お知らせ

忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/07/24

ラージュヴァルディーナはタイル以外にも



サマルカンドのシャーヒ・ズィンダ廟群、24:無名の廟2(14世紀後半)でラージュヴァルディーナのタイルを見つけた。

『砂漠にもえたつ色彩展図録』で枡屋友子氏は、13世紀後半にイランで始まった技法で、14世紀末まで中央アジアで続けられた。登場初期には中絵付を持つ白釉の上に施されたが、13世紀末までにには、わずかにターコイズ釉の地のものもあるものの、藍色釉の地が大半を占めるようになり、藍色を意味するペルシア語「ラージュヴァルド」から派生した「ラージュヴァルディーナ」という名称がこの技法に対して当時からすでに使われていたようである。これは技術的にはミーナーイー陶器と同じくエナメルで上絵付を施す技法であるが、用いられた色彩は白、黒、赤茶色に限られ、金彩ではなく金箔が貼られたという。
同廟には金泥で描いているタイルもあって、他のラージュヴァルディーナタイルとの比較から、それは補修タイルだとわかった。
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後日、東京国立博物館東洋棺で、ラージュヴァルディーナの大壺を見た。

青釉色絵金彩大壺 イスラーム時代、13-14世紀 土製、施釉 イラン出土 東京国立博物館蔵
説明には、コバルトを呈色材とする青釉の上に、白、赤、金、黒の絵具で文様が描かれています。ペルシア語で青藍色を「ラジュヴァルド」ということから、ラジュヴァルディナ陶器と呼ばれます。イランのカシャーン窯などで12世紀後半から14世紀前半にかけて作られましたと記されていた。
果たして金の絵具なのだろうか。
博物館内は暗いので、撮影した写真を拡大してみると、無名の廟2の藍地タイルと同じく、赤茶色の輪郭線の中に金箔が認められた。
ピンボケだが、黒地の部分にも赤茶色の輪郭線の中に金箔が残っている。その上下の境界線も同じ方法で金箔が。
壺の下部も。

また、同館にはやはり金箔を使った器も見られた。


色絵人物文鉢 イスラーム時代、12-13世紀 イラン出土 東京国立博物館蔵
説明は、玉座にすわり盃を手に取る人物とかしずく侍者が描かれています。錫白釉を掛け、いったん焼きあげたのち器表に絵付けを施し、再度窯に入れて低火度焼成して焼き付けています。華やかなイスラーム陶器を代表する技法の一つであり、ミーナーイー陶器と呼ばれますという。
玉座の人物のほか、楽人や侍者も頭部の飾りものに金箔が施され、玉座の人物の人物にあるランプのようなものの上下にも菱形のものが金箔のよう。

『世界美術大全集東洋編17イスラーム』でヤマンラール水野美奈子氏は、ミーナーイー手は、イラン・セルジューク朝で発達した陶器技法の一つである。まず白化粧した地にコバルトで下絵を描き、無色あるいは青系の透明釉をかけ、焼いてから赤、赤茶、白、黄、緑、青などさまざまな色や金箔を使って上絵を描き、再度焼成した釉上彩画陶器である。中間色の穏やかな色彩が好まれた。ミーナーイーはペルシア語でエナメルを意味するが、このミーナーイー手はハフト・レンギ、かなわち「7色」ともいわれる。いずれも、豊富な色彩が使われていることに由来している。
このミーナーイー手陶器は、青の透明釉がかけられ、焼成された後で絵付けされているという。
同書は、見込みの図柄は騎馬人物像で、左手には狩猟のための隼をとまらせている。馬、人物ともに、典型的なセルジューク朝絵画様式を踏襲している。見込みの周囲には、簡単な蔓草文様が施されている。ミーナーイー手陶器の制作が盛んであったイランのレイで造られたと考えられているという。
金箔ということがよくわかる。
同書は、ミーナーイー手陶器は、焼き上がった透明釉の上に、絵画を描くように絵付けしたが、ラスター彩陶器よりも絵付けがスムーズに行えるので、とくに物語図、狩猟図、戦闘図など動きのある場面が好んで描かれたという。
『砂漠にもえたつ色彩展図録』で枡屋氏は、ミーナーイー手は、現存する作例は大多数が容器であるが、タイルの作例もわずかだが残っているという。
残念ながら、ミーナーイー手のタイルはどの書物にも図版がない。わずかに残るタイルには、植物文や幾何学文ではなく、物語図などが描かれているのだろうか。

なお、東京国立博物館では、撮影禁止のマーク(非常に小さくわかりにくい)がない作品は写真に撮っても良いということで、色々写してきましたが、明るくない展示室、ガラスケースに反射するあちこちの照明、そしてカメラを向けた自分の姿など、条件は悪いです。それはどの美術館・博物館でも同じことですが。
それでも、自分がその時興味を持った作品を撮影しておくと、後々参考になります。


           ラージュヴァルディーナ・タイルとは

関連項目
シャーヒ・ズィンダ廟群9 無名の廟2

※参考文献
「砂漠にもえたつ色彩展図録」 2003年 岡山市立オリエント美術館
「世界美術大全集東洋編17 イスラーム」 1999年 小学館