2007/08/08

山西省で見た窰洞(やおとん)は



窰洞はみたいと思っていたが、今回の旅行では期待していなかった。黄土高原というと、黄河が柄杓のように回り込んでいる、オルドスと呼ばれるあたりのことだと思っていたからだった。しかし、山西省は一 黄土高原ならびに大同市の概況で、山西省のほぼ全域が黄土高原であることを知った。 
太原から応県木塔へと向かって高速に入ると、あっけないほどすぐに黄土高原の景色が広がったのだった。段々畑状になっているようなのだが、横から見ているので、それがはっきりとは見えなかった。黄土高原は雨などで縦に崩れて深い谷ができますと屈さんが言った。確かに谷があちこちにあった。 窰洞と思われるアーチ形の開口部はところどころで目に入ってきた。そのたびに「やおとん」「やおとん」 と浮かれている我々に、ガイドの屈さんは「あれは粘土を採った穴です」などとあっさりと言うのだった。木塔の後見学した渾源県の懸空寺から大同へと向かう道の途中に、黄土高原が再び出現した。カーブの連続で、めまぐるしく変わる景色に、窰洞らしきものが見えてきた。「やおとん」とまた声を上げると、屈さんは「やおとんです」と、今度は肯定してくれた。しかし、もはや人は住んでいない。そしてやっと人の住む窰洞が現れた。小さな集落だった。屈さんは、平地にヤオトンを造って住んでいます。厚く土を盛ってあるので、夏は涼しく、冬は暖かいですと言った。平地に窰洞のようなものを造っているように見えて、どうも本物の窰洞と思えなかったが、崩れやすい黄土を掘るよりも、安全に生活できるという。 そして平たくなって、道が直線になったところにもヤオトンの集落があった。 黄土の崖に穴を穿って住むというのはもはや過去の話なのだろうか。