであろう。葦は古代エジプト人にとって来世の楽園である「イアル(葦)の野」とも象徴的に関連しており、さらにタイルの青色は水、生命や再生といった概念とも結びついているという。
どちらのパネルも階段ピラミッドの地下にあったようだ。     
その後エジプト旅行に出かけた。カイロではエジプト博物館の見学も含まれていたので、本物のファイアンスタイルの壁面が見られるものと思っていた。 
ところが、現地ガイドが説明しながらの見学にはファイアンスタイルは含まれていず、1時間弱の自由時間に館内を探して回ったが、見つけることができなかった。タイルのない、王が棍棒を振り上げる場面が浮彫された、目立たない壁面はあったが、ひょっとするとそれが先ほどの偽扉の1つだったのかも知れない。
館内は石製のものが多いため、全体に色としては地味だった。そんな中で青い色のものがれば目立つので、すぐに見つけられそうなものである。現在館内には展示されていないのではないかという結論に達し、諦めることができたのだった。  

※参考文献
「世界のタイル日本のタイル」(2000年 INAX出版)
「砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイル・デザイン展図録」(2001年 岡山市オリエント美術館)