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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/09/29

白鳳展1 薬師寺東塔水煙の飛天



奈良国立博物館の開館120年記念展が白鳳で、その図録の表と裏の表紙に、現在解体修理中の薬師寺東塔相輪の水煙の2つが使われていた。しかも造られたのは奈良時代という。白鳳展の図録の表紙が奈良時代のものって何で?
『白鳳展図録』は、平安時代の11世紀に編集されたとされる『扶桑略記』には、天平2年(730)3月29日に「始建薬師寺東塔」(はじめて薬師寺東塔を建つ)と記されている。薬師寺伽藍が藤原京から移築されたのか、それとも平城京において新築されたのか。明治時代以来議論がある。ただし、擦銘が天武天皇と持統天皇を称え、白鳳様式の水煙を掲げているように、東塔は白鳳時代以来の由緒、形式を大切にしている。平城薬師寺の性格を考える上で興味深い問題を提起しているという。
それで敢えて薬師寺のものを出したのか。
これがその図録の表紙。同じように編集しても、どうしても色が同じにならない。


東塔水煙 奈良時代、8世紀 銅製鍍金 各面高194.5下辺幅49.0㎝ 薬師寺
『白鳳展図録』は、薬師寺東塔の上部を飾る相輪の一部で、水煙は相輪の最上部に位置し、4枚あり、それが十字型に組まれる。4枚とも同じ意匠で、各面表裏は同文である。意匠は3人の飛天を表したもので、背景には飛天の天衣と筋状の雲が透彫されているという。
地上から東塔頂部のこの水煙を見ても、飛天は見分けられないだろう。それくらい巧妙に天衣のたなびく端や雲の尾の間に潜ませている。
同書は、飛天[上]は花のつぼみらしき物を両手で包み、ほぼ垂直に倒立する姿勢を見せる。飛天[下]は唯一帽子を被り、駆けるような姿を見せ、横笛を吹くという。
同書は、 飛天[中]は片手で華籠を持ち、もう一方の手は頭上に伸ばす。腰を「く」の字に曲げ、脚を若干広げている。飛天[上]ほどの倒立ではないが、頭を下にして斜め下方に舞い降りる姿を見せるという。
実は、飛天[中]は頭の上に手か足が付いていて、それで枠を支えているように見え、妙に思ったのだった。
また同書は、このうち飛天[中]は川原寺裏山出土の三尊塼仏(明日香村所蔵)や三重・夏見廃寺出土の三尊塼仏(当館所蔵)、法隆寺金堂壁画など白鳳時代の作品に見える飛天と近似した姿を見せており、水煙のスタイルが白鳳時代のものを強く反映していることがうかがえるという。
それらの作品も展示されていた。

三尊塼仏 白鳳時代、7-8世紀 土製 高23.1幅18.5㎝ 川原寺裏山遺跡出土 明日香村蔵
同書は、塼仏はすべて同型で起こされた方形三尊塼仏で、倚坐して定印を結ぶ中尊と、左右の脇侍、上方には天蓋と飛天が表されている。また裏面に「釋」「勒」や「阿弥他」と篦書きのある破片があり、それぞれ「釈迦」「弥勒」「阿弥陀」に対応すると考えられる。これを製作していた工人が表面の中尊を多様に認識していたことがうかがわれて興味深いという。
右飛天
かつて敦煌莫高窟を見学した時、敦煌研究院の王さんは飛天は仏が説法したりすると、その行いが素晴らしいと讃美するために現れますと言っていた。
この飛天はいかにも天から舞い降りたような姿で、左手に華籠のようなものを持っている。足の裏が見えたりと、水煙の飛天[中]の仕種に似ているが、顔はこちらを向いて笑っている。これは表情のない水煙の飛天が真横を向いているのとは大きく異なる点である。

三尊塼仏 白鳳時代(7世紀後半) 土製 復元:縦23.2横14.4㎝ 三重県名張市夏見廃寺出土 奈良国立博物館蔵
同書は、二光寺廃寺の大型多尊塼仏と同型品で、その一部とみられる破片中に「甲午年」(持統8年、694)の陽刻銘がある。
三尊塼仏は、中央に倚坐する中尊を置き、左右上方には散華を撒く飛天を表す。川原寺裏山遺跡や橘寺の三尊塼仏と基本的な構図は同じであるという。
川原寺の飛天と体の動きはほぼ同じで、顔も笑っている。異なる点といえば、両足の裏が見えているくらいだろうか。

三尊塼仏 白鳳時代(7世紀後半) 土製 縦23.5横18.3㎝ 南法華寺出土 同寺蔵
同書は、南法華寺は、飛鳥の南方、吉野に向かう山麓地に所在し、通称壺阪寺という。
図像は橘寺や川原寺裏山遺跡の方形三尊塼仏と同じであるが、型抜けにやや甘さがみられるという。
これまで見てきた飛天と似ているが、型抜けの甘さか、真似て作ったためか、なんとなくぼんやりとした雰囲気がある。肉付きのよい顔は笑うというよりは微笑んでいる程度。

水煙の飛天は、天衣や雲の間に組み込むという制約があるせいか、塼仏の飛天ほどには自由に宙を舞うような表現にはなっていない。それとも、仏像に微笑みのなくなる時期と重なるのだろうか。

飛天は塼仏だけではない。法隆寺献納宝物の灌頂幡にも透彫で表されている。
それについてはこちら

                 →白鳳展2 透彫灌頂幡の飛天

関連項目
頭を下にして舞い降りる飛天
白鳳展6 法隆寺金堂六観音像
白鳳展5 法隆寺金堂天蓋の飛天
白鳳展4 金龍寺蔵菩薩立像
白鳳展3 法輪寺蔵伝虚空蔵菩薩立像

※参考文献
「開館120年記念特別展 白鳳-花ひらく仏教美術ー展図録」 2015年 奈良国立博物館