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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2011/09/27

イスタンブール考古学博物館で思い出した3 ラガシュの王グデア1 螺髪を探して辿り着いた

仏像の髪型の一つに螺髪というものがある。自分の撮った写真で一番分かり易いのが飛鳥の大仏の頭部だ。
仏像の螺髪がマトゥーラが最初かガンダーラか、わからないらしい。というよりも同時期に出現したのではないかと言われているので、何でも遡るのが好きな私は、以前に螺髪に近い髪型を探してみたことがある。
すると、1996年の「アッシリア大文明展」では、アッシリアの浮彫にクリクリ巻き毛がびっしり並んだものを見つけた。

国王のライオン狩り 前875-860年 ニムルド、北西宮殿西翼 石 縦98.0幅139.5の部分 大英博物館蔵
これを見つけた時は螺髪の起源はアッシリア・レリーフかと思った。
しかし、よく見ると、頭部はウェーブはあるものの、巻き毛は髭だけだった。これはパーマをかけていたのだと、ある研究者が言っていた。
それにしても隙間なく並んだ巻き毛は立派だ。

顎鬚 前875-865年 ニムルド、ニヌルタ神殿(推定) 桂化銅 高8.0幅7.0奥行7.0 大英博物館蔵
同展図録は、この美しい巻き毛の顎鬚は、いわゆる「寄せ木造り」の像の一部分であったという。
このように見ると、螺髪とは巻き方が違う。
そして2000年の「四大文明メソポタミア文明展」で、こんな螺髪に辿り着いたのだった。

祈るグデアの像 閃緑岩 高107㎝幅36.5㎝ おそらくテロー起源 グデアの治世(前2125-2110年) ルーヴル美術館蔵
『四大文明メソポタミア文明展図録』は、銘がないとはいえ、この像はその顔の特徴からラガシュの王グデアの肖像と特定できる。この王の多くの像と同様、これも神の前に立ち祈る姿を表している。服装は通例の肩掛けローブを体に巻き着け右肩を露出している。当時の王冠はカールした羊の毛を使用した円筒帽だったという。
せっかく発見したと思ったのに、この巻き毛は羊の毛の帽子だったのだ。
その後、螺髪に繋がるものはまだ見つかっていないが、おかげでラガシュのグデア王は、私にとって忘れられない王となった。その王にまつわる品々が、イスタンブール考古学博物館オリエント館に展示されていようとは。
それについてはこちら

※参考文献
「アッシリア大文明展-芸術と帝国図録」(1996年 朝日新聞社)
「四大文明 メソポタミア文明展図録」(2000 NHK)