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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/11/10

白鳳展6 法隆寺金堂六観音像


『白鳳展図録』は六観音について、法隆寺において「六観音」と通称される近い像高とよく似た作風を示す6軀の菩薩立像のうちの2軀。ただし6軀がすべて観音像でもなく、この呼称は当初からのものではない。平安~鎌倉時代には計8軀が金堂内に安置されていたようだが、うち2軀は寺外に流出している。
文殊・普賢菩薩の名称は、かつて金堂釈迦三尊像の須弥座の脇に安置されていたことによるものだが、これも当初からの尊名とはいえない。
やや細長い顔で、目と目の間が少し開き、鼻や口は小さめに表して、少年ないし幼年の相を示すように見える。金龍寺菩薩立像や見徳寺薬師如来坐像とは作風が近く、同一工房で造られたと思えるという。
金龍寺菩薩立像についてはこちら

普賢菩薩立像 白鳳時代(7世紀) 木造・漆箔 像高83.9㎝ 法隆寺蔵
『白鳳展図録』は、両肩にかかった天衣はそのまま真っ直ぐに垂下する。台座の蓮弁は単弁という。
反花は2段になっている。

金龍寺菩薩立像
小像のためか、台座の反花は複弁の1段。
背が高い分、金龍寺菩薩立像よりも細身に見えるが、裙や瓔珞の表現がよく似ている。

文殊菩薩立像 白鳳時代 木造・漆箔 像高85.7㎝ 法隆寺蔵
同書は、天衣が膝のあたりでX字状に交差する。台座の蓮弁が複弁。文殊菩薩像の形式は六観音像のなかでは勢至菩薩像に最も近く、これらの2軀がもとは一具であった蓋然性もあるかと思われる。もしそうであれば、本像の欠損した三面頭飾の正面には化仏が表され、観音菩薩像であったかとも想像されるが、なお今後の検討を要するという。
台座の蓮弁は複弁なので、上の普賢菩薩立像の台座が単弁であることから、元は対ではなかったようだが、こちらも反花は2段に造られている。

この2体の菩薩立像の天衣と、法輪寺の伝虚空蔵菩薩立像を比べてみると面白い。

伝虚空蔵菩薩立像 白鳳時代、7世紀 木造 像高175.4㎝ 奈良、法輪寺蔵
同書は、体側を垂下する天衣が面を側方に向けることや、また身体の正面にわたる天衣が上下に分かれる点は、百済観音像や救世観音像において天衣がX字状に交差し、厳格な左右対称性を示すのと明らかに異なり、様式的に一歩進んだ様を呈しているという。
ということは、同じ白鳳期でも、膝上で天衣がX字状に交差する文殊菩薩立像が古い様式を踏襲したもの。この菩薩立像のように、天衣が上下に分かれて上の方で交差するもの。そして、天衣が両腕内側から下方に垂れて交差しない普賢菩薩立像のような進んだ様式を採り入れたものなど、様々のものが造られている。古い様式、新しい様式というだけで、制作時期を特定することもできないのかな。

側面からみると、この時代の仏像は薄く、腹部が前に迫り出している。本文殊菩薩立像は伝虚空蔵菩薩立像よりも腹部の突き出し方が強いが、そのことも制作時期の違いといえるかも知れない。

三面頭飾は透彫になっている。額の上にあるものは化仏という。そう言われれば、化仏の台座が残っている。
同書は、木心を籠めたクスノキの一材から彫成する構造で、両前膊半ばから先には別材を矧ぎ付ける。頭髪の髪筋や頭部に戴く三面頭飾は、乾漆を盛り上げて造っている。表面には美しい漆箔がよく残り、また頭髪にも群青を塗った当初の彩色が確認できるという。
乾漆を盛り上げて造るというのは、木屎漆を盛り上げてということだと思うのだが、これは同じく白鳳時代に造られた当麻寺金堂の四天王像(多聞天を除く)にも用いられた技法である。
顔貌も金龍寺菩薩立像とよく似ていて、金龍寺の菩薩が少し成長したらこういう顔になるだろうという風に見える。

同書は、法隆寺金堂中の間及び西の間の天蓋に付属する飛天との近似も指摘されるが、天蓋は金堂完成時に近い頃のものであろうから、本像の制作期も金堂建立年代に引き寄せて考えることが可能となる。
近年行われた天蓋本体の年輪年代測定によれば、部材として最も年代の下がるものとして中の間では654年、西の間では663年という数値が示されており、これを天蓋及び飛天像の制作年代に敷衍させることも可能かと思われるという。

飛天 白鳳時代 クスノキ 法隆寺金堂天蓋附属品
同書は、飛天像の面貌表現は、輪郭が丸みを帯び、目の位置が下がり、奈良・法隆寺六観音像のような童顔を表すものがあるという。
飛天の中では遅い時期に造られ、西の間の天蓋の上に置かれていた。
このことからも、六観音像も、白鳳でも後期に造られたものといえるかも。

上の2体は、なら仏像館と呼ばれる常設展示室に置かれていたと記憶している。これらの像の前にくれば、「浅田真央ちゃんに似ている」などと話し、傍で見ている人も頷いていたりしたものだ。

六観音像の残りの4体の方は、法隆寺大宝蔵院に置かれている。

勢至菩薩立像 像高86.0㎝
文殊菩薩像の形式は六観音像のなかでは最も近いとされる勢至菩薩像。
台座は受花も反花も複弁の2段で、その説を裏付ける。
勢至菩薩の持物とされる水甁からは、蓮華の蕾と葉が、茎を交差させながら上に出ていて、独特のように思うが、他にもこのような蓮華の表現があるかも。
天衣も文殊とされる像と同様に膝の辺りでX字状に交差する。

観音菩薩立像 像高85.7㎝
台座は受花が単弁の一重、反花は複弁の2段。
三面頭飾の中央には透彫で立ち姿の化仏が表され、観音菩薩には違いはないが、天衣がX字状に交差しない、進んだ様式で表現されている。

伝日光菩薩立像 像高80.3㎝
台座は受花も反花も複弁の1段。
幅広の天衣は両脇から垂下するが、X字状には交差しない。法輪寺の伝虚空蔵菩薩立像の様式に準ずるものとみてよいのだろうか。
顔は、眠っているかのようで、六観音像の中には共通するものがない。

伝月光菩薩立像 像高77.9㎝
台座は受花も反花も複弁の1段で、台座だけでいえば、伝日光菩薩立像と対の像ということになる。
しかし、その天衣は、両脇から垂下するが、X字状に交差せずに膝の高さで重なっていて、伝日光菩薩像とは異なっている。口を一文字に結ぶなど、面貌も異なっている。

            白鳳展5 法隆寺金堂天蓋の飛天
                           →白鳳展7 薬師寺月光菩薩立像

関連項目
法隆寺献納宝物の中に木造の仏像
白鳳展3 法輪寺蔵伝虚空蔵菩薩立像
白鳳展4 金龍寺蔵菩薩立像

※参考文献
「開館120年記念特別展 白鳳-花ひらく仏教美術ー展図録」 2015年 奈良国立博物館