2024/08/02

イスラームのステンドグラス2


以前、イスラームのステンドグラス1で、イスタンブールにあるモスクやメドレセ、アヤソフィア(正確な年代不明)、カドゥルガのソコルルメフメトパシャジャーミイ(1571年)、エユップのソコルルメフメトパシャメドレセ講堂(1569)、ユシキュダルのミフリマースルタンジャーミイ(1547-48)と見学した順にまとめたが、今回は、その後見学したシェフザーデジャーミィ(1548)とその墓廟、そしてステンドグラスの名工が作成したというスレイマン大帝のモスク(1550-1557)とその墓廟(1568)、ヒュッレム(1558年没)の墓廟まで。


シェフザーデジャーミィ(1548)
若くして病死した皇子メフメトのためにスレイマン大帝が建設したモスク。
窓はたくさん開かれて明るいが、父スレイマン大帝のステンドグラスと比べると簡素

ミフラーブ上部の三つの窓
蔓草は石膏の枠に小さな色ガラスがある程度。しかし、中央の黄色いカリグラフィーの背景には粒のように小さなガラスになっている点はスレイマニエモスクのステンドグラスの先駆けのよう。


その墓廟
礼拝室よりも華やかなステンドグラスが並んでいた。

植物文様らしきもの以外には、白い六角形のガラスと六点星を中央に縦に並べたものがある。


廟内のステンドグラスはモスクのものよりも色彩豊かで文様も華やか。

玉座越しなので下が欠けた。小さな花が蔓で繋がっている。外枠は赤地、中枠は白地、そして主文様は緑色。

こちらは花を左右対称に入れたガラスの花瓶が並んでいる。白・紫・水色・オレンジ色・赤の小さな正方形を斜めに並べたところもある。

周囲に円を六つ置いて六点星をつくっていた。白いガラスは六角形ではなく、円形だった。

いやいや、六角形と六点星の組み合わせもあった。

中央パネルの白いものは何を表しているのだろう。クジラが深海へ潜っているようにも見えるが、そんなはずはない。ステンドグラスの外枠のタイルでは黄色い釉薬で描かれている葉に似ている。



ヒュッレム(1558年没)の墓廟は外は六角形、内部は十二角形で6面にステンドグラスがある。

ランプの金具のおかげでピンボケ。
上部の糸杉の背景が空色。

下部の糸杉の背景はオレンジ色。
このロンデルはガラスを吹いて先を切り、回して遠心力で広げたものではなさそう。筒状に吹いて、暖かい内に切り開き、シワシワ模様のある平面に置いたのだろうか。


こちらのステンドグラスは、上部と下部の糸杉の地がオレンジ色にしたりして、全く同じものではない。


これは別のステンドグラスの下部だろうか、それとも光の加減?糸杉の地が赤紫に見える。



スレイマニエジャーミイ(1550-1557)
『望遠郷』は、東側のミフラーブの周りの壁にある素晴らしいステンドグラスはサルホシュ・イブラヒム(飲んだくれイブラヒム)の名前で知られているステンドグラス作家の作品である。カリグラフィーは有名な書家アフメット・カラヒサールによって書かれているという。

ミフラーブ壁には三段のステンドグラス。上段はシェフザーデジャーミィのステンドグラス風。


中段はとても華やか。

中央 
スレイマン大帝がトプカプ宮殿に造った建物を飾るタイルにも使われた六弁花と細い枝というモティーフが、ここでも4面に展開している。
外周の赤地には白いカリグラフィー、内部の青地には黄色いカリグラフィー。これもアフメット・カラヒサールの文字だろうか。

上部
左の花枝の一部は色ガラスはなくなっているが、枠は残っている。この枠も石膏?
樹木も草も根元は一つ。

黄色いカリグラフィーは先が尖っていたりして躍動感がある。
中央のパネルは白い蔓の中がどうなっているのか分からないくらい位複雑。



右側のステンドグラス
左側では白いガラスだった葉がここでは黄色と緑色のガラスで丁寧に洗わされている。

スレイマン大帝は花が好きだったという。 

優美な植物文様に比べてカリグラフィーは幾何学的。スクエア・クーフィ体で良いのかな。



左側のステンドグラス
中央パネルは右側が青地で左側は空色。それを取り巻く文様帯は全く違ったものだが、この植物のモティーフは、すでに皇子メフメト廟で使われている。

青にも濃淡があるように見えるが、どうやら外の窓のロンデルが石膏の枠より光を通すために、青いところと空色のところがあるのだった。

カリグラフィーは何体か不勉強で不明。その地文となっている泡のように細かいガラス。イスファハーンのチェヘル・ソトゥーン Chehel Sotun宮殿で見たイマームの扉 Imanzadegane-Darbe-Emam の説明パネルは、最も大きなガラス片で径3㎝。ガラス片の色はストゥッコの形になっているという。
ある程度の面積のある石膏ボードに細かい円形の穴を穿ち、背後に緑色の板ガラスを貼り付けているのかと思っていた。


下段右
主パネルの植物は下の水色のカップから出ている。

主パネルは赤地、周囲のパネルは青地と極彩色。

主パネルの最下部にはカップがあって、器体の蔓が外の蔓に繋がっていたりする。



下段左
右側のステンドグラスとほぼ同じ

異なるのは、下枠中央の花の文様くらい。


ミフラーブ壁の左脇のステンドグラス

上段の円形の窓
中央の碑文の背景が青

円頂部の植物文様

中心の白い十六弁花の中は青地に黄色いカリグラフィー赤い四弁花と花びら

下片には四弁花の枠に緑地の中にも植物文様


左側下段尖頭アーチ形のステンドグラス

頂部
中央パネルは小さなガラス片一つ一つの形が違う。

下部
黄色のカリグラフィーと地の緑色
泡を充填したかのようなものは、石膏の枠に細かな丸い穴を開けることでできるが、一つ一つ異なる大きさのガラス片をつくる方が手間がかかりそう。


右脇の丸窓
中央の碑文の背景が緑

中心の白い十六弁花の中は緑地に黄色いカリグラフィー


スレイマン大帝の墓廟は八角形。スレイマンが1566年に亡くなった後、セリム二世が建てた(1568)。

『望遠郷』は、ステンドグラスはサルホシュ・イブラヒム(飲んだくれイブラヒム)の名前で知られているステンドグラス作家の作品であるという。

シェフザーデ廟にも丸や六角形の白いガラスとステンドグラスとの組み合わせはあった。

六角形の白いガラスと六点星のステンドグラスの組み合わせは、意外にもシェフザーデ廟の方が細かい。


泡のような細かい円形はない。

丸い白いガラスと変形八角形のステンドグラスはスレイマン廟の方が緻密。


外側の窓からそのまま光が入るように、内側の窓にもロンデルを嵌め込んでいるのだろう。



メッカの方向にあるステンドグラスにはカリグラフィー

オレンジ色のカリグラフィーの地の箇所にだけ泡のような小さな円がある。




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参考文献
「イスタンブール 旅する21世紀ブック 望遠郷」 編集ガリマール社・同朋舎出版 1994年 同朋舎出版