お知らせ

忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2017/10/10

マーシュランドの葦の家


チョガ・ザンビールの遺跡に到着し、駐車場からジッグラトへと向かう途中に、チグリス河、ユーフラテス河の下流域マーシュランドに見られる葦の家のようなものが2つ並んでいた。
一家で住めそうな大きさだ。
側面は粗く風通しが良さそう。このような家屋は、これまで旅して日干レンガや焼成レンガの建物ばかり見てきた目には新鮮で、また、マーシュランドで見てみたいと思っていたものが、イランで見られて驚いた。
ガイドのレザーさんによると、この辺りはアラブ人が多く住んでいるのだという。

葦の家については、2000年頃にNHKで放映された「世界四大文明」シリーズの番組で知った。メソポタミア文明の時代から住居となっていた葦の家に、現在も人々が暮らしているという。内部には部屋の仕切りはなかったように記憶している。

何故メソポタミア時代に、葦の家に住んでいたことが分かるのかというと、浮彫に残っているからだ。

神殿奉納用の飼い葉桶 前3000-2800年 アラバスター 高16.3長103幅38㎝ イラク、ワルカ(ウルク)出土 大英博物館蔵
『世界美術大全集東洋編16』は、ウルク出土のこの「飼い葉桶」は、この町の女神でシュメール世界でもっとも人気の高かったイナンナの神殿に奉納されたものと考えられている。表面に施された浅浮彫りの図柄は、中央に蘆葦類を束ねて作った小屋を、その左右に山羊、羊を、左右対称となるように配している。ここに見られるような小屋は、現在でもイラク最南部の沼沢地域で見られるものであり、前3000年ころからずっと人々の住居として、また家畜小屋として利用されてきた。小屋の屋根から左右に突き出し、また浮彫り面右端にも見られる吹き流し状のものは、女神イナンナの象徴と考えられており、この時期のいくつかの浮彫り、円筒印章などにも見られる。左右の側面もこの吹き流しが姿を見せており、それと羊、ロゼット文様が、背中合わせに左右対称に配されているという。
側面には8弁の開花した花を、まだ完成されてはいないが文様として表していて、ロゼット文という文様の古さを知る手掛かりとなる。
また浮彫の葦の家は、人々の住まうためのものではなく、神殿なので、吹き流しというものが立てられているのだろうか。
あるいは、現在の葦の家の長い円柱状のものは、古い時代の吹き流し状のものが、簡略化されたものなのかも。
でも、葦の家から子羊が出てきて母羊を迎えているようでもあり、これは家畜小屋を表したものとも思える。

葦の家が表されている円筒印章の印影も見たことがあるはずだが、探しても見つからなかった。見つかればこの記事に貼り付けます。

    スーサの出土品2 エラム時代の略奪品

関連項目
チョガ・ザンビール(Tchoga-Zanbil)1 中壁東隅の神殿群

※参考文献
「世界美術大全集東洋編15 西アジア」 1999年 小学館