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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2013/09/13

エピダウロスのトロス2 天井のアカンサス唐草




アカンサス唐草を調べていた頃、『古代ギリシア美術紀行』で、エピダウロスのトロスのコリント式柱頭と、アカンサス唐草のある格間の図版を見て以来、ギリシアを旅することができたなら、是非見たいと思ってきた。それがようやく叶う日がきた。
トロスとは円形の建造物のことで、エピダウロスでは円形堂である。
建立時期については、『ギリシア美術紀行』は前360-320年、『CORINTHIA-ARGOLIDA』は前365-335年とする。

『世界美術大全集4ギリシア・クラシックとヘレニズム』はエピダウロスのトロスについて、デルフォイの先例同様、ナオス外側の周柱はドーリス式、内側はコリントス式であるが、各部の装飾ははるかに洗練され、豊かである。
ドーリス式フリーズのメトープには花弁文様、ナオス入口の脇柱にはレスボス風キュマティオンと花弁文様が施され、ナオスの内部では華麗なコリントス式柱頭が豊潤な装飾世界の頂点を形成していたという。
しかし、現在は復元中で、全くわからない。
博物館内にあった想像復元図
『CORINTHIA-ARGOLIDA』は、トロスは、前365-335年に建築家で彫刻家のポリュクレイトスによって建てられた。外側は26本の石灰岩の列柱の並ぶドーリス式、中央は円形の石灰岩のケラ、内部は14本のコリント式列柱という。
その内側の白黒の模様について『ギリシア美術紀行』は、白と黒の菱形模様の石板を敷つめた床という。
そしてこれが周柱廊の天井格間。
おそらく上の方が外側で、格間の四角形を円形に並べた時にできる隙間にアカンサス唐草を配置したのだろう。アカンサスにしろ、蔓草にしろ、地面から生えて上方に伸びるが、展示の都合上、逆さまになっている。
外側から着衣に向かって、大きな卵鏃文、横並びの小さな卵鏃文、格間とアカンサス唐草、横並びの小さな卵鏃文、波頭文、大きな卵鏃文という風に並んでいる。
格間は3段に刳りがあって、それぞれの外周を小さな卵鏃文が巡り、一番中側に大きな花文がある。このような文様はないが、後世のローマのパンテオンのドーム天井を思い起こさせる。
『世界美術大全集4』は、周柱廊の天井格間にはアカンサスの葉と百合の花という。
葉は確かにアカンサスだが、中央の花はユリだろうか。ユリは萼3枚と花弁3枚、合わせて6枚の花ではなかったかな。
タイサンボクかなとも思ったが、花が違うし、北米原産だった。
アカンサス唐草と同様、現実にはない植物かも知れない。
ギリシアでは、ミケーネ時代のミケーネ円形墓域A出土の短剣に、すでにユリの花が図案化されていて、ユリは珍しい花でもなかったと思われるので、格間の四弁花は別の花だろう。

さて、せっかく見ることができたので、格間の両側にあるアカンサス唐草をズームして写してみた。
それを合成して、植物らしく先端が上に来るように配置してみた。

これはもう、どう見てもアカンサスの株だ。そこから蔓が捻れながら伸びて、次のアカンサスの葉のところで、渦巻く蔓と、伸びる蔓、その間に花の蕾が出ている。
そして反対側にもアカンサスの葉が付いた小さく渦巻く蔓。
主蔓はもう1枚小さな葉を出して、S字に曲がっていく。
葉がまた1枚出たところで枝分かれして小さな渦を巻く。
そこから主蔓はまた反対方向にカーブを始める。
やや大きな葉が出た節で、蔓は枝分かれして小さな渦を巻き、主蔓は葉に隠れてまたカーブし、その先が一巻きして、蕾が出たところで終わる。
アカンサス唐草と卵鏃文の間の文様をキュマティオンと呼ぶのだと思う。
左側も同じ方向に蔓が巻いているので、展示のような格間の左右にアカンサス唐草が配置されているのがひとまとまりではないことがわかった。

   エピダウロスのトロス1 コリント式柱頭← →アカンサス唐草文の最初は?

関連項目
パルテノン神殿のアクロテリアがアカンサス唐草の最初
アカンサス唐草の最古はエレクテイオン?
ギリシア建築8 イオニア式柱頭
エピダウロス4 トロス
アカンサスの葉が唐草に

※参考文献
「世界美術大全集4 ギリシア・クラシックとヘレニズム」 1997年 小学館
「ギリシア美術紀行」 福部信敏 1987年 時事通信社
「CORINTHIA-ARGOLIDA」 Elsi Spathari 2010年 HESPEROS EDITIONS