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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2017/03/31

イスファハーン、マスジェデ・シェイフ・ロトフォッラーのタイル


王専用モスクのドームの色は、黄色くもなく、落ち着いた地に蔓草状の文様が、コバルトブルー、トルコブルーと白で表されていた。
『ペルシア建築』は、ドームの外側はファイアンスで覆われ、ミルクコーヒー色の地に、暗青色と白色の二色からなる大胆なアラベスク文様を表わすという。
この地の色は何だろう。 
拡大してみると、焼成レンガであることが判明。しかも隙間があったり、並び方が乱雑であったりと、とても王のモスクとは思えない。

表門イーワーンもタイルで覆われている。
ムカルナスは複雑な立体構成だが、どんなに小さな面にもタイルが嵌め込まれている。
アラビア(ペルシアと言うべきか)文字の文様帯について、『神秘の形象イスファハン』は、一体文字が装飾モチーフとしてとりあげられたことは、イスラム美術の著しい特徴である。文字の図案化の道が果てしなく続いている。深夜のような濃青の地に白であらわされている。イスラム建築で、書がこれほどドラマティックに表現されたものはないだろうという。
頂部はまるでレース編みのよう。
ムカルナスは下にいくほど刳りが大きくなる。
特に、下中央の八角形のような曲面。色タイルを文様に合わせて切り刻み、それを組み合わせるというモザイクタイルで、よく作ったものだ。
曲がり方の大きなところほど、モザイク片が細かい。
同じ文様が横の段に並んでいるとはいえ、絵付けタイルでさえ、それを1枚1枚描かねばならなかったのに、さらにモザイクタイルという手間の掛かる技法で作らせている。
8点星のトルコブルー地の面は一見絵付けタイルのようだが、部分的に多少色の違うものや、少し切れているところが見て取れる。やはりモザイクタイルだ。
ムカルナス下の平らな壁面もモザイクタイル。蔓草の茎のゆったりと伸び広がる様子が緻密な技で表されている。

真下から見上げる。こういう見上げ方をした人が鍾乳石飾り(スタラクタイト、stalactite)と呼んだのではないだろうか。
一見、壁面に見える頂部の扇状のところにも、放射状に稜が並んでいる。

王専用の絨毯?は残念ながら絵付けタイル。他のタイルと色調が異なるので、後補かも。←勝手に決めるな
その外側、90度に折れた壁面も絵付けタイル。
黄色と白色のそれぞれの蔓草が渦巻き、別の方向へ枝分かれしていく。
それが同心円状であったり、少しの間隔でずらせたりと、何とも優美。
その中央には、また別の二色の蔓草が、中心の花から枝分かれしながら広がって、白い花の中を埋め尽くしている。

礼拝室
ドームの頂点にはトルコ石が嵌め込まれ、そこにクジャクが表されていて、その下には光の帯が、クジャクの尾羽のように真っ直ぐできている。そしてまた、クジャクの尾羽の文様が、蔓草文様外側にドームいっぱいにひろがっている。羽根の文様一つ一つを囲んでいるのは焼成レンガ。整然と並んでいる。外側のドームでも、創建当時は焼成レンガは何らかの法則に従っていたことだろう。羽の文様も、礼拝室のドームなので、モザイクタイルのはず。
クジャクを囲む蔓草文様は、ピントが合っていないが、こんな剥がれ方をするのは、モザイクタイルしかない。多分素焼きレンガ片と色レンガを文様に刻んだものだろう。
ぼんやりとしてはいるが、このクジャク、影があるやん。クジャクもモザイクタイルだと思って見ていたのに、立体像だった。

ドラム部
グリルと表現されるが、明かり取り窓の透彫、両側の窓形パネル、そして上下のインスクリプション帯もモザイクタイル。
インスクリプション帯の一部。
少しだけ色タイルが嵌め込まれている箇所がある。

その下の名称のわからない壁面もモザイクタイル。

ミフラーブも当然モザイクタイルのはず。
頂部もムカルナスもモザイクタイル。
ムカルナスの下の壁面もモザイクタイル。
ミフラーブを囲む文様帯もモザイクタイル。

その下は絵付けタイルなので、腰壁のレベルは絵付けタイルなのだろう。

北西の壁面
明かり取り窓の透彫はモザイクタイル。
そして、素焼きタイルと色タイルを文様に刻んだモザイクタイルだと思っていたこの壁面の蔓草文様は、素焼きタイルに絵付けしたものだった。

四隅のスキンチを含む壁面も、当然素焼きタイルの絵付けかと思っていたが、
モザイクタイルだった。素焼きタイルも、いくつかの片で、文様のない空間を埋めていたのだ。

  イスファハーン、マスジェデ・イマームのタイル
                    →サファヴィー朝のムカルナスは超絶技巧

関連項目
マスジェデ・シェイフ・ロトフォッラー(Masjed-e Sheikh Lotfollah)
ザンド朝とカージャール朝の絵付けタイル


※参考文献
SD選書169「ペルシア建築」 A.U.ポープ 石井昭訳 1981年 鹿島出版会
「神秘の形象 イスファハン ~砂漠の青い静寂~」 並河萬里写真集 1998年 並河萬里・NHKアート