『TURKISH TILES』は、チンテマニのモティーフは、三つの玉と、その隣の2本の波線で構成されている。ティムール朝時代の作品では、このモティーフが三つの玉として登場するため、「ティムールのバラ」という名前が付けられている。
根元にはまるでリボンのようにサズの柱が左右対称に幹を巻いているが、その中にチューリップがひっそりと咲いている。
チューリップの花弁には三つの赤い丸と、二本の波線は枚の細い葉が文様帯をつくっている。これもチンテマニだそう。
こちらは宝珠形ではなくなり、本来の円に戻っている。間はあいているが、やはり三つでひとまとまりのモティーフ。
2本の線は、皮膚、稲妻、雲、龍などさまざまな解釈があり、三つの玉は、円盤、ヒョウの斑点、月、玉、または聖なる真珠として解釈されている。
サンスクリット語の「チンタ」には、考え、願い、注意などの意味があり、「マニ」は宝物または真珠に似た玉です。チンテマニは、三つの精神的属性を強調するシンボルとして知られている。
テュルク系ウイグル人はかつて仏教を受け入れており、チンテマニモティーフの概念は以前は仏教に関連していたものの、大セルジューク朝やティムール朝などのテュルク系イスラム国家では仏教の意味を失い、はるかに強力で英雄的なシンボルとして使用された。
トルコの装飾におけるチンテマニというモティーフの意味は、中央アジアに住む半遊牧民のトルコ人が何世紀にもわたって強い動物に抱いてきた尊敬の念に基づいている。このモティーフは、トラやヒョウなどの強い動物の皮の文様と関係があるため、チンテマニの力強さと結びついて使用された。
チンテマニは、布地、刺繍、カーペット、祈祷用敷物、木工や石工、陶芸やタイル芸術に使用された。チンテマニも、他の多くのモティーフと同様に最初は布地に使用され、後にタイルに使用された。強さの象徴として、王座によく見られるモティーフであるという。
円の中に小さな円があると目玉に見えてしまう。
一方、イスタンブールのリュステムパシャジャーミイ(1562)の柱廊(ソンジェマアトイェリ)にある生命の木のタイルパネルの根元にチューリップがある。
ただしリュステムパシャジャーミイやそのタイルについては後日。
子供用カフタン オスマン朝時代、16世紀中期 錦 長72.0cm トプカプ宮殿博物館蔵
『トルコ三大文明展』は、子供用の短い袖のカフタンで、儀式などの際には、全く同じ生地で作られた付け袖をつけ長袖様としたとみられる。金糸と絹糸で織るセレンク・タイプの織 物からなり、赤の地に鮮やかな金色の3つの玉の文様が用いられている。16世紀の最後の4半世紀に属しているが、どの王子のものかは確定し得ないという。
ただの円を三つずつまとめて文様にしている。これはヒョウ斑点を文様化したもので、力強く育つようにという願い、あるいは、子供でも皇子は強い存在であることを示すものだったのだろう。
トプカプ宮殿博物館蔵子供用カフタン トルコ・トプカプ宮殿秘宝展図録より |
物入れ 16世紀後半 ベルベット・銀糸刺繍 長44㎝幅72.5㎝ トプカプ宮殿博物館蔵
小物入れかと思ったら、ずっと大きなものだ。旅に出る時に衣装を入れたのかも。
こんな目玉のようなものが三つ寄り合っているのはかなりインパクトがありそう。円の中に小さな円があるかないかで、印象が全く違う。
ムラト四世(在位1623-40)が建立したレワン・キョシュキュ(1635)。
その戸棚の扉にもチンテマニはあった。
中央の扉の上部
宝珠形が三つでひとまとまりのモティーフになっている。
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参考文献
「TURKISH TILES」 Özlem İnay ERTEN,Oğuz ERTEN SILK ROAD PUBLICATIONS
「トルコ三大文明展図録」 監修:大村幸弘(財団法人 中近東文化センター主任研究員)、真室佳武(東京都美術館館長)、鈴木董(東京大学東洋文化研究所教授) 編集:ΝΗΚ、NHKプロモーション 2003年 発行:ΝΗΚ、NHKプロモーション