アクダマル島のアルメニア教会は外壁に聖書の場面などが浮彫で表されてにぎやかだ。それだけでなく、葡萄蔓草文が文様帯に使われたり、上部には葡萄蔓草文の中に人々の暮らしや動物などが高浮彫されている。
東壁でみると、切り妻屋根と、2つの私祖長い窓の間に、まず大きく葡萄蔓草の中に人物や動物のある文様帯(以下葡萄園浮彫とする)、窓の縁を飾る文様帯の2種類が認められる。
葡萄園浮彫は連続した物語になっているわけではなさそうだ。
ブドウを収穫している人たちの間には光背のある人物がブドウの蔓の中に坐っている。キリストだろうか。左のライオンは人を背後から襲おうとしているのではなく、破風の下に立つ聖ヨハネの象徴だろうか。
その下の窓枠に沿ってカーブする文様帯は、2列にブドウの実と葉が交互に並んだ蔓草文となっている。
その下にも中央の窓の上に、ほぼS字形に蛇行するブドウの蔓に、横向きの葉と実が空間いっぱいに表されている。
そして動物の下には地面を表すように、ブドウの実を両側から葉が囲み、それを二重の蔓で巻くようにして左右に続く蔓草文がある。
ここにも2種類みられるので、この小さな教会の外壁には4種類もの葡萄蔓草文があることになる。
せっかくなので、東壁南端の葡萄園浮彫。左が南端部にあたり、南面の浮彫の厚みがわかる。
図は、左が武装した騎士が後方を向いて、襲いかかったクマに弓を射ようとしている場面、一般的にはパルティアンショットと呼ばれている。
パルティアンショットについてはこちら
右はウサギを叩こうと棒を振り上げている人物で、これらも日々の生活か、それとも魔除けの意味があるのかも。
※参考文献
「Aghtamar A JEWEL OF MEDIEVAL ARMENIAN ARCHITECTURE」(Brinci Baski 2010年 Gomidas Institute)