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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2009/05/15

ギリシアの粒金細工

 
ギリシア世界で粒金細工が発明されたのではなかったようだが、どのような作品があるのだろうか。

イヤリング 金 径2.2㎝ マケドニア、カヴァクリの墳墓出土 前4世紀 ルーヴル美術館蔵
『ルーヴル美術館展図録』は、前4世紀からは先端が動物頭部の、捻られた形のイヤリングがギリシア中で普及したという。
動物の頭部があるというと、スキタイ人などが好みそうに思ってしまうが、ひょっとして、黒海北岸のギリシア植民都市でギリシアの工人がスキタイ人の要望で作っていたという装飾品が、ギリシアへ将来されたのかも(『アフガニスタン遺跡と秘宝』より)。
黒海沿岸のギリシア植民都市の地図はこちら  さて、いわゆるギリシア文明時代にはどんなものがあったのだろうと探してみたが意外にも見当たらなかった。
同展図録は、クラシック時代のギリシアの装身具の数が少なく、地味であったのは、前5世紀にペルシア人が小アジアを占領したからで、このために最も重要な黄金ルートのひとつが閉ざされてしまった。黄金が再び流通し、彫金技術が再び隆盛するのは、ようやく前4世紀にマケドニア王によりパンガイオン金山の採掘が始まり、また、アレクサンドロス大王がペルシアを征服してからであるという。

黄金のロゼット 金 幅4.6㎝ メロス(現ミロ)島出土 前7世紀 アテネ、国立考古博物館蔵 
『世界美術大全集3』は、黄金のロゼット(花文様)に粒金細工と細線細工を施し、鳥とグリフォンの頭部を花弁上に飾った作品。青銅器時代クレタの高度な金工技術が、幾何学様式期、アルカイック期を通じてエーゲ海域で継承されたことを示す実例の一つという。
他に昆虫・人頭・花模様が装飾としてつけられているらしいのだが、真上からの写真のためか、人やグリフォンの頭部がどれなのか見分けられない。  ネックレス用金のビーズ テーベ、カドメイア出土 前14世紀 テーベ、考古学博物館蔵
『ビジュアル考古学3エーゲ海文明』は、金属細工はミケーネの職人が非常に卓越していた芸術分野であった。武器のほか、日常生活で使う農具や食器類もつくられた。最も華麗な金属細工は、身に着ける装飾品である。
ミケーネ職人の手になる金の装身具は非常に洗練されており、さまざまな高度な技法が駆使されている
という。
粒金を並べているが、それぞれに凹みをつくって、その中に1粒1粒鑞付けしていったように見える。下方の3つの円錐形のものがそれをよく示している。螺旋状に凹みを成形段階でつくり、そのままのものと、凹みに金の粒を配列したものとがある。  蜜蜂のペンダント 金 幅4.6㎝ クレタ島マリア出土 前1800-1600年頃 ギリシア、イラクリオン考古博物館蔵
『世界美術大全集3』は、精巧な粒金細工(金の細粉を鑞付けする方法)を用いている。新宮殿時代初期の工芸品の傑作。クレタ島第3の規模を誇るマリア宮殿に隣接する、クリュソラコスと呼ばれる大規模な地下埋葬所の一画から出土。
ペンダントの構造は以下のとおり。蜜蜂2匹が紋章風に左右対称に向かい合う。中央に見事な粒金細工を施した、蜂の巣を想わせる円盤を抱えている。2匹の蜂の頭の上には、小さな球体が球形の籠のなかに収められている。蜂の羽と胴体の端から、三つの円盤飾りが下がっている。蜂の足部分と上方の球形の籠には細線細工(金の細線を鑞付けする方法)が用いられている。ペンダントの本体は金板の打ち出し細工によるもので、内部は空洞、背面は平滑
という。
こちらも蜂の目と胴体の粒金細工は、凹みを作って配列しているようだ。3つの円盤飾りは、粒金のとれた部分から、円盤の内側に細線を一周させ、その外側に金の粒を巡らせている。どちらも粒金を並べ易いように思う。中央の「蜂の巣を想わせる円盤」は隙間なく並んでいるので、凹みがあったどうかわからない。渦巻きにはなっていないことくらいしかわからない。 ギリシアで粒金細工を探すと、一気に紀元前1千年紀前半まで遡ってしまった。他地域にもっと古い粒金細工はあるのだろうか。いったいどこで発明されたのだろう。

※参考文献
「世界美術大全集3エーゲ海とギリシア・アルカイック」(1997年 小学館)
「世界美術大全集5古代地中海とローマ」(1997年 小学館)
「ビジュアル考古学3エーゲ海文明」(編集主幹吉村作治 1998年 NEWTONアーキオ)
「ルーヴル美術館展 古代ギリシア芸術・神々の遺産展図録」(2006年 日本放送網株式会社)
「知の再発見双書37 エトルリア文明」(ジャンポール・テュイリエ著 1994年 創元社)
「アフガニスタン遺跡と秘宝 文明の十字路の五千年」(樋口隆康 2003年 NHK出版)