アクダマル島のアルメニア教会の外壁上部を葡萄蔓草文の中に人物や動物が表された高浮彫が一周している。
葡萄蔓草文は他にも3種類あるため、この人物などの表された葡萄蔓草文を葡萄園浮彫と呼ぶことにする。
南壁西側の壁面は、南アプスから小アプスそして西アプスと複雑に造られている。葡萄園浮彫はそれぞれの壁面に同じ高さで帯状につながっている。
小アプスの小窓右上の、壁面と壁面の角の人物は、あぐらをかいて両腕を頭上で交差させているように、下からは見える。
南壁西は渦巻くブドウの蔓の中に両手を広げた人物がいる。神に祈りを捧げてる場面かな。
隣には、別のブドウが蔓を交差させながら上に伸びていて、蔓の間に2つの人物が顔をのぞかせている。この図は、下から見上げた時は、人物の両腕がブドウの蔓になっているのかと思ったものだ。このような人頭は祈る人物とは全く異なるものだ。軒下の人頭といい、いったいどこから伝わったものだろう。
西端では、子羊を担いだ人物がいて、そのブドウの蔓は左にも右にもつながらず、まるでアーチ門のようだ。
右では縦に伸びたブドウの蔓の間に鳥が留まり、ブドウの葉は鳥のいる円文となっている。
南壁アプスの東側には、籠を担ぐ人物と、ブドウを食べるクマにまたがる人物の間で、ブドウの蔓の間から顔を出した人頭が見える(矢印)。
北壁の方が葡萄の蔓草が繋がっているように、下からは見える。
アプス上には尖ったスコップで土を掘り返す人物がいる。右足をスコップに置いて、今と変わらない。
人物と背景そして蔓の内側と、三層に浮彫されている。
アプスの外壁には、クマの脇腹に剣を刺す人物の横で、ブドウの収穫に勤しむ人物がいたり、ハトらしき鳥がいたりと、場面のつながりはない。
向かい合う鳥はクジャクだろうか。左の方は羽根の付け根に連珠文があって、ササン朝やソグドの錦などを思い起こさせる。
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このようなモチーフを一つ一つ見ていったら、様々な周辺地域からの影響がわかるだろう。
※参考文献
「Aghtamar A JEWEL OF MEDIEVAL ARMENIAN ARCHITECTURE」(Brinci Baski 2010年 Gomidas Institute)